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掲載された論文から思いがけない交流が始まる
加藤 茂明 Ph.D.
分子細胞生物学研究所
核内情報研究分野
教授
“Nature は、論文としては多少未熟でも、これまでの常識を覆すようなインパクトのある成果であれば、積極的、かつ公平に評価してくれます。”
私は東京大学大学院農学研究科博士課程在籍中の1987年、フランスに留学しました。フランスでのボスが Nature に絶大な信頼を寄せていた影響で、私も熱心に読むようになり、論文を Nature に投稿するようになりました。といっても、論文審査は想像以上に厳しく、初めて審査されたのは1994年のことです。以後、計6報を Nature で発表しておりますが、投稿から掲載までに1年以上の手直しを重ねたものも少なくありません。
Nature の編集者やレフリーは、論文としては多少未熟でも、これまでの常識を覆すようなインパクトのある成果であれば、積極的、かつ公平に評価してくれます。ただし、論文受諾までには、追加の実験やデータから、専門用語の使い方、文章表現に至るまで、実に細かく厳しい修正を何度も要求してきます。研究者は皆、こうした苦労を承知しており、それだからこそ、掲載の暁には、惜しみない尊敬と信頼を得ることができます。また、発表論文を読んださまざまな分野の研究者からコンタクトがあることも多く、自分の研究を進めるためのアドバイスや手がかりが得られることもあります。こうしたことは、Nature のような影響力のある国際誌の大きな魅力だと感じています。
現在は、個人的にも Nature を購読しており、昨今のトレンドでオンライン版に頼りがちな学生にも、プリント版を読むことを進めています。ページをめくることで、専門外の領域や科学政策の動向を知ることができ、とても重要だと感じるからです。これまで、一貫して、核内におけるステロイドホルモンなどの情報伝達や、その遺伝子発現制御についての研究を続けていますが、もとは「野生生物の観察」に憧れていました。幼いころは昆虫少年で、原っぱでの虫取りや植物採集が楽しみでした。それが、紆余曲折を経て今日に至っています。夢は、未知の生命現象を突き止め、それを人の役に立つ医療に結びつけることです。
Nature 掲載論文
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p53によるマイクロRNAプロセシングの調節
2009年7月23日号
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レチノイン酸が誘導する顆粒球分化過程におけるヒストンメチルトランスフェラーゼのNアセチルグルコサミン化
2009年5月21日号
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ダイオキシン受容体はリガンド依存的なE3ユビキチンリガーゼである
2007年3月29日号
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活性化型ダイオキシン受容体の結合によるエストロゲン受容体シグナル伝達の調節
2003年5月29日号
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マウスRXRα遺伝子の時間制御型変異体によって生じた皮膚異常
2000年10月5日号
研究内容
核内ステロイドホルモン受容体群による転写制御とエピゲノム、脂溶性ホルモン類の作用の場としての骨代謝調節
略歴
1997年10月 | 科学技術振興事業団 (CREST) 研究代表者(~2002年10月) |
1998年12月 | 東京大学分子細胞生物学研究所 教授 |
2002年11月 | 科学技術振興事業団 (SORST) 研究代表者(~2005年3月) |
2004年10月 | 科学技術振興機構 (ERATO) 研究総括 |