(英エコノミスト誌 2014年2月22日号)
イタリアの政権を引き継ぐマッテオ・レンツィ氏は、多くの政策を早急に実現すると約束している。
イタリアで史上最年少の首相に就任したマッテオ・レンツィ氏〔AFPBB News〕
ローマにある国家元首の官邸、クイリナーレ宮殿で2月17日に起きたことは、どのような基準に照らし合わせてもかなり衝撃的だった。一方の席に座っていたのは、閣僚はもちろん、国会議員の経験すらない39歳の地方政治家、そしてもう一方の席には89歳のジョルジョ・ナポリターノ大統領が座っていた。
1時間を超える話し合いを経て、ナポリターノ大統領は目の前にいる若きフィレンツェ市長、マッテオ・レンツィ氏に次期政権の組閣を要請した。
レンツィ氏はクイリナーレ宮殿を出ると、首相就任から100日間でイタリアを変えてみせると宣言した。議会両院の支持が得られる内閣を組み、スケジュールを作成できるとの前提に立ち、2月中に2本の柱から成る憲法改革に着手し、3月には新たな雇用法を提案し、4月には行政の合理化、5月には税制改革を進める計画だ(同時に、新たな選挙法の成立も目指す)。
しかも、世界銀行の調査によると家に新たに電気を引くだけでもカザフスタンより時間がかかる国で、これらすべてを成し遂げようというのだ。
並外れた資質を持つ指導者
ほとんど経験のない新しい指導者がいくつもの約束を携えて国政の舞台にさっそうと現れたのは、1994年にシルビオ・ベルルスコーニ氏が「競技場のフィールドに駆け入って」(同氏自身の言葉)きて以来のことだ。
2013年12月に中道左派政党・民主党のリーダーになったばかりのレンツィ氏の到来は、多くの国民(そして、イタリア国民の幸福を願う人々)が待ち望んできた新たな夜明けなのだろうか? それとも、イタリア国民が奇跡を起こすと自称する人物に弱いという事実の、新たな一例にすぎないのだろうか?
レンツィ氏は間違いなく並外れた資質の持ち主だ。驚くほど精力的で、一か八かの勝負を恐れず、決断力があり、魅力的で才能にあふれている。また、イタリアでは多くの支持を得られる大衆性の持ち主でもある。
現在は野党に回っているベルルスコーニ氏でさえ称賛を抑えられない様子だ。ベルルスコーニ氏はレンツィ氏について、左寄りではあるものの自身の若いころにそっくりだと述べているという。19日には、「自分のちょうど半分の年の首相候補に出会うことができて光栄だ」と機嫌よく語っている。