ドクターZは知っている

超大甘な「国家公務員」人事評価の実態

2014年02月23日(日) ドクターZ
週刊現代
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総務省が2月初旬に、「人事評価に関する検討会報告書」を発表した。この報告書は、国家公務員の人事評価制度について話し合う検討会が昨年7月より開かれており、その結果がまとめられたもの。ほとんど報道されなかったが、非常に興味深い内容が書かれていた。

提言自体の内容は凡庸で、たとえば国家公務員制度改革への対応について、「その適正な実施はもちろんのこと・・・・・・当該審査に資するような措置を講じていく必要がある」と、ものの見事に何も書かれていない。

面白いのは提言部分ではなく、調査内容だ。

総務省が各府省の職員から一定のサンプルを抽出して、各府省の「能力」と「業績」の2項目に関する人事評価を調査しているのだが、その結果がすごい。

一般職員の場合、能力評価でSが5・8%、A53・8%、B39・8%、C0・5%、D0・1%。業績評価だとS6・0%、A51・9%、B41・5%、C0・5%、D0・1%。次に幹部職員だと、能力評価でAが85・7%、B14・3%、C0・0%。業績評価でAが78・8%、B21・2%、C0・0%という結果だ。

なお、国家公務員の人事評価は絶対評価で、Sは「特に優秀」、Aは「優秀」、Bは「通常」、Cは「やや劣る」、Dは「劣る」である。総務省の調査では一般公務員でSとAが6割を占めており、ほとんど人事評価の意味をなしていないことがわかる。

たとえば大学であれば、成績は通常は相対評価。その上で、Sは5%、A15%、B40%、C20%、D20%などと割合が定められ、Dは落第とされる。その意味で、国家公務員はなんとも甘い人事評価だと大学生からも言われてしまいそうだ。

そのためか、この報告書では、公務員を相対評価ではなく絶対評価で人事評価しても問題ないという「言い訳」をたくさん書いている。その一つとして、米国で絶対評価が実施されていることを示す資料が掲載されているが、この資料をよく見ると米国のケースは「幹部公務員」のもの。

しかも、前述の通り日本の幹部公務員の評価はAばかり(=評価すらしていない)だが、米国の幹部公務員はAとBがほぼ半分いる(=幹部公務員の中でも選別が行われている)ことが示されており、総務省の報告書が墓穴を掘っているのが笑える。

日本の国家公務員が相対的な人事評価をしようとしないのは、年功序列で昇進し、給与も上がっていく制度を守りたいからだ。仕事を頑張っているのか、サボっているのかを明らかにすることは、年功序列だから「不要」にしたいわけだ。

さらに、かつて国会において、江利川毅人事院総裁(当時)は、「公務員の採用は試験でやっている(中略)試験ですそ切りをしておりますので、その能力評価が正規分布になるということではないんではないか」と語っている('11年10月5日、衆議院東日本大震災復興特別委員会)。つまり、「公務員は公務員試験を通った人ばかりで、みんな優秀。だから評価が下の人はいない」と言うのだ。この理屈で納得する人は少ないはずだ。

国家公務員の最低評価Dは0・1%で1000人に1人だが、これは地方自治体でも同様だ。かつて大阪府では最低評価は2000人に1人だった。橋下徹氏が職員基本条例を導入して最低評価を100人に5人、つまり5%とすると、職員の不満が出ているという。

大学でも、競争の厳しい民間では最低評価の人はもっと多い。厳しい相対評価をしないということそのものが、公務員のぬるま湯体質なのである。

『週刊現代』2014年3月1日号より

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