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28 Feb 2014 11:13

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李登輝・元台湾総統インタビュー 日本への期待 安倍総理への期待

WEDGE 2月27日(木)12時38分配信

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李登輝・元台湾総統インタビュー 日本への期待 安倍総理への期待

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李登輝・元台湾総統インタビュー 日本への期待 安倍総理への期待
インタビューに応じる李登輝氏(撮影・淺岡敬史、以下同)

 日本統治時代の台湾で育ち、京都帝大で学び、学徒出陣で戦地にも赴いた。武士道を愛し、日本人よりも日本人らしい精神性を体現する李登輝元総統には、いまの日本がどのように映るのか。靖国から憲法まで縦横無尽に語り尽くす。

【詳細な画像】

─昨年末に安倍晋三総理が靖国神社を参拝しました。

 国のために命を捧げた英霊に国の指導者がお参りをするのは当然のことで、外国から口出しされるいわれはない。私の兄も海軍志願兵として出征しフィリピンで散華したため靖国神社に祀られている。これは政治の問題ではなく魂の問題だ。

 私も総統在任中、台北にある忠烈祠に春秋の2回、参拝に行った。ただ、ここに祀られているのは抗日戦争で亡くなった大陸の国民党の兵士であって、台湾とは全く関係がない。しかし、私は大きな愛でもって彼らの霊を慰めるためにお参りに行った。

─アベノミクスは、一貫して高く評価していますね。

 為替の切り下げが重要だということを私は十数年前から言ってきたが、やり切る政治家がいなかった。

 経済成長の道は、国内消費、投資、輸出、そしてイノベーションの4つ。

 日本は、台湾と同じく、資源を持たない。しかし、新しい製品をつくる技術と開発力がある。このような国にとっての柱は輸出であり、為替が重要だ。為替切り下げは近隣窮乏策だという人がいるが、そうならない。輸出が増えると輸入も増える。

 しかし、これまでの日本の総理は、中国や韓国、あるいは米国からの批判の心配ばかりしてきた。日本国民の指導者だという考え方がなかった。国際社会における経済的自立、精神的自立こそがデフレ脱却の鍵だ。

─世界経済の今後について、どう見ていますか。

 私はこれからの国家経済運営において、中国の国家資本主義的「北京コンセンサス」も、米国の新自由主義的「ワシントンコンセンサス」もうまくいかないと見ている。

 北京コンセンサスは、外国の資本と技術を頼りに、国内のあり余った労働者を活用する手法だ。成長率は高くても、中産階級は生まれず、格差に国民の不満が渦巻いている。

 「小さな政府」を志向し、国境を越えた資本の自由な移動を推進するワシントンコンセンサスも問題が多い。グローバル資本主義はこれまで世界経済をダイナミックに拡大させてきたが、金融市場の不安定性、所得格差拡大と社会の二極化、地球環境汚染の加速や食品汚染の連鎖といった本質的欠陥を解決できていない。

─中国や韓国は安倍政権の外交政策を批判しています。

 安倍総理が就任早々、大胆な金融政策を打つと同時に、東南アジアを歴訪したのは素晴らしいことだ。中国や韓国の理不尽な要求に屈せず、アジアで主体性を持った外交を展開しようとしている。日本は、世界のためにアジアの指導者たれ、です。

 これからの世界の安全保障環境をもっともよく分析しているのは、イアン・ブレマーの「Gゼロ」だろう。中国には国際秩序を維持しようという意思はない。周辺国の内政や領土への干渉を繰り返し、力を誇示している。米国がこのままリーダーシップを失えば、世界はリーダー不在の時代になる。アジアや中東では地政学的リスクが拡大するだろう。

 国際政治の主体は国家である。複雑な国際環境に面して、国民を安全と幸福に導き、平和を享受できるかどうかはひとえに指導者の資質と能力にかかっている。

 指導者のリーダーシップという問題に、この20年間、日本は苦労し続けてきたが、安倍総理は経済政策にしても外交にしても大変よくリーダーシップを発揮していると思う。

─憲法改正をどう考えますか。

 私は、これまでも憲法9条は改正すべきだとはっきり言ってきた。

 国際政治では、それぞれの国家に対して強制力を行使できる法執行の主体は存在しない。国防を委ねることができる主体が存在しない限り、政策の手段としての武力の必要性を排除することは考えられない。戦争が国際政治における現実にほかならないからこそ、その現実を冷静に見つめながら、戦争に訴えることなく秩序を保ち、国益を増進する方法を考えるのが現実的見解だ。

 日本は、憲法改正という基本的な問題を解決しなければ、どのような問題に対しても国の態度をはっきりさせることができない。

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最終更新:2月27日(木)12時38分

WEDGE

 

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