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転職・求人DODAエンジニア IT/トップ > 転職情報・成功ガイド > 三年予測 > 計算機科学者、未踏統括PM 竹内郁雄 氏
掲載日:2014.2.10
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三年予測ートップリーダーと考えるエンジニアの未来ー


『天才プログラマ』を育てるには

膨大な努力を投入した理由は「面白かったから」

45歳から51歳までの時期にかけて、竹内は80ビット水平マイクロプログラミングという低レベルの、神経をすり減らす仕事をやり続けた。実時間GCを内蔵したTAO/SILENTの実現のためだ。だから「プログラマ35歳定年説」は間違いだ、と竹内は笑う。
なぜ、人生の一部をマイクロプログラミングに費やしたのか。
「そりゃ、面白かったからに決まっている」
そう竹内は語る。中でも実時間GCの実装は竹内にとって「純粋に面白い問題」だったのだ。
「そういえば、GCのバグ取りをやっている間は、『ドラクエ』をやらなくても済んだ」
竹内にとっては、マイクロプログラミングで記述したGCのバグ取りで得られる「脳の報酬」は、ゲームによるそれと類似しているらしい。
「そうそう、『脳内麻薬指向プログラミング』とでも言うのかねぇ」
それにしても、統合開発環境のサポートがある高級言語プログラミングではなく、ハードウェアアーキテクチャと密着したマイクロプログラミングが快楽だとは。
「統合開発環境は楽しくない。16進ダンプを見るマイクロプログラミングだから楽しい」
そう竹内は笑った。
念のために付け加えておくと、私たちがこのような言葉を額面通りに受け取ることは危険だ。マイクロプログラミングによる実時間GCは「楽しさ」だけで乗り越えられるような仕事ではなかったはずだ。竹内は2010年3月の東京大学最終講義で「人知れぬところで地べたを這う努力をしなければならない」という言葉を放っている。「その地べたを這うような努力」を自然に行える、あるいは楽しめるのが、本当のハッカーなのだ。

「遊び心」と「寄り道」を重視

竹内は、しばしば「遊び」「余裕」の大切さを口にする。そういえば、2010年3月に行った東京大学最終講義のタイトルも「研究・開発は楽しく」だった。
竹内は、真顔になってこう話す。
「閉塞状況からの脱出には、余裕や抜け道が必要だ」
余裕がない状態、つまり「狭い一本道」を歩き続けるような仕事、研究をしていると、何かの障害があるだけで歩みが止まってしまう。だが、別の考え方、別のやり方、「抜け道」をいつでも探し出せる余裕があれば、障害を回避することもできる。
「機械だって『遊び』や潤滑油がないと動かない。機械の『遊び』と、研究に必要な『遊び心』はよく似ている」
応用数学の分野の一つ「大域最適化問題」では、「ローカルミニマムからの脱出」という課題が知られている。ざっくり言えば、「ローカルミニマム」と呼ばれる「袋小路」のような状態に閉じ込められて抜け出せない状態になったとき、どのように脱出するか、という問題だ。脱出法として「焼きなまし法(シミュレーテッド・アニーリング)」と名付けられた方法があり、そこでは「わざとランダムに動き回ることで脱出する」原理が使われている。竹内は、この脱出法を例に引いて、次のように言う。
「寄り道は大事ということ。狭い道を一直線に歩くのではなく、ふらふら寄り道する。それが『遊び心』」
だから、NTT研究所に勤務していた時代の竹内は、本当によく遊んでいたという。遊びといっても、例えば逆さにしても意味が通じる言葉を列挙する「倒語學」といった知的な遊びだ
ハッカーの遺言状──竹内郁雄の徒然苔 第2回:「學問」のすすめ

「未踏」に注ぐ情熱

竹内が今力を注いでいるのが、「未踏」だ。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が2000年度から続けている事業である。当初の名称は「未踏ソフトウェア創造事業」、2008年以降は「未踏IT人材発掘・育成事業」が正式名称だ。IT関係者の間の会話では単に「未踏」と呼ばれる。
「未踏」は開発者の提案を審査して予算を与え、ソフトウェア開発プロジェクトに取り組んでもらう。このために、研究開発の実績を持つプロジェクトマネージャー(PM)が付き、提案の審査や、採択された開発者への助言・指導、評価をする。
この「未踏」から巣立った人材は数多い。本連載の第4回で登場した 登大遊 も未踏出身者の一人だ。登を担当したPMは竹内だ。登を評して、竹内は「ダイナミックレンジがすごい。ふだん『遊んでいる』から、テンションがばちっと上がる」と語る。『遊び』を重視する竹内の姿勢と、登が以前から持っていた『遊び心』がぴたりと共鳴したのだろう。
未踏に集まる若者の中には、「一匹狼」のような人物も多い。
「一人で浮いていたような人が、未踏に来て似たような人と会う。持っている悩みは同じだ」
未踏には、突出しているが故に孤独を抱える開発者のコミュニティとしての性格がある。そして未踏は今後、コミュニティとしての機能を今以上に強化する予定だという。

「閉塞感を抱えている人は、コミュニティを見つけるのがいい」

自分の進路に迷いがある人や閉塞感を抱えている人が増えている。どうするのが良いのだろうか。竹内はこう話す。
「閉塞状況から脱出したいなら、コミュニティだ。それも、単に勉強会とかフォーラムに参加して情報を吸収するだけではなく、他人と交わることだ。できれば懇親会まで出て、人との交流を楽しんだほうがいい」
閉塞状況、つまりある状態から脱出できない状況のとき、必要なのは違う方向の試行ができるだけの余裕や抜け道感覚だ。そしてコミュニティの活気とは、「遊び心」や「余裕」がなければ成り立たない種類のものだ。
竹内がNTT研究所に勤務していた時代、同じ研究グループにいたメンバーは「だいたい大学の先生に転進した。つまり変人揃いだったと言える」と竹内は笑う。そして前述の「倒語學」のような数々の遊びを次々と発明していた。「遊び8割、仕事2割ぐらいかな。Googleの『20%ルール』の逆だ」。竹内の研究生活を支えていた大事な要素の一つが、研究所というコミュニティだったのだ。
未踏に限らず、現実の研究開発プロジェクトはもちろん短期的な目的を持っている。だが、それ以上に大切なのは「創造へ向かう過程」だ。未踏が発掘するような「天才プログラマ」が突出した成果を出すのは、彼ら、彼女らが創造の過程を楽しみながら、「地べたを這う努力」を続けた結果だ。
このことを、竹内はさまざまな表現手段を駆使して訴え続けてきた。2010年3月の最終講義で竹内が老子のTaoismの言葉をもじって語った言葉がある。
「真の創造者は目的をもたない。しかしまさにそのことによりすべての目的を見事に果たす」。
コンピュータサイエンスの研究者というよりは、元祖ハッカーの道を楽しんできたのに、有名になってしまった竹内の言葉は、進路に迷いを抱いている人がよく噛みしめるに値するものを含んでいるはずだ。
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