NHK:半沢直樹より面白い!? 籾井会長の“剛腕”ぶり

毎日新聞 2014年02月25日 15時17分(最終更新 02月25日 15時33分)

衆院予算委に参考人として出席し、後方からメモを差し出されながら民主・原口一博氏の質問を聞く籾井勝人NHK会長=国会内で、藤井太郎撮影
衆院予算委に参考人として出席し、後方からメモを差し出されながら民主・原口一博氏の質問を聞く籾井勝人NHK会長=国会内で、藤井太郎撮影

 「政府が右と言うことを……」の発言は、翌日の就任会見で飛び出した。「不偏不党」を定めた放送法に抵触する恐れがあると国会で追及され、従軍慰安婦など一連の問題発言と共に取り消した。

 「籾井氏を三井物産の副社長まで引き上げたのは上島重二元会長です。上島さんは自分が課長時代から忠実に仕えてきた籾井氏がかわいくて仕方がなかったのでしょう」(同社OB)。籾井氏は社内留学制度でオーストラリアに留学し、鉄鉱石ビジネスを学んだ。帰国後の直属の上司が上島氏。鉄鉱畑の商社マンは、製鉄会社の厳しい注文にどれだけ忠実に応じられるかを競うという。「右向け右」はその習い性なのだろう。

 当時、鉄鉱部門は同社の稼ぎ頭。同部門出身の上島氏が96年に社長に就任すると、籾井氏も97年に役員になり、00年に米国法人社長、2年後には専務に昇格する。ところが国後島を舞台にした不正入札事件などで上島会長は引責辞任。「辞任前、上島さんは籾井氏を社長に推したが、社内から『籾井社長では事態を悪化させかねない』と猛反対にあった」(同)。上島元会長に取材を申し込むと「ずいぶん昔のこと。ほかに適当な人がおられると思う。ちゃんとしたいい記事を書いてあげてください」と話した。

 社長レースに敗れた籾井氏は05年6月に三井物産が大株主だったITサービス大手の日本ユニシス社長に転じる。経済ジャーナリストの水島愛一朗さんは「当時、日本ユニシスは三井物産のナンバー2、3の天下りポストでしたが、それがよほど悔しかったのか昔の鉄鉱石ビジネスの話をよくしていた」と回想する。

 鉄鉱供給の世界最大手、ヴァーレ社(ブラジル)の社長から同社購入を持ちかけられ、自分の一存で「即決OK」したと会見で披露した。「会社が最後にはうんといってくれた。非常に印象深い。やはり一生懸命やらなければ、こういう仕事はできない」と籾井氏。だが水島氏は「いくら商社マンでも何百億円ものビジネスを即決する権限などあるはずがない」。当時を知る製鉄会社元役員は、ヴァーレ社への経営参画の功労者として籾井氏ではなく別の副社長の名を挙げた。水島さんは「社長レースに敗れて経営者としては最後と思っていたら天下のNHKの会長に任命された。はしゃいで話してしまったのでしょう」と同情する。

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