左は過去にも紹介した、アウロラ カルロ・ゴルドーニじゃ。純銀軸で首軸が先端まで太いモデル。そして何より初期のアウロラ 88と同じく、非常に鋭角なペン先を持つ。アウロラ 88は14金ニブだったが、このカルロ・ゴルドーニは18金のニブを持つ限定品。同じニブを持つものは、アウロラ コロンボという金無垢モデルだけじゃった。
それでは、どれくらい違うのか比べてみよう。左は通常のアウロラの限定品用のBBニブ。右がカルロ・ゴルドーニの鋭角のMニブじゃ。この写真ではニブの根元の位置を合わせている。
まず模様がまったく違う。カルロ・ゴルドーニではソケット内部に隠れている部分にも【AURORA 750】との刻印がある。また、刻印自体もかなりシンプルじゃ。そして全長はカルロ・ゴルドーニの方がかなり長い。そしてかなりエグったように細い。
一方で通常のニブはハート穴から先の三角形がかなり鈍角に見える。ニブの根元からハート穴までの距離は通常ニブの方が短い。そしてニブ根元に空いた穴の位置はカルロ・ゴルドーニの方が上にある。実はペン芯の設計も一部だけ異なっている。それは次回のWAGNERででも紹介しよう。
しかし、これだけでは書き味について何も想像できまい。今度はハート穴の中心を合わせた画像を紹介しよう。
こちらの画像を見ると、ハート穴からイリジウム先端までの長さがわかる。いわゆる穂先の長さじゃ。こちらで比べてみてもカルロ・ゴルドーニの方が長いが、MとBBとのイリジウムの大きさの差を考えると、同じMで比較すれば穂先の長さの差は縮まるであろう。
ペン先の柔らかなのファクターの一つに穂先の長さというのがある。他が同じ条件なら穂先が長い方が弾力は出る。そして穂先からイリジウムまでの三角形が鋭角なほど弾力が出る。
この事実からだけ考えると、カルロ・ゴルドーニのペン先はさぞや柔らかいであろう!なんて素敵!と思われる方もいるじゃろう。
しかし、ペン先の柔らかさはそれだけでは決まらない。ちなみに両者のペン先の厚みは同じ。書いた感じの弾力に差は無い。では、どうしてカルロ・ゴルドーニのペン先は見かけほど弾力が無いのか?
それはお辞儀の仕方の差。カルロ・ゴルドーニのペン先はソケットから外すと非常に深い角度でお辞儀している。ペン先のスリットはガチガチに閉じている。それをペン芯の上に載せてソケットに押し込んだ段階でペン芯に押し付けられたペン先がイヤイヤ開き気味になりインクが出る仕組みになっている。
従って筆圧をかけてペン先を開こうとすると恐ろしいほどの反発力で反りを戻そうとする力が働く。結果として穂先が長く、鋭角のペン先を持っていても、弾力が無い!と感じてしまうのじゃ。
これが失敗原因!すぐに高級モデルからペン先を修正し、アウロラ 88もいつの間にかオプティマと同じペン先にしてしまった。
ところが、このカルロ・ゴルドーニのペン先に、あるおまじないをすると驚くほど書きやすいペン先になる。元々格好は現行品よりはるかに良いので、書き味が改善されればすばらしいペン先になる。
実は先日のペントレであるいたずらをしてみた。
アウロラ・ダンテにカルロ・ゴルドーニのペン先をつけて並べて見たのじゃ。ただし2時間だけ。最初はダンテとカルロ・ゴルドーニともに正しいニブを付けて並べておいた。相場より高い値段をつけていたので、相場を知っている人ほど手に取ってみようとはしない。
そしてあるタイミングでカルロ・ゴルドーニとダンテのペン先を交換した。この2時間の間にダンテを購入した人がいたら、世界で一本の万年筆を手に入れたかもしれない。ヒヤヒヤしながら見ていたが、最初の思い込みがあるせいか、誰も手を出そうとしなかった。
こういうギャンブルも毎回のペントレでしている。今回は松葉杖だったので、素早い動きが出来なくてすり替えに苦労した。ヒヒヒ。