●経営陣の劣化
●米国型経営の導入
●モチベーションの低下
社内から人材も消えた
まずは失策を続けてきた経営陣の問題だ。元幹部たちが口を揃えるのが、'95年に出井伸之氏が社長に就任して以降、社内の雰囲気が一変したということだ。
前出の伊庭氏が言う。
「先見性をもった経営者が大賀典雄さん以降、出てこなかったのも問題です。出井さんは社長としてはよかったのかもしれないけど、技術のことを知らなすぎた。エンジニアが今のソニーはおかしいと言っても、自分の意見を押し通す。その後の社長も何も決断できなかった」
出井氏の経営方針に元幹部たちは一様に違和感を持ったが、出井氏が後継会長に据え、その後に社長の座も託したストリンガー氏によって、ソニーの凋落は決定的なものになった。
テレビ事業などを手がけてきた元幹部が言う。
「なぜあんなにエレクトロニクスがわからない人をトップにしたのか。ストリンガー氏は工場勤務や製品生産の経験がありません。だから、『モノづくり』は古いと言い出して工場をどんどん閉鎖してしまった。その結果、技術力が格段に落ちていってしまったのです」
出井氏とストリンガー氏、2代にわたる経営トップの暴走が許されたのはなぜか。そこには「社外取締役」という歪な構造がある。現在、ソニーの取締役は総勢13名。そのうちの実に10名が外部からの選任なのだ。
その取締役を選ぶ委員会のメンバーは取締役会で選定される。したがって現行の経営体制に批判的な人間が社外取締役に選ばれる可能性は極めて低い。
前出の元幹部が続ける。
「トップを代える権限を持っているのは取締役会です。そこが動かなくてはならないのに、当事者意識の薄い社外取締役ばかりなので、何も動かない。社外取締役たちを仲間にしてしまえば、トップの座は安泰なのです」
その結果、出井-ストリンガー体制は長期政権となり、将来有望なエレクトロニクスの芽が摘み取られていったのだという。
出井社長以前のソニーは、周囲の反対を押し切っても「夢」を実現しようとするパワーに溢れていた。
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