とりあえず平常運転?
イベントも終了しのんびりとした空気が……?
今自分は木材作業場にいた。
今まで酷使してきたX弓の大幅なメンテナンス……
というより改良を行うためである。
狩の合間に少しずつ手入れはしていたのだが、今回は
全体的に手入れををしないといけないほどにくたびれていた。
まずは部品をばらす。 そしてくたびれた弓の本体部分、弦を
両方交換、本体部分はネクシア周辺の中でもいい木材を選び抜いて
新しく製作し直した。
次にX弓の補強具部分を鉄からライトメタル製に変更する。
重量も軽減されるが、強度も鉄より向上するためだ。
改良出来る部分は改良するべきである。
土台そのものは変えないため初めてX弓を作ったときの苦労はない。
こまごまとした部分の調整も簡単に出来る。
後は注意を払いながら組み立てなおすだけである。
劣化していた部品はすべて排除し、強化された部品を組み込む事で
外見は大幅な変化はないが性能が向上していた。
複合X式狩弓改
弓を2本に増やしX字に合わせる事で威力の増加を図った弓。
その異様な形から打ち出される矢は驚嘆の一言。
その分扱う難易度は大幅にあがり、弓の駆け出しには絶対扱えない。
部品が大幅に改良され、能力が向上した。
製作品質7 Atk+46
これでまた当分は戦える。
しばらくはこういった強化を繰り返して使う方が良いか。
新しい弓の形なんてほいほい浮かばないからなぁ。
弓の引き具合もなかなかよし、と。
「あのさ、そう視線が多いと落ち着かないんだけど?」
振り返りながら声を出す。
他の木工職人達どころか、職人スキルを明らかにもってなさそうな
人達までがこちらを見ていたのである。
原因はいうまでもなく前回のイベントの最終戦闘にある。
アレでいやがおうにも目だってしまった結果、出歩くだけで注目される。
視線と言うものはやけに感じてしまう物。
ましてやイベント前はソロメインだった事もあり、 盗賊スキルも多用し
隠れて戦う事や気配を殺す事がメインだった為か、なおさら視線を強く感じる。
自分が振り返った事でとたんに目をそらす人達。
弓の製作なんて見てて面白いかね~?
それとも、『変な事やってるな~』と言う物珍しさかも知れんなぁ。
こんな状況でクィーンが前のように来ないことを祈る。
……まあ、来たのは以前の一回きりだから大丈夫か。
――――――――――――――――
ともかく用事は済んだので作業場からは撤収しよう。
〈隠蔽〉で隠れたい気分なのだが、アレはスキルレベルが上がっても
消費するMPの早さが今のところ改善されず、短時間しか隠れられない為、
乱用できない状態である。 本当に使うべき場所でのみ使うスキルで
こう、視線が集まるからってぽんぽん使っていい物ではないのだ。
……判ってはいる、判ってはいるんだがなぁ。
イベントで目立つってのがここまで大きい物だとは思わなかった。
あの戦いの動画は運営によってUPされており、閲覧数がすごい事に。
それどころか加工された一部分が公式PVの1コマに使われてしまい、
さらに目立つ事に。 X弓が既に自分の目印になってきている面がある。
これが有名税などという奴か? 面倒な事この上ないな~。
それでも行動しないわけにも行かない。
料理を作って露天に置かないとならないし、素材を集めるために狩りもしたい。
とりあえず狩が先だな……そう考えて町の出口を目指す。
……ラビットホーンは狩れないけどね。
街から外に出ればそこは開始初日なのか!? と言うぐらいプレイヤーがいた。
ええ、そうです……弓を持ったプレイヤーがいっぱい。
あちらこちらで矢を放っているプレイヤーでごった返していた。
みんな苦労してるな、弓は序盤が1番きついからなぁ。
この様子だと訓練場にも人はいっぱい居そうだな、間違いなく。
弓は店売りの粗末な弓なのに防具が最新の良い防具と言うプレイヤーも
かなり多いためか、なんともちぐはぐな風景だ。
特にアタッカータイプが多いのだろうか、 牽制と魔法対策を兼ねて
弓を選んだ様に見え、重鎧、軽鎧のプレイヤーが多い。
この中の何人がある程度弓をモノにできるかね?
