さてさてさてさて、本日発売のフロントウイング最新作『グリザイアの楽園』のリリースにちなみ、同作品のメインシナリオご担当の藤崎竜太さんにお話をうかがってきましたインタビュー企画の最終回。
最後は、私ことすずこのお気に入り・雄二きゅんのお話を中心に、『グリザイア~』の魅力についてお訊きしました~。
毎回「ぐだぐだだなぁ」とぼやかれつつもここまでやって来ましたっ!
最後も渡辺明夫さんの豪華な描き下ろしイラストとともに、インタビューをお楽しみ下さい。だぶるぴ→すっ♪
■グリザイアの楽園とは
美少女ゲームメーカー・フロントウイングが5月24日にリリースする最新作。
2011年に発売され、同年にその年最もファンから支持された美少女ゲーム作品
に贈られる「萌えゲーアワード2011」にて大賞ほか主たる賞を独占した話題作
『グリザイアの果実』、そしてその続編として生み出され、同じく高い評価
を得た『グリザイアの迷宮』に続く三部作の完結編にあたる作品である。 登場人物たちの厚みのある設定と、それらが生み出す人間模様、
そして軽妙な会話劇の織り交ぜ具合が絶妙であると、
多くのファンから高評価を得た。
もちろん、アニメ『化物語』や『神のみぞ知るセカイ』などで
お馴染みの渡辺明夫氏や、ゲーム『智代アフター』で知られるフミオ氏らを
起用したビジュアル面でも人気を集めていることはご存知のとおり。 詳しくはフロントウイング オフィシャルサイトを参照のこと http://frontwing.jp/
http://0taku.livedoor.biz/archives/4447119.html

http://0taku.livedoor.biz/archives/4452071.html
■第3回 グリザイアシリーズ完結記念インタビュー風コラム
http://0taku.livedoor.biz/archives/4456750.html
すずこ 「こんにちは、すずこです。インタビューコラムも第4回目、いよいよ最終回です! 今回もよろしくお願いいたします」
藤崎 「はい、こちらこそよろしくお願いします」
すずこ 「今回で最終回ということで、綺麗に〆たいと思っているのですが、なぜでしょう? 全然聞きたかったことを聞き切れていません」
藤崎 「まあ、雑談がメインだからね。そりゃインタビューも進まないよ」
すずこ 「実はもうあまり時間もないので、リストを上からザーッと質問していいですか?」
藤崎 「いいけど、ダメなインタビューだよね(笑)」
すずこ 「だから、インタビュー『風』なんですよ(笑)」
■調子に乗れる時に乗れ■
藤崎 「なんかさ、誰もが知ってる人気作家って訳でもないのに、こうして偉そうにインタビューなんか受けてると、藤崎調子に乗ってるなーって思うよね」
すずこ 「そうですか?」
藤崎 「でも、調子に乗れるときに乗っておかないと、じゃあいつ乗るのよって話だよね」
すずこ 「今でしょっ!」
藤崎 「いや、そういう事じゃなくてさ(汗)」
藤崎 「もう10年ぐらい前の話だけど、そこそこ頑張って、そこそこ評価される物を作った後に、次に作る物に悩んだ時期があったんだよね」
藤崎 「良い物を作った後は、何を作っても“期待外れ”になるんじゃないかって無駄にビクビクして、もうこのまま何も作れないんじゃないかとまで思ってた」
藤崎 「そんな時にね、一緒に仕事してた男に言われたんだよ、『そんな時は鏡見てオマエは天才だ! 大丈夫だって、何回も自分に言い聞かせるんだよ』って」
藤崎 「それでね、物書きの人生なんて短いんだし、調子に乗れるときに乗っておかないと、次の波がいつ来るかなんてわかんないぞって、乗れる時に調子に乗れない奴はダメだって言われて、確かにそうかも知れないなってさ…」
藤崎 「だから藤崎が調子に乗っているように見えるなら、それはそれでいいことだと思ってる」
すずこ 「グリザイアの作品内で『男の価値は、どんな男と出会って来たかで決まる』って感じのセリフがありましたが、そういう人との出会いがあって、今の藤崎さんがあるということですね?」
藤崎 「まあ、藤崎にそうやって偉そうに語った男は、調子に乗るだけ乗って、パッと死んじゃったんだけどね(笑)」
すずこ 「あー…」
藤崎 「まあ、そういう訳でね、今回も調子に乗って、偉そうにゲームの話をしよう(笑)」
