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MARGINAL#4

(うわあ……)

社長はノリノリで、とても楽しそうだ。が、すぐに社長は表情を引き締めると、再び彼らへと向き直る。

「改めて4人に聞くわ……どうしたい?」

これが最後の確認、とでも言うように4人に対してしっかりと視線を合わせて聞く。

「……仕方ねーだろ。社長命令っていうなら、やってやるよ。やんなきゃ事務所からリムられちまうみてーだし?」
「……仕方ないです、ね」
「俺は最初から賛成してるよ。アールもそれでいいよね?」
「う、うん」

 エル以外の三人はしぶしぶという形ではあるが、それでも今後MARGINAL#4として活動することにはどうやら納得したようだ。

「……まあ、そうなったからには自己紹介ぐらい改めてしといてやるよ。オレ様の名前は桐原アトム。これまではソロでやってきた」
「僕の名前は、藍羽ルイ。アトムくんと同様に、これまではソロでやって……、きました」
「俺の名前は野村エルだよ。今までは双子の兄のアールと一緒に、ふたりで活動してきたんだ。これからよろしくね、アトム、ルイ」
「……ぼくは、野村アール。エルの兄だよ。いきなりグループなんて言われても戸惑っちゃうけど……。仲良くやれたらいいなって思う。今後、よろしくね」

4人が改めて自己紹介をし合う。それが終わったのを確認してから、私も口を開いた。

「それで……、私があなた達のマネージャーを担当にすることになった、片岡ユエです。これからよろしくね」
「…………」
「どうかしたの、アトムくん」

 私の自己紹介に、アトムくんは不満そうに眉間に皺を寄せた。それに気づいた社長がアトムくんに声をかける。

「なにか不満があるの?アトム。」
「……社長はさ、オレ達にその伝説のスターメイトみたいなトップアイドルになって欲しいって思ってるんだよな?」
「ええ」
「それなのに、オレ達つけるマネージャーがンな新人で大丈夫なのかよ?」

(……あ)

「やっぱり伝説のアイドルグループスターメイトを目指せ、なんていうのはオレ達を誤魔化すだけの嘘で、本当はやっぱり売れない俺らを1つにまとめてリムっちまおうってことじゃねーの?」

 4人の警戒するような眼差しが、一気に社長へと集中する。私ならとっくに怯(ひる)んでしまいそうな視線を向けられながらも、社長はにこやかに笑ってみせた。

「そんなつもりはないわ。彼女にあなた達を任せるのも、私が彼女なら大丈夫だと信じているからよ」
「社長……」
「彼女には、トップアイドルを育てたいという情熱がある。あなた達には、トップアイドルになるための煌(きらめ)きの種がある。そんなあなた達と彼女が一緒に活動することで……、きっと、あのスターメイトに近づくことが出来ると私は思っているの」

 社長の言葉には熱がこもっている。とてもじゃないが、その場しのぎの嘘というようには聞こえない。

(きっと……、社長にとってのスターメイトというアイドルグループは、永遠に憧れの対象でもあり、超えたい壁でもあるんだろうな)

ライブ会場に流星を降らせたのだという、伝説のスターメイト。私は、彼らMARGINAL#4の仲間達とともに、その伝説をきっと越えてみせる。

「よろしくね、マネージャーさん。俺のことはエルって呼んでよ。あ、そうそう今度お近づきの証にまりもをあげるよ」
「え?」
「俺、まりもって可愛くて好きなんだよね。あのちょっともさっとした感じがたまらなくって。家で何匹か飼ってるから、マネージャーさんにもわけてあげるよ」
「あ、ありがとう」

(まりも……?)

果たしてまりもは生き物だっただろうか。エルくんの口ぶりでは、まるでまりもをペットとして可愛がっているかのようだ。

「……オマエのこと、まだマネージャーとして認めたわけじゃねーけど。とりあえず、一緒に頑張っていこうぜ。とりあえずはオマエにキスでも届けときゃいいカンジ?」
「え?」

 ソファの向こうから、ぐいとアトムくんに引き寄せられてしまった。
さすがはアイドルだけあって、やることが派手だ。野性味のある、けれど整った顔が近くなり、少しだけ心臓が速くなる。

(……この4人の顔にも慣れなきゃなあ)

なんていったって、私はこの4人のマネージャーなのだ。ときめいてしまっている場合ではない。彼らを煌(きらめ)かせ、全国の乙女をときめかせるのが私の任務だ。

「アトムくん、マネージャーにちょっかいを出すのは不合理です」

 ぺしり、と私を捕まえていたアトムくんの手を払い除けてくれたのは、ルイくんだった。

(…さすが王子!)

「あははっ、なんか面白そう。俺もまりも3個分ぐらいは頑張るからさ。よろしくね、マネージャー!」
「ぼくも……、地味にPT(パーティ)のメンバーとして頑張るよ。支援職的な感じで」
「支援じゃなくてアールも戦力だって」
「ううう」

 双子だけあって、エルくんとアールくんは息がぴったりだ。

(なんだか、楽しくなりそう)

まだまだ、出会ったばかり。これまでそれぞれの個性のみを生かした活動を続けてきた4人が、ひとつのチームとしてまとまるにはまだきっと時間がかかるだろう。それでも……。

――銀河の果てまでKISSを届けるMARGINAL#4の挑戦は、ここから始まるのだ。

つづく
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