とりあえず邪魔はしないように立ち去りますか……。
鞭を振るっている人もそれなりに居るな。
鞭は10になって〈拘束〉のアーツを覚えるととたんに活躍の場が増える。
頑張って鍛えて欲しいところだな。
―――――――――――――――――――
ドレッドウルフやベアをいつもの通りに〈隠蔽〉からの弓コンボで暗殺し、
お肉を纏まった数確保。 まるで密猟だが気にしたら負けだ。
真っ向勝負なんてもう二度とやりたくない。
PvPの申し込みも全て断っている。 一回受けると悪循環になりそうで。
手の内もばれている部分が多いし、最強を目指しているわけでもない。
対戦なんかやる意義が薄いのですよ……。
こうやってこっそりと楽しめればそれでいい。
……そういえば、変な魔法覚えてたっけな。 他の人も今はいないし、
実験するには良いか。
フェアリークィーンから強制的に装備させられた指輪の中に
プリズムノヴァという魔法が解禁されるとあり、
その魔法を使えるようになっていた。
ただし系統が不明であり、スキルの上昇はないだろうが。
早速ベア相手に試してみる。
先にベアのHPを8割以上削り動きを制限しておく。
それから発動……場所指定魔法なのか、じゃあベアを中心に発動。
発動した瞬間MPが40%ほど減って、 虹色の玉が上から
隕石のように落下し爆発した。
ベアの残りHPは5%位になっていた、威力が低いのは自分の魔法関連が
低いからか? ……そう思っていたのだが。
哀れなベアは石像になっていた。 ……どういうことだ?
それから10匹ほどのベアに向かって何回も撃ってみた。
その結果、『ダメージは低いが、ランダム複数ステータス異常発生魔法』
と判明した。 ……またあのクィーンはとんでもない魔法をくれたものだ。
こんなの人前で使ったらチート扱いは必須でしょうが……。
本格的なピンチのとき以外は絶対封印だこれ。 無闇にやっちゃダメだ。
ちなみに発生する異常は、毒、火傷、盲目、混乱、拘束、麻痺、石化の7つ。
毒や火傷は良く引き起こすが、麻痺や石化はめったに起こらない。
まあ、麻痺や石化が発生しちゃったらその場でほぼ決着だからなぁ。
それからクールタイムは20分。 能力から考えれば連射できないのは当然か。
なんとも気まずくなったが、普段は絶対に封印しておこうと心に決めて
料理をするために街に帰還したのだが……。
「おい、そこの貴様。 お前に用事がある」
なんていう声が聞こえてきた。 誰だか知らないが災難だなぁ。
あんな声のかけ方をされている人に向かって心の中で合掌する。
ああ言った高圧的な口調をする人は面倒な人が多いからな。
「貴様、こっちを向け、用事が有ると言っているだろうが!」
誰だか知らないがさっさと離れてログアウトしよう、関わるのも面倒だ。
君子危うきに近寄らずと言った所か。
料理は明日にしよう、なんか一気に疲れが出てきてしまった。
あまりにも強引過ぎる行為にはゲームマスターコールもあるから問題ないはず。
「おい……貴様……」
ああうるさい、あんな声掛けじゃ誰だって距離を離すのが判らんかね~?
まあいい、とっとと宿屋に入ってログアウトだ。
せっかく料理の材料とって来たのになぁ。
明日にまわすことにしておくか。
スキル
風塵狩弓Lv1 蹴撃Lv12 遠視Lv47 製作の指先Lv45 料理Lv49
隠蔽Lv38↑1UP 身体能力強化Lv16 盗賊Lv33 鞭術Lv34
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv28↑2UP 鍛冶Lv30 薬剤Lv40
ExP 11
指輪のペナルティーの重さはプリズムノヴァの魔法が
主な原因です、乱発はさせません、強すぎるので。
ですがもちろんプレイヤーナイズされて弱体化されております。
アースは毒60%、火傷55%、盲目30%、混乱20%、拘束15%、
麻痺6%、石化3%の確率です。
クィーンは毒95%、火傷85%、盲目70%、混乱60%、拘束45%、
麻痺30%、石化20%とかなり確率が高めです。
詠唱をさせないことがクィーン戦では大事という事を象徴する魔法です。
追記、クールタイムの記述がありませんでした。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。