今回、本誌は複数の元幹部に接触した。彼らの口からは、「私たちの知っているソニーが死んでいく」と悲愴感溢れる言葉が漏れる。
たとえば、全世界にソニーの名を知らしめたウォークマンの産みの親で、後に副社長を務めた大曽根幸三氏はこう言う。
「今の平井社長はエンタテインメント部門出身で、これからのエレクトロニクスの世界がどうなっていくか、先読みできるセンスがあるとは思えない。ハワード・ストリンガー前社長にいたっては、米国の映画やテレビ界の裏をよく知っているというだけで、社長に引っ張ってきた人ですよ。
それにしても、ソニーは変わってしまった。われわれの世代が築いた技術屋の魂は受け継がれていない。人事部や営業部出身で、技術の先読みができない文系の人間が出世している。もうソニー精神のかけらも残っていないでしょう」
ソニーというブランドは、世界中の起業家を惹きつける魅力を持っていた。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も、アップルを創ったスティーブ・ジョブズ氏も憧れた。大曽根氏とは別の副社長経験者は言う。
「ジョブズもソニーによく遊びに来ていたし、その前にはビル・ゲイツも重要な用事がなくても気にせずにやってきたと(元社長の)大賀典雄さんから聞いています。それくらい、創業者の井深大さんや盛田昭夫さん、そして大賀さんに憧れていたんです。それはなぜかというと、ソニーが世界にないものを創って、米国に紹介していたからです」
それが今や立場は逆転、ソニーはアップル向けに部品を供給する立場になった。最近もアップルの新型iPhoneにカメラ部品を大量供給する交渉に入ったと報じられたばかり。亡きジョブズが憧れたソニーは、アップルの「下請け」になり下がったのである。
'06年にソニーを退職し、グーグル日本法人社長などを歴任した辻野晃一郎氏はこう振り返る。
「私はソニーをやめる直前まで、アップルに対抗するためのビジネスを構築しようと必死になっていました。ところが、ある役員から『そんなことはやめてアップルに頭を下げてこい』と言われたんです。そのとき思わず、『あなたにはプライドはないのか』と聞き返しました。戻ってきた言葉は『プライドで会社が儲かるのか』。当時からすでにアップルの軍門に下るシナリオが進行していたということです」
ソニーの凋落を示す象徴的な話だが、いったい何がソニーを変えてしまったのだろうか。元幹部たちの話を総合すると、その原因は以下の3点に要約される。
- 徹底討論「嫌韓」なぜ、日本人はそんなに韓国が嫌いなのか 声に出して言いにくい「日本の大問題」第3回 辛淑玉×小針進×安田浩一 (2014.02.28)
- 「女は家で子育てしろ」って、したくてもできない人がいるんです 安倍ブレーン(長谷川三千子 埼玉大学名誉教授) とても変な女性評論家 (2014.02.26)
- イラクとアゼルバイジャンの欧州向け天然ガス輸出計画「BTCパイプライン南ガス回廊」 (2014.02.25)
- 世界一の投資家ジョージ・ソロスが「日本株売り」これから何が起きるのか ダボス会議で安倍と会談した直後、あの男が動き出した (2014.02.25)
- 元副会長、ウォークマンの産みの親ほか かつての幹部が実名告白 あぁ、「僕らのソニー」が死んでいく (2014.02.24)
- 国際基督教大学卒 51歳ソニー新社長の評判 (2012.01.26)
- ソニーはどこへ向かうのか (2012.03.01) - jbpress.ismedia.jp
- 特別読み物 巨大エレクトロニクス産業の興亡 パナソニック シャープ ソニー 日立 東芝「失敗」の研究「選択と集中の罠」 にハマった経営者たち (2012.04.05)
- パナソニックとシャープこうすれば生き返る 日本の家電を最も知る二人が語り尽くした 岩谷英昭×原田節雄 (2012.12.04)
- 狙われたソニー:さよなら、ジェームズ・ボンド? (2013.05.24) - jbpress.ismedia.jp
-
真壁昭夫「通貨とファイナンスで読む世界経済」ウクライナ問題で高まる地政学的リスクに投資家はこう動く (2014.02.28)