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MARGINAL#4

「……っ!?」

 何事かと振り返った私の視界に飛び込んできたのは、ひとりの男の子だった。その派手な外見には見覚えがある。桐原アトムくんだ。この事務所に所属しているアイドルで、ワイルドかつ強気な、見た目通りの性格をしている。彼については、才能はあるけど、少々自信家で扱いづらい……、なんて愚痴を担当マネージャーがこぼしているのを聞いたことがある。
 そして、そんなアトムくんの後ろには、まだ他にも何人か続いているようだ。

(私と社長の分を含めて6人分のお茶を用意したわけなんだから……、アトムくんと残りは3人?)

そんな私の予想を裏付けるように、残りの3人が次々と社長室へと入ってくる。

「……粗野(そや)な人だ。僕と君とではどんな数式を使っても接点が求められそうにない」

 アトムくんに対してそんなことを言いながら社長室に入ってきたのは、藍羽ルイくん。彼もまた、この事務所に所属するアイドルのひとりだ。“王子”とあだ名がつくほど女性に優しく、整った顔立ちを合わせ持っているが、冷たい印象を人に与えることもある。しかし基本的には聞き分けの良い扱いやすい子だと聞いている。

(ということは……、残りのふたりも、うちに所属してる子たち?)

「急に呼び出すなんて困るよ、社長。俺、今日は新しくできたアクアショップに行きたかったのに」
「駄目だよエル、そんな我侭(わがまま)言ったら。GMのいうことは絶対なんだ」
「GMってなんだよ、社長だろ?」
「GMっていうのはゲームマスターの略で……」
「それは今聞いてない」
「う……」

(あ、やっぱり)

アトムくんとルイくんのあとに続いてやってきたのも、やはりうちに所属しているアイドルの、野村エルくんと、野村アールくんだ。彼らは双子でユニットを組んでいる。

(双子だからよく似てるはずなんだけど……。雰囲気って結構違うものなんだなあ)

自分が担当してないこともあって、こうしてふたりが並んでいるところをじっくり見るのは初めてだ。双子だけあってよく似ているのに、浮かべる表情の違いによって雰囲気が大きく異なっている。華やかで自信に満ちているようなのが弟の野村エルくんで、そんな弟の影に隠れるように地味な印象を受けるのが兄の野村アールくんだ。

(でも……、なんでこの4人? 共通点なんて特にないよね?)

双子ユニットとして売っている野村エルくんと、野村アールくんのふたり以外は、それぞれソロで売り出し中のアイドル候補だ。
4人はがやがやと社長室に入ってくると、お茶の並んでいたソファセットへと腰掛けた。アトムくんとルイくん、そしてエルくんとアールくんが並んで座る。
アトムくんはどっかと足を組んで座り、その隣のルイくんは、きちんと足を揃えて座っている。なんだか、座り方ひとつで個性がわかるような気がして面白い。
それなら双子は、と見れば……、ふたりは綺麗に左右対称だった。

(……これ、狙ってやってるのかな)

無意識だとしたら、双子というのはすごい。

「で、社長。なんで今日はオレ様の達こと、呼び出したりなんかしたわけ? こいつらと一緒に呼ばれる理由が、マジわかんないんだけど」

 社長に対しても、アトムくんは一切物怖じしない。そんな堂々とした態度は、ある意味非常にアイドルらしかった。

(ちょっと生意気にも、思えちゃうけど。……まあ、でも言ってることには同感かな)

今のところ、彼ら4人に何か接点があるようには思えない。同じ事務所に所属している、同年代のアイドルとアイドル候補たち、といったことぐらいだろうか。
社長は、全員の視線が自分に集中するのを確認してから、ようやく口を開いた。

「今からあなたたちをここに集めた理由を説明させてもらうわね。今度、あなた達にはこの4人でグループとしてデビューしてもらおうと思うの」
「……え?」
「で、そのマネージャーにはこの子についてもらうつもりよ」
「ええええ!?」

(ど、どういうこと!?)

この4人を組ませて一つのグループを作る、というのも十分驚きの発表だけど、そのグループのマネージャーを私が担当するなんていうのは、さらに驚きの新事実だ。
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