Jリーグは現在、各クラブに対しツイッターやフェイスブックなどのSNS研修を進めているようだ。先日、某全国紙の夕刊でこの記事を見て「なるほど」と唸った。発足当初からNPBを反面教師にしてやってきたJリーグ。巨人が新人選手のSNS禁止を打ち出している中、敵ながら?あっぱれと言わざるを得ない。

その記事によると、SNSに起因する社会的問題とそのリスクを踏まえながら、それを規制するのではなく「正しく使い自分の価値を高める術を選手は学んでいる」のだという。確かに、しっかり固定客として掴みたい10〜20代の若者層の多くがSNSを使用している。「炎上」などの危険性はあるものの、目をそむけるのではなく、いかにその「拡散」効果を有効活用するか選手に教え込むのは積極的で正しいアプローチだろう。レンジャーズのダルビッシュ有の場合は、そのツイッターフォロワーは100万人を超えるという。

NPBでは昨年一部選手の不適切なSNSでのコメントが大きな社会問題になった。しかし、SNSのパブリシティ効果、個人事業主としてのプロ野球選手の権利と個人として背負うべき責任の在り方を考えるにつけ、そもそも球団が禁止するという発想自体に違和感を禁じえない。巨人は日本で最も市場認知度の高い球団なので「SNSで得られる効果は必要ない」という判断なのだろうか。であれば、新人のみに限らず全選手の使用を規制すべきだと思う。

本件に関するポイントは2点ある。まずは、危険性とバズ効果を併せ持つSNSというメディアに対し、事なかれ主義をとるかその有効活用による効果を取るかということだ。総合的な人気ではNPBの後塵を拝しているJリーグだから、と考えることもできるだろう。もちろん、巨人が球界を代表している訳ではないし、中には選手向けの研修会を開いている球団もある。しかし、Jリーグの積極思想はNPBも大いに参考にすべきだろう。

もうひとつは、そもそも個人の表現の自由のひとつであるSNSを球団に禁止する権利があるのか?という極めてベーシックな疑問だ。かつて、「ガイシャ禁止」という信じられない通達を選手に出した球団があったが、それから数十年を経た現代も球界の風土に大きな変化はないということか。メジャーリーグでも選手の不適切な発言による炎上は多い。昨年オフにはレイズのエース左腕デビッド・プライスが、降雪が予想される中「彼氏が滑って事故をおこさないよう女性のみなさんはしっかりナビを務めてあげてね」とツイートしたところ、「女性は助手席と決めつける性差別だ」という反論で炎上したそうだ。だからと言ってSNSを禁止せよという声が上がったという話は聞かない。

なお、巨人は試合中のガム噛み禁止も打ち出している。このことも「球団の介入」という点では新人SNS禁止と共通しているが、その本質は異なっている。試合中は「個人」ではなく「球団と契約関係にある個人事業主」でその球団のユニフォームを着用している。ガム噛みが与える印象への判断は国や世代で異なって当然であり、一律的に「これが正しい」というものではない。したがって、多くのメジャーリーガーが試合中にガムやヒマワリの種を噛んでいるとしても、「ウチは禁止します」という考え方はあり得る。しかし、それとSNSは同列に論じることはできない。

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小 学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com