「日本は資源がないから安い原材料を輸入して高い製品にして輸出して稼ぐ加工貿易の国だ」というフレーズをお聞きになった経験はないでしょうか。確かにこの方法で高度経済成長を成し遂げ、1990年代までは稼いでいたといえるでしょう。しかし財務省が2014年2月に発表した「経常収支」(海外での稼ぎが分かる数値)は黒字(もうかっている)ながら前年より31.5%も減少して3.5兆円に止まりました、「加工貿易の国」論がピンチに陥っています。
経常収支には「4つの収支」
経常収支は次の4つで成り立ちます
(1)貿易収支……輸出額-輸入額
(2)所得収支……海外の日本企業などが国内に送金する「仕送り」-外国の企業が日本で稼いで母国へ送金した「仕送り」
(3)サービス収支……日本旅行に来た外国人が日本に落とした金-海外旅行者が現地で落とした金
(4)経常移転収支……途上国援助
このうち経常移転収支は性質上常に赤字なので、実態を知るには(1)(2)(3)となります。
[図解]経常収支の内訳
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■貿易収支
10.6%の大幅な赤字となりました。理由は
・輸出額が伸び悩んだ
・輸入額が増えた
しかあり得ません。うち輸出額はアベノミクスの効果などで円安に振れているにも関わらず、です。1ドル=80円が1ドル=100円になるのが円安で、ドル圏で同じ1ドルの輸出額で売っても、円安になれば20円もうかるわけですから。
理由は2つあります。長期で見れば1985年のプラザ合意から、短期で考えても2008年のリーマンショックから、円高基調が続いてきて、製造業の多くが円とドルの関係などを示す「為替」に左右されない海外進出を進めてきて国内から輸出しようにもその余力自体が少なくなっているという点です。プラザ合意とはドル高に悲鳴をあげたアメリカがドル安(日本でならば円高)誘導をお願いした会議で、それまで235円から一気に急騰しました。リーマンショックは一時期世界大恐慌にもなりかねない金融収縮が米欧同時に発生し、うち比較的安全な資産とされた円が買われました。つまり長期あるいは短期のトレンドで円高は避けられず製造業の体質が変わってしまって一時的な円安でどうなるものではないのです。
もう1つはドイツやオランダなど欧州の輸出国がEU域内の他の先進国が主な輸出相手国となっている一方、日本は中国を始めとするアジアの新興国が主要輸出先になっている点。新興国市場を開拓するのはいいのですが、そこで売れる値段は当然安くなります。
「輸入額が増えた」最大の理由は2011年の東日本大震災後の火力発電増大で原料の天然ガスや石油の輸入量が増えた上に円安がここではマイナスに作用して金額を押し上げました。今後は電力会社任せになっている割高の燃料費を下げるとか、革命とも呼ばれているアメリカの新燃料「シェールガス」を売ってもらうといった工夫が必要でしょう。日本に一番近い天然ガス産出国のロシアからパイプラインが引ければ、今は液化して船で運んでいてコストがかかる分を減らせそうです。また日本は島国で広大な排他的経済水域を太平洋上に持つので、そこに眠る「燃える氷」メタンハイドレートの実用化も視野に入れるべきでしょう。
2014/2/27 02:15 更新
『知識のオープンソース化』『ワーキングスペース革命』のプレゼン12本(2014/2/18)