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【社説】

ウクライナ政変 国家分裂を懸念する

 再び親欧米路線が始まる。ウクライナのヤヌコビッチ政権が崩壊し改革の好機だが極右勢力の台頭は不気味だ。中、西部と東、南部の対立が激化すれば国家分裂の悪夢も否定できない。

 首都キエフなどでの反政権デモ隊と治安部隊の衝突で八十人以上の死者を出し政権を転覆した政変は、事実上の革命といえる。ソ連から独立以来、最大の試練だ。

 背景にはウクライナが宿命的に抱える「欧州かロシアか」の問題がある。ウクライナは約四千五百万の人口を抱え、欧州有数の地域大国だ。中、西部は親欧米の農業地帯で東部は親ロシアの工業地帯である。二〇〇四年の民主政変「オレンジ革命」の後、欧州統合路線に舵(かじ)を切った。親ロ派ヤヌコビッチ政権でさえ、大筋でこの流れを否定できなかった。

 今回の政変で、皮肉にも決定的な役割を果たしたのはロシアのプーチン政権である。ヤヌコビッチ氏は欧州連合(EU)加盟の一歩となる「連合協定」の調印をロシアの圧力で直前に断念した。このままでは悲願の欧州統合が夢となる。市民のそんな絶望感と怒りが三カ月間にも及ぶ真冬の反政権デモを支える原動力となった。

 政界に復帰したティモシェンコ元首相は「近くEUに加盟する。全てが一変する」との見通しを述べたが、「連合協定」加入はEU加盟への第一歩にすぎない。北大西洋条約機構(NATO)加盟はさらに困難だ。プーチン政権はウクライナをロシアと欧州の「緩衝地帯」に押しとどめることが安全保障上、死活的に重要とみなす。欧米とロシアの火種となろう。

 憂慮すべき出来事も起きている。ウクライナ議会はロシア語を公用語から外す法改正を行った。有数の工業都市ハリコフなど、ロシア語系住民の多い東部の都市では反発が高まっている。南部クリミア自治共和国ではロシアへの帰属を求める運動が再燃している。

 注意すべきはウクライナ民族主義を掲げる過激な極右民族派が台頭したことだ。クリミアや東部の一部地域が、五月にも予定される大統領選をボイコットした場合、国家分裂に向かう可能性も出てくる。極右民族派と親ロシア派住民が衝突する事態が起きれば、最悪の場合、ロシアの軍事介入を招く恐れすら否定できない。

 ウクライナは世界有数の穀倉地帯を抱え、日本にとり、小麦など穀物の重要な供給国だ。価値観外交を掲げる安倍政権は安定化に向け率先して支援するべきだ。

 

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