米国の量的緩和(QE3)縮小で、新興国の一部がマネーの流出にあえぐなか、主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が経済成長の底上げ目標を打ち出した。

 今後5年間で世界経済の成長率を2%幅以上かさ上げすることを目指す。金額にして2兆ドル(約200兆円)の規模だ。民間資金を中心とする長期投資を各国のインフラ開発に誘導することが柱だという。

 G20が共同声明で初めて成長目標を設けた背景には、景気回復で緩和縮小に動き出した米国と新興国との間であつれきが高まるのを封じ込める意味合いもあるのかもしれない。

 ただ、日米欧の景気が復調しつつあるとはいえ、成熟した先進国で成長の押し上げには限度がある。かたや新興国は高成長の陰で蓄積された経済構造の矛盾を是正するため、成長の減速がむしろ望ましい場合もある。中国がその典型である。

 いたずらに表面的な数字を追うと、放漫な財政拡張や金融緩和に頼むことになり、むしろ世界経済のひずみが悪化するのではないかと気にかかる。

 成長戦略は11月のG20首脳会議までに具体化する。拙速を戒め、新興国の弱みを他国が補う投融資や技術支援のネットワークをつくる地道な努力を促していくべきだ。

 共同声明は米国を念頭に、異例の金融緩和を正常化する必要性に理解を示しつつ、世界経済への影響にも配慮し、市場の過剰な反応を招かないような丁寧な説明努力を促している。

 一方、新興国にはインフレや経常赤字への対策、経済構造の改革などを求めた。

 米国と新興国双方の顔を立てた格好だが、米国は新興国の金融安定に向けて、さらに取り組む余地がある。問題国にドル資金を融通するスワップ協定を広げることはそのひとつだ。

 なにより、国際通貨基金(IMF)を増資して新興国の割合を高める改革案は米議会が承認せず、立ち往生している。増資に伴う影響力の低下をいつまでも嫌がっていては、米国にとってもマイナスである。

 変調のもう一方の極にあるのは中国経済の不透明感だ。財テク商品の信用不安など「影の銀行」問題が波状的に市場を騒がせている。

 中央と地方の政府、銀行、企業の利害が絡まり一筋縄ではいかないが、国内の駆け引きにかまけて世界に不安をばらまくのでは通らない。早急に処理方針を明示し、金融不安を抑え込む覚悟を見せるべきだ。