■風見雄二という男■
すずこ 「インタビューも今回で最終回ということで、私の一番のお気に入りキャラである雄二のお話を聞かせてもらえますか?」
藤崎 「あー、一番のお気に入りは雄二なんだ?(笑)」
すずこ 「オスロさんも捨てがたいんですけどね。“迷宮”の過去編でロリ雄二を膝にのせてるスチルで発狂しかけましたし」
すずこ 「でもやっぱり一番はユージきゅんですかね? 正直、リアルで居たらマジで結婚したいです」
藤崎 「それはなんとも…しっかりしろ? 相手は2次元だよ?」
すずこ 「わかってますよ(汗)」
すずこ 「そもそも風見雄二は、どういった経緯でああいったキャラクターになったんでしょうか?」
藤崎 「最初はね、どこにでもいる主人公だったんだけど、各ヒロインのテーマと過去が決まりだした頃に『こりゃ並の主人公じゃどうにもならんぞ』って事になってね」
藤崎 「で、まあ、だったら、並大抵のことでは動じない経験を持つ軍人ならどうだって事でね、各ヒロインのテーマを考慮した上で、雄二の過去を組み立てた資料を作ったのが切っ掛けかな?」
すずこ 「その資料を作ったのは藤崎さんですよね? 前にファンブックか何かで読みました」
藤崎 「あー、うん、藤崎以外に“軍人”に詳しい人がいなかったからって理由なんだけど、風見雄二の過去は藤崎が決めました」
藤崎 「ちなみに、迷宮の“カプリスの繭”は、その時にスタッフに配った資料をプロットに書き直して、肉付け作業をおこなったものになります」
すずこ 「雄二の過去編、面白かったです。この子はどこまで不幸になれば気が済むんだろうとか、麻子やJBに拾われて、少しずつ良い方へ向かっていく姿とか、クリックする手が止まりませんでした」
藤崎 「女性から見てどんなシーンが印象に残りました?」
すずこ 「そうですね、麻子とJBに拾われた後が印象深いですね。麻子にお風呂で洗われた後、雄二が美少年だったことにJBが気が付いたシーンとか、仔犬とボール遊びをして笑っている雄二を見て驚くJBとか」
藤崎 「…JB視点で物語を見ていたって事かな?」
すずこ 「ああっ! 言われてみるとそうかも知れません! JBの扱いがヒドイと“ヒドイなー”って普通に思ってましたし! 麻子のシカ鍋のエピソードを見た時は“私がしっかりしなきゃ!”ってモニターの前でグッて握りこぶし作ってました(笑)」
藤崎 「女性から見た男の魅力と、男性から見た男の魅力って、わりと表現が難しくて結構悩んだんですが、なるほど、一つ勉強になりました、ありがとう」
すずこ 「いえいえ、どういたしまして」
■男性キャラクターの魅力■
藤崎 「さて、藤崎のようなチンピラが、偉そうに男を語ることが既に噴飯モノであることは十分に承知していますが、それでも、男としてある程度の年輪を重ねてきて、改めて思うこともあります。まずは気軽な気持ちで聞いて欲しい」
すずこ 「はい」
藤崎 「女性から見た『いい男』の魅力とはなんでしょう?」
すずこ 「難しい質問ですね。私の場合は、趣味を理解してくれる人ですかね?」
藤崎 「うん、例えばヒヨコの雄雌鑑定のごとく、初対面から10秒以内で“男の価値”を見抜かなければいけない職業があるとしよう。そんな時、女性は靴と腕時計を査定基準にするそうです」
藤崎 「確かに、高級な服を着て高級な車に乗り、高級な腕時計を巻いていれば、いい男に見えるのかも知れません」
藤崎 「では、男から見た『いい男』とは、どういったものか、風見雄二を例に取って検討してみましょう」
藤崎 「彼の場合、私服こそ上司に与えられた物を着用しますが、基本、彼の身分は学生であり、学園指定の『制服』を着用する機会が多い。運転免許は持っているものの、自分の車は持っていない。巻いている腕時計は、どこででも目にする安物のデジタル時計。どうです?」
すずこ 「確かに、記号としてわかりやすいアイテムは持っていませんね」
藤崎 「それでも、風見雄二という男の腕に巻かれていれば、安物の時計ですら高級時計に勝る魅力を放つようにと意識して表現しました」
藤崎 「それがどんな時計であろうと、その男が腕に巻いていることに意味があり、憧れる。それが藤崎の考える『いい男』の条件であり、藤崎の出した答えが『風見雄二』という男なのです」
