(2014年2月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
大統領を解任され、国外脱出を図ったビクトル・ヤヌコビッチ氏〔AFPBB News〕
3カ月間の抗議デモの末にビクトル・ヤヌコビッチ大統領が劇的に失脚した翌日の23日、ウクライナ国民と国際社会はウクライナの政治と財政の安定性を取り戻そうとする困難な仕事に着手した。
おびただしい数のウクライナ国民が首都キエフに押し寄せ、先週の治安部隊との衝突で命を落とした約100人のデモ参加者に敬意を表した。一連の衝突は、ウクライナ語圏で親欧州の西部とロシア寄りでロシア語を話す東部・南部に国を分裂させかねない紛争へとエスカレートする恐れがあった。
ヤヌコビッチ大統領に対する抗議デモは、同大統領が昨年11月に欧州連合(EU)との画期的な統合協定の署名を見送り、代わりにロシア政府から不安定なウクライナ経済への救済資金150億ドルを受け取ったことを契機に始まった。
ヤヌコビッチ大統領が大統領解任を決めた22日の議会決議を認めず、側近がヤヌコビッチ大統領が権力の座にとどまっていると声明を出したことで、ロシアがヤヌコビッチ大統領を支持し続けるか、さもなければ、ウクライナの分離独立を煽り立てるかもしれないとの懸念に火がついた。
プーチン大統領とメルケル首相は「領土の一体性」保全で一致
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今のところ、ヤヌコビッチ大統領の失脚について公式なコメントを出していない。同氏の失脚は、ウクライナに対する影響力を取り戻し、同国がEUに近づく動きを阻止しようとするロシア政府の最近の試みを妨げることになる。
だが、良い兆しも見られる。プーチン大統領はドイツのアンゲラ・メルケル首相と電話会談し、両首脳はウクライナの「領土の一体性」が保全されなければならないとの認識で一致したと伝えられている。「両首脳は、経済、政治の両面で安定したウクライナに共通の利益を持つことを強調した」とメルケル首相の報道官は語った。
米国のスーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はロシア政府に警告を発し、親ロシア政権を復活させるためにロシアがウクライナに軍隊を送り込めば「重大な間違いを犯す」ことになると述べた。軍事介入の意図を示唆したロシア政府関係者は1人もいない。
「国の分裂は、ウクライナ、ロシア、欧州、米国のいずれにも利益にならない。暴力が戻ってきて事態がエスカレートすることは、誰の利益にも適わない」。ライス大統領補佐官は米NBC放送の報道番組「ミート・ザ・プレス」でこう述べた。