第14話 オトナになったった(修正版)
エロシーンについて、何人かの方からご指摘を戴きましたので、修正致しました。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご理解の程よろしくお願い致します。
冒険者達の出立を見送り、ドラゴンゾンビの生き残り?を探して自宅パトロールを行い、帰って来てドラゴンの塩焼きを食べ、いつもの戦闘訓練をこなし、子ドラゴンに魔力を送った、その後。
寝る前の魔力供給のため、いつものようにアルタミラの唇に自分の唇を重ねようとすると、やんわりと遮られた。
「ねぇ、アイザルト。
――どうしてわざわざ騎士の剣を受けたの?
後ろから殴るとか、他の方法もあったはずよ。
もし、あれが勇者だったら、アンタ死んでたわ。
それに、彼らを蘇生する必要があったの?
彼らは武器を持ち、ワタシ達にそれを向けた。
戦いが始まれば、相手を倒すために全力を尽くす。
勝てば喰らい、負ければ糧となる。
ドラゴンだろうと人族だろうと、その事に変わりは無いはずよ。
倒した敵をわざわざ生き返らせるなんて、ワタシには理解できないわ。」
確かに、彼らを蘇生したのは、俺の独り善がりな自己満足――偽善ってやつかもしれない。
でも、
「技を受けたのは、子ドラゴンを守るため、かな。
心眼スキルで相手のLVとか分ってたし、たぶん必殺技喰らっても俺には効かないだろうって予測付いてたし。
騎士のおっさんを後ろからぶん殴って、技の方向を逸らすとかの方法でも良かったかもしれないけど、先に手を出してしまえば、話合いの余地が無くなると思って。
彼らを蘇生したのは、彼らの態度を見て、話合いで彼らと協力関係になれるんじゃないかと思ったからなんだ。
彼らを殺しても、次に別の誰かが送り込まれてくるだけだから、ってのもあるかな。
必要の無い殺しはしたくない。
アルタミラが言うことは尤もだと思うけど、殺さずに済むなら誰も殺さずに済ませたいんだ。」
「甘いわね!
彼らを帰せば、もっと大勢の敵を連れて帰ってくるかもしれないわよ?
戦うべき時に戦い、殺すべき時に殺さなければ、いつか自分が破滅するわ。
もし、勇者が戦いを挑んで来ても、蘇生してやるつもりなの?」
偽善もそこまで貫き通せれば立派だと思うけど。
「流石にそんなつもりは無いよ。
もし、俺やアルタミラに傷を負わせられるような敵が現れて、話合いの余地も無く向かってくるなら、俺も、相手を殺すつもりで、全力で戦う。
大したことはできないけど、人化を解いて、巨大化してムラクモを振り回せば、そこそこ戦力になれるんじゃない?」
剣術の心得は無いけど、あの巨体で伝説級の刀を振り回せば脅威になるだろう。
それに、俺には攻撃手段こそ無いけど、HPや防御力はチートなんだ。
壁役になってアルタミラに攻撃を任せれば、大抵の敵は倒せるはず。
「アイザルトに戦力は期待してないわよ。
それはワタシの役目だもの。
――でも、いざって時に戦う覚悟があるなら、これ以上何も言わないわ。」
そっか。
「ねぇ、アルタミラは強いよね。
ドラゴンにとって、強さ、ってどういうことなの?」
「妙なこと聞くのね?
そうね、言ってみれば『生き延びるために当然必要なこと』かしら。
逆に言えば、生き延びた結果として強さがある、とも言えるわね。」
敵を倒し、子を守るためにも、強くなければならない。
負ければ全てを失うのだから、当然、勝ち続けなければならない。
ドラゴンには、戦い、勝つことに、迷いもためらいも無い。
それは、シンプルで誇り高く、美しいとさえ思えた。
「俺、昔は別の世界の人族で、その世界で死んで、この世界に生まれ変わった、って話したよね?」
「そういえば、そんなこと言ってたわよね。
だから人族の冒険者達を助けたの?」
「それも無いわけじゃないけど。
あ、でも、もしアルタミラが人族に討伐されそうになったら、迷わず人族を攻撃するよ。
そいつが、俺が居たのと同じ世界からやってきた勇者だったとしても。」
今の俺は、同じ種族かどうか、ってことより、誰が俺にとって大事なのか、ってことで動くつもりだ。
俺のために角を捧げ、俺のために勇者とも戦う、と言ってくれたアルタミラや、俺を親と慕ってくれる子ドラゴンのために。
「前の世界で、俺、戦って敗れたわけでも、精一杯生きて寿命になったわけでもなくって、ちょっとした不注意で死んじゃったんだよ。
俺が生きていた国は、その世界でも特に平和な国で、自分が突然死ぬだなんて考えたことも無かった。
死んだ時に思ったんだ。
もっと強くなりたいって。
でも、その強いってのは、アルタミラが言うのとはちょっと違うみたいでさ。」
「どう違うの?」
「俺の親父が好きだった物語の主人公のセリフらしいんだけど。
『タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格もない。』
っていうのがあるんだ。
タフってのは、頑丈さっていうか、負けない強さっていうか。
相手を殺したり打ち負かす強さじゃなくって、どんな相手にどんな攻撃を受けてもへこたれない強さなんだ。
親父は俺にそっくりなヘタレで、いつも他人に頭を下げてて、全然タフって柄じゃなかったけど。
でも、元の世界のことを客観的に見れるようになって分ったんだ。
ヘタレな親父が、立場を嵩にきて相手をやりこめるような取引先や、無茶なこと言ってくる上司に頭を下げてたのは、相手を怖れてたからじゃなくて、俺達家族の生活を守るために闘ってたからなんだ、って。
自分の思い通りにならない相手をやっつけたり、地位や経済力を使って他人を支配する力はなかったけど、家族を守って幸せにするための、タフさと優しさがあったんだ、って。
俺も、そんな強さが欲しいんだ。
意見や立場が違う相手をすぐに殺しちゃうんじゃ、『魔王』と変わらない。
俺は『魔王』の役はやらない。
アルタミラに比べたら人族なんて遥かに弱いことは分ってるけど、出来る限り相手を理解して交渉で解決して、人族とドラゴンが滅ぼし合わなくていい世界にしたいんだ。
俺の力――大したもんじゃないけど――は、俺の大事な人を笑顔にするために使いたいんだ。」
「甘っちょろいわね!?
