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社説

表現の自由―「あいつが悪い」のか?

2014年2月28日(金)付
 社会がしぼんでいる。
 憲法が悪い。ネトウヨが悪い。中韓が悪い。そうやって次々と「あいつが悪い(自分は悪くない)」で物事を単純化して批判すると、スッキリする。しかしみんながスッキリしていても、誰もが生きやすい、豊かな社会は成り立たない。批判を恐れ、人々は萎縮するばかりだ。
 「表現の自由」をめぐる現状を例に、考えてみたい。
 NHK経営委員という公人が、都知事選の応援演説で他候補を「人間のくず」とののしっても、「表現の自由だ」として許される。
 一方、東京都美術館は今月、展示されていた作品の一部、「現政権の右傾化を阻止」などと書かれた紙を撤去させた。
 昨年7月の参院選前には、東京都千代田区立の図書館で開催が決まっていた映画「選挙」の上映会が、内容に懸念があるとして中止されそうになった。
 いずれも苦情があったわけではない。館の自己規制だ。
 美術館や図書館といった公共施設は、表現の自由が最も守られる場所であらねばならない。
 多様な価値観を擁護し、新たな価値観を創出するという社会的使命を忘れ、安易な自己規制に走る。それがどれだけ社会を萎縮させるか、自覚すべきだ。
 その上でもう一歩分け入ってみる。そもそも、このような「べき」論を支える社会的基盤が弱っているのではないか。
 「官僚たたき」や行政の無駄に対する批判の中で、03年に新制度が導入され、公共施設の運営が民間に委託されるようになった。例に挙げた2館も、公益財団法人や企業が自治体から運営を請け負っている。
 各施設でサービス向上、集客増などの成果があがる一方、運営に関わる人からはこんな声も漏れる。
 「外部からクレームがつくと、自治体から契約を切られるかもしれないという不安がある。表現の自由を守るために踏ん張れと言われても、厳しい」
 「効率」や「利益」が優先された結果、数字には還元されない「表現の自由」のような公共的価値は脇に置かれる構造が生まれてしまっている。
 さあ、どうしよう。
 まずは私たち一人ひとりが「あいつが悪い」から抜け出すことだろう。社会の豊かさとは何か、自分の問題として引き受け、しぼんだ社会に少しずつ息を吹き込んでいくしかない。面倒だしスッキリもしない。でも、誰かのせいにしているだけでは社会の萎縮と自粛が進み、息苦しさは増す。
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