001 週刊声優批評008 小西寛子
えぇ、今回取り上げた声優さんは、現在活動はされておらず”消えた声優”として今なお語られている人物です。まず最初にお断りしておきますが、今回は、全て私の憶測で書いた内容ですので、その辺りを把握しておいて下さいな。

(代表作はWikipediaより抜粋)

1,元気で生意気な少年系
・おじゃる丸(おじゃる丸)
・今、そこにいる僕(ブゥ)
・Bビーダマン爆外伝(ピンクボン)

2,舌足らずな可愛い子系
・バブルガムクライシス TOKYO 2040(ネネ・ロマノーヴァ)
・ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー(ぽぷり)

3,チョット色っぽい女性系
・宇宙海賊ミトの大冒険2人の女王様(陽怒)
・D4プリンセス(我王ねじる)
・逮捕しちゃうぞ(若林瀬奈)

4,前向き少女系
・十兵衛ちゃん-ラブリー眼帯の秘密-(菜ノ花自由)
・魔法使いTai!(沢野口沙絵)



【小西寛子】は何故消えたのか?


彼女の名前は、初代(おじゃる丸)<1998年>の声優として聞かれた方も多い事でしょう。私として印象に残っているのは、同じ年のバブルガムクライシス TOKYO 2040(ネネ・ロマノーヴァ) と<1999年>の十兵衛ちゃん-ラブリー眼帯の秘密-(菜ノ花自由)ですね。

(ネネ)は主役4人組の中では最年少で、いつも足を引っ張ってしまうドジッ娘さんなんですが、天才ハッカーでもあり、珍しく活躍する時は舌足らずな甘え声ながら凄いことをやってのける、そんなギャップに萌えてしまったんですよね。

一方、(菜ノ花自由)では、だらしない父親に手を焼くも、そんな父親でも「大好き!」を感じさせる女の子でした。変身後の(柳生十兵衛)では、クールでカッコイイ役を極めて抑えた声で演じてました。どちらも演技のギャップが新鮮で印象的でしたね。”十兵衛ちゃん”は パート2として-シベリア柳生の逆襲-が<2004年>に作られましたが、『堀江由衣』さんにキャストが変更されました。『堀江』さんには悪いですが、シリアスな(柳生十兵衛)時には演技に少し不満が残りました。ホント【小西寛子】さんの復帰を祈ったほどです。

【小西寛子】さんはその当時、ファンは勿論の事アニメ制作陣からも絶大な人気と信頼を得ていました。ただ、所属事務所を”アーツビジョン”から”田辺エージェンシー”に移し、顔出しの仕事を始めたときから、おかしな方向へ動き出します。

<1998年>〜<2000年>ぐらいからでしょうか、声優さんの顔出しの仕事が増え始めます。エヴァンゲリオンの映画の成功あたりですね。テレビでも「このアニメのキャラクターをこの声優さんが演じてます」なんて番組が多く作られました。

そんな流れの中、【小西寛子】さんは(おじゃる丸)の”あの声”と本人の可愛らしい外見とのギャップに驚かれる。そんな感じで幾つかのテレビ番組に出演されてました。恐らくここで彼女とその周辺にいた人々が、勘違いをし始めたのではないでしょうか?


【小西寛子】を”他山の石”とする無かれ。


その時に、テレビ番組の出演時のギャラと、声優の仕事のギャラとの違いに驚いたのでしょう。そして、その当時はアメリカのビジネスモデルが、多く日本に紹介され始めた頃です。その中には役者・演者の権利関係も含まれていたと記憶しています。

【小西寛子】さんは一種の賭けに出ます。

(おじゃる丸)の声優の契約更新時に、NHKに向けてとあるメッセージを発信しました。
詳しくはこちらをご覧下さい。
おじゃる丸声優交替に関するリソース

”おじゃる丸声優交替に関するリソース”
http://members.jcom.home.ne.jp/jintrick/binchan/special/voiceact.html

※この記事は、小西寛子さん側からの申立により削除された模様です。

※小西寛子さん自身が、ブログにて当時の告白をされ始めた様です。
http://hirokokonishi.blogspot.jp/2014/02/blog-post_9549.html
こちらのリンク先により、内容をご確認下さい。)

私の記事とは相違点があるかと思います。どちらの主張に共感するかしないかは、お読みになった皆様で、ご判断下さい。


要は、ギャラ値上げの交渉が決裂し、(おじゃる丸)の役を降ろされたのかもしれません。当時は【小西寛子】さんに同情的なコメントがネット上では多かったように思います。

声優のギャラ・待遇改善のため一人立ち上がったドン・キホーテ・・・いやいやジャンヌ・ダルクと、もてはやす向きさえあったのですが現実はかなり様子が違ってましたね。確かに、(おじゃる丸)の声を出すこと自体が役者にとってはかなりの負担になっていたとは思います。

その辺りと、役者の権利を立てに迫りましたが、あっさり討ち死にします。彼女の失敗の原因は、一人で先走ったが為、他の賛同者を自分の味方に付けられなかった事ですかね。日本では、主張が幾ら正しくても、周りに迷惑をかけた人間は、結局は遠ざけられてしまうのです。一連の”食品偽装問題”で告発者が必ずしも幸福な結末を迎えていない事にも繋がってますね。

「【小西寛子】の元関係者は問題を起こしかねない」こんなレッテルが貼られてしまうと、アニメ業界では誰も扱わなくなります。本人も居づらくなったからでしょうか、テレビ番組のナレーターを始めますが、それは成功しませんでした。

そして、【小西寛子】さんは表舞台から姿を消してしまいます。


【小西寛子】を含め声優のギャラは何故安いのか?