――でもアイザルトらしいかな。
ワタシのことも蘇生してくれたもんね。
ところで、アイザルトの言う『俺の大事な人』にはドラゴンは含まれるのかしら?」
「はっ、言われてみればドラゴンしか居なかった!?
じゃあ、言い直すと、俺は、俺の力を、誰かを倒すためじゃなくて、『俺の大事なドラゴン』を笑顔にするために使いたいんだ!」
クスリ、と微笑むアルタミラ。
「全く、話があべこべだわ。
ドラゴンが主のために闘うものなのに、主がドラゴンのために力を使う、だなんて。
――でも、悪い気分じゃないわね。」
そう言うと、アルタミラは俺に顔を近付けてきた。
この「大広間」は、魔素が自然発光しているとは言え、死の大空洞ほどの魔素濃度はなく、薄暗くて普段ははっきりとは見通せない。
普段はVRの探知画面越しに相手を見ているのだが、表情や体の細部までくっきり見えている訳ではないのだ。
いつも、アルタミラに魔力を送るためにキスをする時、肉眼でその美しい貌を間近に見ると、背筋がゾクリとするような、痺れるような感覚を覚える。
でも、今日のアルタミラは、いつもの妖艶な微笑みではなく、これから神聖な儀式を行うかのような、真剣で厳かな表情をしているように見えた。
お互いの吐息を感じる距離まで顔を近付けると、アルタミラは俺の目を覗きこみながら、ゆっくりと俺を押し倒した!
「ア、アルタミラ?」
「アイザルト、ワタシと番いになる?」
「番い?」
「人族風に言えば、結婚、ね。」
おいおい、プロポーズかよ!?
い、いきなり……でも無いか。
俺にとって、アルタミラが何なのか。
悩むまでもないじゃないか。
「ああ!俺、アルタミラと番いになる!
俺は、アルタミラと子ドラゴンのために生きるよ!」
アルタミラは、俺の唇を自分の唇で塞ぐと、体勢を入れ替えて、仰向けになった俺の体の上に跨った。
アルタミラの右手が、俺の髪をゆっくりと梳いた後、頬を撫でる。
「嬉しいわ、アイザルト。
さあ、魔力をちょうだい。
いつもとは違うやり方で。
ワタシの中に、送り込んで!」
初めては、うまく行かなかった。
「気を落とさないで。何度でも付き合ってあげるから。」
恥ずかしさと情けなさで、シュンとしてしまった俺に、アルタミラがやさしく声を掛けてくれる。
「ぁ、うん、大丈夫だよ。ぇ?」
アルタミラが俺の両手を自分の胸の双球に導いてやさしく微笑む。
両掌で、双球の重みと柔らかさ、すべすべとしていながら吸いつくような肌触りを堪能しているうちに、俺は素早く立ち直った!
さっきは無我夢中で何もできなかったけど、そもそもアルタミラの魔力を回復してあげる行為だったはず。
全身の魔力の流れを意識し、少しずつ魔力送り込むように調整しながら、ゆっくりと動くようにした。
今度はうまく出来てるみたいだ!
しばらくそのまま動き続けると、アルタミラが俺の胸に倒れこんできてた。
俺は、もう一度果てた。
それから。
俺もアルタミラも体力ステータス値が桁外れなせいか、延々としてしまった。
途中で俺の魔力が枯渇しだしたら、アルタミラの方から逆に送り返すことで俺を回復し、続けることが出来たのだ。
ヨガのカーマスートラとか、房中術だか閨中術に、こういうの無かったっけ。
目覚めた時。
なんだろう、見慣れてきた洞窟が、初めて訪れた観光地のように、いやに瑞々しく感じられる。
疲れてるのに、この世界にもう一度生まれてきたばかりのような、新鮮な活力を感じるのだ。
アルタミラも、何か、つやっつやなんですけど。
「おはよう、アイザルト。
昨日はステキだったわ。
朝の魔力提供、お願いしていいかしら?」
俺の分身がおっきする!
「朝はそっちじゃなくて。
疲れちゃうから、キスだけよ。
……また今夜ね。」
おっしゃぁぁぁぁぁ!
俺、頑張れる、なんか物凄く頑張れるよ!
と思った俺だったが、死の大空洞へ来ると、角の魔力回復頼みでひたすらぐったりと寝転がったままその日を過ごしたのだった。
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