序盤ダイジェスト
書籍化に伴い、ダイジェストになりました。
私は田中 大地という名前の男だ、今年で歳は38歳になっている。ゲームが好きでこの歳になってもゲームで遊んでいるのだが、とうとうVR技術を使用したMMORPGが登場する事になった。
もちろん自分もこれに参加し、遊ぶつもりだったのだが……キャラメイクは地味な外見に、スキルはオープンベータ中では不遇とされていた物を多く選択して他のプレイヤーからみても目立たないようにして始める事にした。どの道社会人でゲームプレイタイムは一日2,3時間ぐらいしか取れないのだから、他の人が武器を見るだけで避けるようなチョイスにした。特に一番の不遇とされていた武器である〈弓〉スキルを選んだが為に、初日でいきなり数名のプレイヤーに絡まれるという事態も起きたが……まあいいだろう。
訓練をして、ある程度〈弓〉と〈蹴り〉スキルの攻撃方法をなじませてから狩りをしようと表に出れば、そこにはプレイヤーがたくさんいて、とても狩ができる状況ではなかった。その光景を見ていた自分に『ミリー』と名乗る女性プレイヤーさんから、昼夜の有無などの情報を教えてもらえたのは幸運だったな。このときは狩りを諦め、薬草を探し、夜を迎えた時にポーションを作った。NPCからいくらでも買えるポーションをわざわざ作る手間が面倒とのことで、この〈薬剤〉スキルも不遇とされていた。
ゲームの世界で一夜明けると、もう次のフィールドにいった人が多かったのか、最初のフィールドはある程度すいていた。ようやく狩が出来ると思ったが、事前に訓練をして射ても弓矢による攻撃は致命傷を与える事ができず……突っ込んできたウサギ型モンスターをカウンター気味に蹴る事で対処した。このときの光景が縁で、『ツヴァイ』と言う両手剣プレイヤーと知り合う事になった。
それから数日後、ポーションが売り切れたと言う事件が発生する。突然NPCがポーションが売り切れたために販売しませんと言い出したのだ。混乱はすさまじく、ポーション買取の募集をかける声が響き渡るが、〈薬剤〉スキルは不遇であるというクローズドやオープンベータの経験者からもたらされた情報で、取得者はほぼいなかった。
たまたま半分ひねくれるような考えで〈薬剤〉スキルを習得していた自分は、少しでも供給するためにポーションを作ることになる。だがここで初日に自分に絡んできたプレイヤーと再びいざこざが起こる。半ば勢いと怒りでPvPに何とか勝利して追い払うことで解決したけれど。大人気ないなどという考えは一切無かった。必要な時は大人気ないことを自分の意志でやれるのが大人だろう。
その後は新しい弓や矢を作って戦ったりしているうちにイベント『妖精達の舞踏会』が開催された。ここでプレイヤーは妖精という相棒を手に入れることが出来たのだが……自分は不運にも0.1%以下の失敗確率に引っかかってしまい、相棒となる妖精と出会うことが出来なかった。にもかかわらず、他の人と契約した妖精達に好かれると言う不思議な現象が自分に発生するようになっていた。
その一方では、妖精の扱いについて、仲良くしようと言う人とゲームデータなのだから酷使して構わないだろうと言う人の争いが発生していた。
そんな世界の様子を無視してあっちこっちにマイペースで行動していたら、洞窟の中でボロボロの指輪見つけたり、妖精召喚に失敗した後に残されたクリスタルに光が灯るようになったりと幾つかの小さい出来事があった。そして迎えた後半戦、ログインすると頭の上に『妖精たらし』の称号が浮かんでいた……。
後半戦のイベントは妖精重視の対人戦で、対人戦を行うほどに妖精が進化すると言う内容だったのだが、妖精たらしの称号のせいで妖精達が皆戦いたくないと言うアピールをする為に、自分は前半戦で妖精が取れなかった人も対人戦をすれば妖精を獲得できると言う可能性を諦めることになってしまったが。妖精のつぶらな瞳が浮かべるうるうる目には勝てなかった……。
妖精達は後半戦が始まるとかなり表情が豊かになったり、食事の要望レベルが上がったりと変化をはじめた。お陰で料理を作れる自分は再び大忙しになってしまったが。それと同時に、妖精たちの自我がよりはっきりと出始めた影響もあり、妖精との付き合い方も変化していった。特にゲームデータだからと酷使をしている人たちの言う事を聞かなくなったり、最悪反逆される人も出た。
そんななか、自分ことアースはゲームのトッププレイヤーのシルバーというおじいちゃんより忠告を受ける、グラッドという男に気をつけろと。なんでも妖精たらしの称号を持つ人に無理やり対人戦を要請している、と。まあ幸いにして絡まれることは一度も無かった。
イベントも終盤を迎え、最後のイベント中の対人戦勝率上位16名による勝ち抜きトーナメントが開催された。そのトーナメントの決勝では、シルバーのおじいちゃんと、黒い鎧を着た男、グラッドが対峙した。シルバーのおじいちゃんの妖精である光属性のヴァルキリーと、グラッドの闇属性の妖狐も交えた対人戦の軍配はグラッドに上がった。
そこでイベントは終わりだと思っていたのだが、まだ続きがあった。なんとグラッドのつれていた妖精が進化してフェアリー・クィーンとなった。その上でもうグラッドと一緒には居たくない事と、今回のイベントは妖精同士を人の指揮を受けて戦わせる事で、強い妖精の王を作る事になったと説明。
グラッドは怒り心頭の様子でクィーンに食って掛かるが、フェアリー・クィーンは同行して欲しいのならば私と戦って勝ちなさいと宣言。グラッドはそれを受けて戦うが敗北し、妖精を失ってしまう。
グラッドとの戦いが終わった後、イベント終盤まで妖精たらしの称号を持ち続けていた自分を含めた3名がフェアリー・クィーンに呼び出され、報酬を貰う事になった。自分以外の2人は契約妖精の進化だったが、自分には契約妖精が居ない。そのため一度戦う事で報酬内容を決めると言われてしまった。
自分はフェアリー・クィーンと戦ったのだが、手の内を見た自分と一切こちら側の戦闘手段を知らないクィーンの差が出て、自分は何とか勝利をもぎ取る。報酬として、見つけてきたボロボロの指輪と召喚に失敗した時の水晶の欠片をクィーンの力で加工して生まれた指輪を、無理やり装着させられた。
はぁ~、派手に目立ってしまうしクィーンにはその後ちょっかいを出されるし、この時点で目立ちたくないと言う当初の予定は完全に破壊されてしまった。これからどうなるんだか。

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