福島原発事故:「就労不能損害」賠償 1年後に打ち切り
毎日新聞 2014年02月24日 23時33分
◇東電、帰還の見込み時期に関係なく
東京電力は24日、福島第1原発事故に伴い避難区域に指定され、就労が困難になったり、給与が減るなどした「就労不能損害」の賠償を巡り、2015年2月末でいったん打ち切る方針を発表した。避難指示が将来解除された場合は解除後1年以内に帰還した人に限り、就労賠償を1年間限定で再開する。国の指針は賠償期限を明示していないが、東電は放射線量や帰還の見込み時期に関係なくいったん打ち切るとしており、避難者から「一方的だ」との批判が出るのは必至とみられる。
就労賠償については事故当時、避難区域内に居住するか勤務先があった場合などを対象に今年2月末まで、失職や新たな仕事が以前より給料が低い避難者に差額を支払う方針を示していた。3月以降の方針は明らかにしていなかったが、東電は今回、来年2月末を当面の賠償期限と決めた。避難指示解除後は、1年以内に帰還した人に限り1年間限定で就労賠償が再開される。東電は「建設業を中心に雇用環境が回復している」などと理由を説明している。
しかし、雇用環境を巡っては、除染や復興事業の増加で高い求人がある一方、福島労働局はこのような雇用が長期で維持されるとはみておらず、避難者から批判が噴出するとみられる。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が12年3月にまとめた指針は就労賠償の期限について「少なくとも現時点で具体的な目安を一律に示すのは困難で、個別の合理的判断が適当」と言及しており、指針が明記しない中で東電が期限を示したことになる。
4月に避難指示が初めて解除される福島県田村市都路地区の農業、坪井幸一さん(65)は「打ち切りが早すぎる。将来帰還したい人の意欲がそがれる」と批判した。
福島第1原発事故の避難者に対する東電からの賠償は他に▽避難によるストレスや生活費増に対する「精神的賠償」▽土地や建物、家財道具などの「財物賠償」▽事業者の利益減への「営業損害」−−などがある。精神的賠償については避難指示解除後1年で打ち切る方針に批判が出ている。営業損害は就労賠償と同様に、国の指針では期限が明示されていない。【深津誠】