巨人−楽天 2回裏無死、巨人・村田(右)から三振を奪い、叫ぶ楽天・松井裕 (左)=沖縄セルラースタジアム那覇で(戸田泰雅撮影)
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◇巨人3−2楽天
楽天のスーパールーキー・松井裕樹投手(18)が23日、巨人とのオープン戦でプロ初となる実戦登板。2イニングを無安打無失点、2奪三振と完ぺきなデビューを果たした。試合は巨人が、中日から移籍した井端弘和内野手(38)の逆転サヨナラ打で勝った。
衝撃が走った。昨秋に激闘を繰り広げた日本シリーズの再戦。そのときにはいなかった松井裕が、主役の座を奪った。坂本、村田から空振り三振を奪うなど、2イニングを6人でピシャリ。イヌワシ軍団の黄金ルーキーが完全デビューだ。
「ストライクが先行して、自分のリズムで投げることができました。相手はすごい打者ばかりだし、テレビで見ていた人たち。投げていて、楽しかったです」
前評判通りの内容だった。直球の最速は145キロをマーク。坂本は宝刀スライダーで、村田はチェンジアップで仕留めた。圧巻の25球。セ王者を相手にしても恐れることなく、ストライクゾーンで勝負を挑んだ。
投球フォームの修正と確認に戸惑っていた前日までの姿は、マウンドに上がった瞬間に消えた。威風堂々。度胸満点の投球には星野監督もうなるしかない。「場慣れしている。立派だね。課題は見当たらない」。嶋も「ブルペンよりも落ち着いていた。いろんな球種でストライクを取れるし、決め球にもなる」と舌を巻いた。
指揮官を感心させたのは投球だけではない。「今の投手は自分で組み立てをしないんだけどな」。試合前に嶋から「自分の投げたいボールを投げていい」と伝えられていたとはいえ、サインに首を振るシーンが何度も見られたのだ。堂々と自己主張ができる強心臓は闘将好みだ。
18歳左腕に対する高評価はネット裏でも同様だった。偵察した日本ハムの岡本スカウトは「人にはないものをたくさん持っている。(先発ローテで)出てくると思う」と警戒を強めた。
周囲から称賛が乱れ飛ぶ中でも、松井裕の自己採点は「60点ぐらい。打線が2巡目、3巡目になったときに何が通用するのかを見つけたい」と辛めだった。その冷静なコメントを伝え聞いた星野監督は「あと40点もあるのか!」とニヤリ。最大級のインパクトを与えた快投ショーも、怪物伝説の序章にすぎない。(井上学)
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