岐阜県庁に勤務する30代男性が自殺したのは上司のパワーハラスメントや過重な勤務が原因だったとして、遺族が24日、県を相手取り、約1億650万円の損害賠償を求める訴えを岐阜地裁に起こした。会見した妻は「私のような、夫を亡くす人を一人でも減らしてほしい」と訴えた。

 訴状によると、男性は2012年4月から県の施設の建て替えに関する業務を担当。秋ごろから体調不良を訴え、11月に上司ら3人と個室に移るとさらに症状が悪化し、13年1月に自宅で自殺した。

 男性は直属の上司から日常的に怒られていたほか、月に100時間を超える残業をしていたと主張。「上司の執拗(しつよう)ないじめと長時間労働で、精神的、肉体的な負荷によりうつ病になった」と訴え、県に賠償責任があるとしている。

 証拠として提出された県による聞き取り調査の結果によると、上司は「どんな仕事ならできるんや」「すいませんじゃねえよ」と男性に言ったことは否定しなかった。また、同僚は「係にどれだけ迷惑がかかるか考えろ」「人事課に『パワハラで脅されました』って言ってこい」という発言を聞いていたという。

 遺族は鍵の貸出簿やパソコンの電源を切った時間などから、男性は亡くなる直前の12年8~12月に、月93~139時間の残業をしたことを主張し、昨年5月に公務災害認定を申請した。これに対し、県は長時間労働について「公務との関連性は深い」、パワハラについて「上司から時には乱暴な口調や言動で指導がなされていた」との意見を付けた。

 男性は12年に結婚し、死亡後、子供が生まれた。妻は会見で「同じことが繰り返されてほしくない。県は何らかの対策をとってほしい」と述べた。

 古田肇知事は「将来ある職員が亡くなったことは大変残念。訴状が届いていないのでコメントは差し控える」とのコメントを出した。(増田勇介)