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【大相撲】

逸ノ城は「モンゴルの遠藤」 初の遊牧民関取誕生へ

2014年2月28日 紙面から

稽古場に立つ逸ノ城(右)=大阪府大東市の湊部屋で(岸本隆撮影)

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 モンゴルの怪物が春場所で新十両昇進をかけて挑む。逸ノ城(いちのじょう、20)=湊=への期待は、まさに「モンゴル版遠藤」。昨年の実業団選手権で優勝、外国出身力士として初めて幕下15枚目格付け出しの資格を取得。初土俵の初場所は6勝1敗で西幕下3枚目に番付を上げた。今場所で十両昇進を決めるのは確実とみられ、史上最速の所要3場所で新入幕した遠藤の記録に並ぶ期待もかかっている。

 逸ノ城には相撲エリートの遠藤とは違う野性味があふれている。生まれたのはウランバートルから約450キロ離れたアルハンガイ県バットツェンゲル郡。春場所の番付表に載っているモンゴル出身力士は27人いるが、逸ノ城はその中でただ1人の遊牧民。過去にも例がなく、十両に昇進すれば史上初の「遊牧民関取」となる。

 27日に大阪府大東市の湊部屋へ弟子を出稽古に連れて来ていた浅香山親方(元大関魁皇)も舌を巻いた。2月10日に右膝をけがしたため、この日は軽めの稽古で終えていたが、「ごっつい。相撲が力強い。体を生かした相撲を取ってる。相撲を覚えれば、すぐに上位に定着する」

 14歳でアルハンガイ県のモンゴル相撲大会(13、14歳の部)で優勝しているが、相撲はまったくの素人だった。だが、知人に紹介されて参加した鳥取城北高校相撲部・石浦外喜義監督のセレクションで優勝。17歳で同校に相撲留学すると、卒業までに5つのタイトルを獲得した。

 卒業後は「ほんとはすぐに入門したかった」が1部屋1人という外国出身力士の枠もあって、同校のコーチをしながら1年間の「相撲浪人」を経験した。その間に実業団横綱を獲得した。

 家族は大草原で生活する遊牧民。「羊とヤギを合わせて400頭。牛は20頭。馬は40頭。日本に来る直前まで世話をしてました」。四季に合わせて移動するため、時には「学校までの距離が35キロあったこともある」という。

 高校に通っていたため日本語は問題ない。食事も「刺し身、おすしは大好き。納豆も大丈夫」と話し、性格も真面目。十両に昇進したら「モンゴルにお金を送りたい」という。来日して4年たつが、帰国したのは1度しかない。「両親を日本によんであげたい」とも。

 子どものころは馬に乗って放牧を手伝った。「今ですか? 馬がきついでしょ」と言うほどたくましく成長した。その姿を見せてあげるのが何よりの親孝行だ。 (岸本隆)

 

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