強制連行:「日中声明で請求権放棄」最高裁判断
毎日新聞 2014年02月26日 12時37分
約4万人に上るとされる中国人の強制連行を巡っては、日本の裁判所でも1990年代以降、生存者や遺族が日本企業を相手にした提訴が相次いだ。地裁段階では勝訴判決も出たが、最高裁は2007年4月、「72年の日中共同声明により、中国国民は裁判で賠償請求できなくなった」との初判断を示し、原告敗訴が確定。以降、各裁判所はこれを踏襲している。
07年の最高裁判決は一方で強制連行の事実は認め、「被害者の苦痛は極めて大きい」と救済に向けた努力を促した。一部の企業は自主的に和解に応じている。
韓国でも00年代に入り、戦時中に日本企業で働かされた韓国人元徴用工らによる提訴が相次いだが、原告の敗訴が続いていた。しかし韓国最高裁は2012年、新日鉄住金と三菱重工を被告とする訴訟で個人請求権を認める初判断を示し、原告敗訴の高裁判決2件を破棄。ソウル、釜山両高裁での差し戻し審で昨年7月、原告が逆転勝訴。今年中にも最高裁で判決が確定する見通しだ。
判決が確定すると、韓国内での資産差し押さえも可能になる。日本政府は、韓国側の対応によっては国際司法裁判所(ICJ)への提訴を含めた法的対応を取る方針で、大きな外交問題になることが懸念されている。【石川淳一、ソウル澤田克己】