藤崎 「ゲームをプレイしてくれた方に『あの男と同じ安物の腕時計が欲しい』と思わせる魅力が出せていれば、藤崎の意図は伝わったのだと思います」
すずこ 「雄二の場合は腕時計一つとっても『壊れなければそれでいい』っていう素っ気なさもあって、禁欲的というか、ストイックな強い男のアイテムって感じがしますよね」
藤崎 「だけど、彼は決して超人ではありません、むしろ弱者です。いくら訓練を受けたとしても、ショットガンを持った男を素手で倒す事もできない」
藤崎 「それでも彼は、必死に強い自分を演出して、周囲に勇気を与えます。それは彼が彼の師匠にそうしてもらったからです」
藤崎 「かつて藤崎が仕事仲間に『嘘でもいいから自分は天才だって言い続けろ、そのまま続ければいつか嘘が本当になる』と言われたようにね(笑)」
すずこ 「おおー、綺麗にお話が冒頭とつながりましたね」
藤崎 「コーナリングとシナリオは“アウト・イン・アウト”が基本ですから(笑)」
すずこ 「よくわかりませんが、なんか凄いですね(汗)」
■楽園へ向けて■
すずこ 「さてさて、お伺いしたいことはまだまだ沢山あるのですが、そろそろインタビューの〆に入らなければなりません」
藤崎 「というか、もう3~4時間ぐらい話してるよね? ずっと雑談ばかりしてたような気もするけど」
すずこ 「という訳で、こちらで用意した“楽園”関連の質問をお伺いしてよろしいでしょうか?」
藤崎 「うん、いいけど、段取りとかグダグダだよね…」
すずこ 「すみません、何しろ初めてなもので(汗)」
すずこ 「えぇと、いよいよシリーズ完結編となるグリザイアの楽園ですが、藤崎さんのお気に入りのシーンとかありますか?」
藤崎 「お約束だなあ(笑)」
藤崎 「蒔菜と幸がコンビニの前でアイス食いながら展開される『薄暮の誓い』なんかはお気に入りかな? 学生の頃、放課後に気の合う友達とちょっと真面目な話とかしちゃった事とかあると思うんです。そういうのを思い出してもらえればと思ってます」
藤崎 「というか、各自の決意が固まるシーンは大体気に入っています。由美子にしても、自身が過ごした部屋を出るシーンで、部屋の照明を消す手がなかなか動かないとか…住み慣れた巣穴から未知に一歩踏み出す時の、肌がヒリヒリするような葛藤とかね」
藤崎 「そういう意味では、みちるの花火のシーンが一番わかりやすいかも知れません。花火が燃え尽きると同時にみちるが口にした『もう、行かなくちゃ』というセリフがすべてを物語っています」
すずこ 「わかります。楽園の体験版で私が一番好きなシーンです」
藤崎 「音声収録に立ち会った時に、あのセリフを聞いて不覚にも少し泣きそうになりました(笑)やっぱり声優さんって凄いですね。文字だけでは表現しきれない感情が上乗せされます」
すずこ 「藤崎さんは、全ての音声収録に立ち会われたんですか?」
藤崎 「あー、いえ、色々と同時進行の作業もあって、全部の収録に立ち会った訳ではないです、立ち会える時だけ」
藤崎 「グリザイアシリーズは専門用語や難しい言葉も多いし、出来るだけ全部立ち会いたかったんですけどね。実際、全く立ち会うことが出来ずに『どうして私の収録の時には来ないんですか?』って、怒られたりもしました(笑)」
すずこ 「やっぱり脚本を書いた人がいないと困る事もあるんでしょうね」
藤崎 「うーん、舞台なんかだと逆に本書いた人間が来ると嫌がられるんですけどね、演出なんかの人も、初日と最終日にしか顔出さないって言いますし」
すずこ 「藤崎さん、舞台もやられるんですか?」
藤崎 「いや、やらない。これは知り合いから聞いた話(笑)」
すずこ 「他には何か、面白いエピソードとかありましたか?」
藤崎 「ん~…あんまり言っちゃうとネタバレになっちゃうんだけど、蒔菜の『ベゲイャロォウイ!』かな?」
すずこ 「なんです? それ?」
藤崎 「いや、とあるシーンで蒔菜が『ベゲイャロォウイ!』って叫ぶシーンがあるんだけど、その発音が気に入ったのかレコーティングディレクターがその後ことあるごとに『ベゲイャロォウイ!』って叫んでた(笑)」
すずこ 「ああ、なんかわかります。蒔菜の口癖って、うつりますよね(笑)」
藤崎 「というか、楽園のお気に入りのシーンの話じゃなかったっけ? いつの間にかまた話題がずれてる(笑)」
