社説:ビットコイン 協調して規制・監視を

毎日新聞 2014年02月13日 02時30分

 インターネット上で流通する世界共通の仮想通貨「ビットコイン」の“負”の側面にスポットが当たり始めた。価値の乱高下に加え、先月末には米国で、ビットコイン界の大物と目されてきた人物が違法薬物などのネット取引を助けたとして逮捕された。東京に拠点を置くビットコイン専門の大手取引所が一部取引を停止するなど、混乱も広がっている。

 こうした中、各国はそれぞれ対応に乗り出した。だが、国境や既存の規制の網目をぬって流通する無国籍通貨だ。規制当局による対処が国単位では限界がある。日本政府や日銀は海外の当局と協調し、実態の把握やルールの整備を急ぐべきだ。

 ビットコインは、円やドルのような「国家」の後ろ盾がない、単なる暗号データである。「中本哲史」なる人物の論文が元となり、2009年に流通し始めた。それが、銀行やクレジットカードよりはるかに安い手数料で地球上のどこへでも送金や支払いができる便利さから人気を集め、円換算の値打ちは登場当初の100円未満から昨年11月末には一時12万円まで高騰した。最近はネット通販だけでなく、街中でも受け取る店舗が増え、流通量は円換算で昨年1兆円を突破したとされる。

 しかし、ここへきてマイナス面に注目が集まっている。その一つが相場の振れ幅の大きさだ。昨年12月に、中国の金融当局が国内銀行にビットコインがらみの取引を禁じると、対ドルの価値は半減した。より深刻な問題は、匿名で取引できる仕組みのため、麻薬密売や犯罪資金の洗浄(マネーロンダリング)などに悪用される余地があることである。

 各国の対応はさまざまだ。ロシア政府は仮想通貨を一切禁止すると発表したが、米国ではビットコイン自体は非合法とせず、犯罪利用を防ぐために取引所を免許制にする案が検討され始めた。日本では、日銀が研究を進めているというが、「既存の法律の対象外」(金融庁)と、政府が積極的に動く気配はまだない。

 先進7カ国(G7)や主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議なども活用し、犯罪への悪用を防ぐ共通の対策作りを急ぐべきだ。ビットコインのリスクを国民に理解してもらう啓発活動も要る。

 一方で、なぜビットコインが支持されたかの背景を見つめることも大切だろう。銀行を介した海外送金の手数料は高すぎないか。既存通貨の後ろ盾であるはずの国家が、財政悪化や中央銀行による量的緩和など、通貨の信用を落とす行為に明け暮れていないか。実体のないバブルだと片付けるのは簡単だが、バーチャル通貨が発したリアルの世界への警鐘と受け止めた方がよさそうだ。

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