February 27, 2014
イギリス、ウェールズ地方の西海岸、ボース村の人々は先月、嵐が去った跡の異様な景色に目を瞠った。砂が吹き飛ばされて、浜に埋まっていた数百本もの切り株が姿を現したのだ。
故事を知る村人は、数千年前に海中へ消えたと信じられている、神話上の王国「グワイロッドの百戸村
(Cantre'r Gwaelod)」の一部だろうかと疑った。
大半はオーク(ナラ)やマツで、青銅器時代にさかのぼる切り株と推定されている。6000年から5000年前に泥
炭に埋まり、やがて海面が上昇して水没していたが、今冬の激しい嵐で泥炭や砂がはぎ取られた。酸素が少ない
環境で、ほぼ完璧な状態で保存されていたという。
枝が折り重なった“歩道”も発見されている。4000年から3000年前に、上昇した海面の上を渡るために造られ
たようだ・・・
故事を知る村人は、数千年前に海中へ消えたと信じられている、神話上の王国「グワイロッドの百戸村
(Cantre'r Gwaelod)」の一部だろうかと疑った。
大半はオーク(ナラ)やマツで、青銅器時代にさかのぼる切り株と推定されている。6000年から5000年前に泥
炭に埋まり、やがて海面が上昇して水没していたが、今冬の激しい嵐で泥炭や砂がはぎ取られた。酸素が少ない
環境で、ほぼ完璧な状態で保存されていたという。
枝が折り重なった“歩道”も発見されている。4000年から3000年前に、上昇した海面の上を渡るために造られ
たようだ。歩道を見つけたディアナ・グルーム(Deanna Groom)氏は、「ボース村の周辺が大嵐に見舞われる
と、考古学的な発見につながる場合が多い」と話す。同氏はウェールズ古代歴史遺跡王立委員会(Royal
Commission on the Ancient and Historical Monuments of Wales)で、海岸部を担当している。
先月の嵐がきっかけとなり脚光を浴びた古代遺物は、ボース村の森だけではない。コーンウォールのマウンツ
湾でも水没していた森が見つかり、ドーセット州とデボン州東部にまたがる海岸線「ジュラシック・コースト」
では魚竜の骨格が発見された。北海沿岸、ノーフォークのヘイズバラでは、硬化した堆積物の表面に85万年前の
人類の足跡が顕わになり、アフリカ外で見つかった最古の足跡として話題になった。
しかし、人々の想像力をかき立てるのは、やはり「グワイロッドの百戸村」の伝説だろう。初めて登場した文
献『カーマーゼンの黒本』は1250年頃の作で、ウェールズ語で書かれた最も古い写本でもある。6世紀のウェー
ルズの王国で、海面より低い豊饒の地を囲む堤防が決壊、海に飲み込まれたというアーサー王物語群の1エピソ
ードだ。浸水のきっかけは、メレリッド(Mererid)という娘が、自分の井戸を溢れさせたからだという。
また、「サーンバドリッグ(Sarn Badrig)」という防潮堤の水門を管理していた王国の王子が、酒に酔いつ
ぶれ閉じ忘れたせいで水没したというバージョンもある。
語り継がれた物語に科学的な証拠は乏しく、ボース村の周辺で居住地の形跡が発掘された例もない。サーンバ
ドリッグは実在するが、氷河によって運ばれた堆積物の洲にすぎない。しかし、多くの民話や神話の揺籃の地、
ウェールズでは、事実がどうあれ誰もが言い伝えに一目置いている。いつの日か、グワイロッドの百戸村が海中
から復活するかもしれないのだ。
Photograph by Keith Morris, LNP