すずこ 「まあ、アレですよ、楽園は声優さんの芝居も見どころという事でしょう」
藤崎 「そんな言葉で上手くまとめたつもりなんだろうか…」
■楽園の見どころ■
すずこ 「という訳で、シリーズ完結作であるグリザイアの楽園の見どころを教えてください」
藤崎 「見どころ? うーん、難しいな…しいて言えば女の強さかな?」
藤崎 「力だけが強さではないというのはもはや定型句だけど、何もしない平和よりも、傷ついてでも手に入れるものがあって、立ち上がることができる勇気というか…」
藤崎 「無謀を勇気とは言いませんが、できることを精いっぱいやってみようという心の強さが大事で、それを彼女達は一人の男から学んだのです。そこが見どころかな?」
すずこ 「なるほど、美浜学園の女の子たちの活躍に期待して欲しいという事ですね?」
藤崎 「いや、活躍というか、ほら、雄二が学園の子達にしたのって、結局は自分で立ち上がるために手を引いてあげただけでしょ? それと同じで、今度は美浜の子達が雄二に手を伸ばしたってだけで、最後まで面倒見てもらっちゃ自立じゃないっていうか」
すずこ 「自立、ですか」
藤崎 「それがメインテーマというか、自立して初めて見えてくる物とか、自立したつもりでいても結局人は一人では生きていけないとか、そういった部分なんだけど、まあ、今ここでグチャグチャ話すような事じゃないかな?」
すずこ 「派手な部分ばかりではなく、そういった奥深い部分も見て欲しいという事ですね」
藤崎 「うん、まあ、大体そんな感じ(笑)」
■ユーザーに一言■
すずこ 「では最後になりますが、発売を楽しみにしていらっしゃるファンの方たちになにかコメントを」
藤崎 「あー、はい、非常に多くの方に、楽しみにしているというお言葉を頂いております」
藤崎 「藤崎がグリザイアにかかわるようになってから、もう4年近く経ちます。周りから見れば軽く引くぐらい本気で関わってきた企画なだけに、多くの人に迷惑や苦労を強いてきましたが、そんな鬼子のごときグリザイアもついに終わりを迎えます」
藤崎 「多くの人に愛されてしまったがゆえに裏切ることなどできなかったと言えば聞こえはいいですが、鬼子を産み落としてしまった責任は、今回のグリザイアの楽園で、シリーズ完結という形で果たすことができたのかなと思っております」
藤崎 「これまでシリーズに付き合ってくださったユーザー様におかれましては、はたして満足して頂けるのかという不安がいまだにありますが、どうかグリザイアの行く末を温かく見守って頂ければ幸いです」
すずこ 「はい、以上でインタビューは終了です。ありがとうございました」
藤崎 「お疲れ様でした」
すずこ 「それでですね、よかったらでいいんですけど、今後の作品展開について、なにかお話出来るようなことはありますか?」
藤崎 「ん? それはグリザイアに関して?」
すずこ 「いえ、グリザイアに限らず、次回作とかは、もう何か考えていらっしゃるのかなと」
藤崎 「えっと、ごめんなさい、どこまで話していいのかわかりません。会社の人に聞いてみてください」
藤崎 「グリザイアに関しては、他メディアで…えっと、アニメ化とか、コミカライズとか、家庭用ゲーム機に移植とか、色々と展開していくとは思いますし、ゲームが完結してもしばらくは楽しめると思いますよ」
すずこ 「わかりました、楽しみにしておきます」
全
4回にわたってお届けしたコラムもこれで終了です。一番最初に藤崎さんとお会いした時に『サインを頂けますか?』と言ったすずこ に『ダメ♪』と笑顔で返された時はどうなることかと思いましたが、どうにか無事に終えることが出来ました。
グリザイアシリーズの完結編、グリザイアの楽園も、いよいよ5月24日に発売になります。(※1 私もとても楽しみです。
またいつか、こういった機会があれば、もっと深い質問をたくさんできればと思っています。今度は出来れば居酒屋で、お酒が入っている藤崎さんのお話を(笑)
注釈
(※1 このインタビュー時は発売日(5月24日)以前でした
■藤崎竜太プロフィール 2002年にフロントウイングから発売された『魔女のお茶会』にて制作に参加。 その後『スイートレガシー』『ゆきうた』『グリザイアの果実』にてシナリオを担当。 以降シリーズとして『グリザイアの迷宮』『グリザイアの楽園』のスタッフとして続投中。 |