もう一人、取り上げたいのは、記憶も新しい『神谷明』さんの(毛利小五郎)役の降板事件ですね。<2009年>9月に、本人のブログで降板の事実が告げられました。『神谷明』さんが声優の地位向上に尽力されているのは知ってました。

神谷明「名探偵コナン」の毛利小五郎役解任!その経緯と真相は?

まぁ、原因は色々あるとは思います。要はギャラの高い『神谷明』さんを切りたかった勢力があり、その計略に絡め取られてしまったというところでしょうか。

声優のギャラが安いというのは、昔から語られていて、周知の事実だと思います。その都度声優の先輩方は待遇改善を叫び、組合を組織し運動をしてきました。
二次使用における再放送時の報酬や、映像ソフト化での利益の配分など色々向上出来た部分もありますが、他のテレビや映画での俳優に比べると明らかに低いギャラの姿があるのです。

アニメの制作費は、1話あたり1〜2千万円位といわれてます。通常の30分アニメで1千万円が現在の相場だそうです。物理的に掛かる費用を差し引くと、人件費に充てられるのは極めて少なくなるのが想像できますね。

制作費が潤沢だと思われる作品でも、多くは作画に割かれて、カット数の多さや原画の顔ぶれに有名人を起用したり、人数を多く投入できる位です。つまり、声優には作品の制作費の大小に関わらず、あまり多くの報酬は弾めないのですね。

話が変わりますが、最近のアニメでは声優さん達が番組のテーマ曲を歌っている場合が多いですね。私自身、声優さんの歌われる曲自体は好きなのですが、それを、オープニングやエンディングに使うことには懐疑的なのです。もっと専門の歌手を使ってあげて下さいと叫びたい!心の叫び!

しかし、ここに声優さんのギャラを安く抑えても不満の出ない仕組みがあるのです。”歌唱印税”です。売り上げの1%だといわれてますが、1200円のCDが仮に5000枚売れたとすると、6万円が歌った人に払われる事になります。売り上げ枚数が増えればその分声優さんの手元に入る金額は多くなりますが、人数が多い場合は当然分け前が減りますが。。。

声優さん達が、曲のプロモーションで全国を精力的に飛び回り、宣伝に力を入れるのも納得出来るでしょう。曲の売り上げが直接本人に還元されるからです。何とかそれで声優の不満を抑えているのが実態といったところでしょう。

曲を出して、潤う声優さんはホンの一握りです。でも取り分としては、声優事務所にも払われてそれが巡って他の声優さんの報酬に化けてきます。その辺りが声優のギャラ改善の限界なのでは無いでしょうか。

さてさて、以上の事から、他の多くの声優さん達は何を学ぶべきでしょうか?

あまりにも悲観的ですが、「ギャラの向上を望むのは諦めろ」これに尽きますね。「共存共栄に力を注げ」です。出る杭が打たれるのは日本では仕方の無いことなのでしょう。哀しいけれど現実なんですよね。

昨年の<2009年>にアニメの殿堂の話が結局立ち消えとなりました。117億円”箱物”に費やすのなら、製作現場に還元しろと言われてましたが、それが実行されそうな雰囲気など皆無です。この事からも世界的な動きでも無い限り、アニメの現場は何も変わりそうもありません。

コンテンツとしてのアニメ・漫画は、日本の大きな強みなのですが、それが効率よく利益として還元されているとは思えません。海賊版やネットでの違法配信も含めて、製作者の権利が世界的に保証されて、それがちゃんと跳ね返って来るようにしないといけませんなぁ。

日本国内だけでは、”パイ”は縮小しているばかりです。しかし、日本から世界に発信しようとすると”日本語”が大きな障壁となってしまうのですね。その辺は、外国の人材を取り入れながら壁の段差を低くしていくことに務めてはどうでしょうか。

何か、話が大きくなりすぎましたが、【小西寛子】さんという類い希な才能を持つ人が失われてしまったのは、声優界全体では大きな損失です。このような事が二度と起きないように、如何にアニメ業界を発展させるのかが、まず最優先に解決しなければならない問題点だと思います。そうすれば自然と声優の待遇も向上されると思うのです。


さてさて、前回、今回と二度にわたって”消えた声優”さんを取り上げました。『丹下桜』さんの場合は、運良く戻って来られましたが、【小西寛子】さんはそれが望めそうもありません。このような事を繰り返して欲しく無いが為、今回取り上げた次第です。

次回は、思い切って。。。

※赤字の部分は、2013年12月29日に変更
※青色の文字の部分は、2014年02月15日に追加しました。

関連記事:週刊声優批評 第14回 【平野綾】「何処を目指し何処へ行く?」

返信 週刊声優批評 第20回 【小西寛子】「消えた声優と教訓」へのコメントの返信



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