Evernoteを使って小説を書く方法

Evernoteで小説


『Evernote』は、デジタル版の書類整理棚のように機能する、クロスプラットフォームのアプリです。これまでの記事でも、このアプリが多くの人に愛用される理由や、利用を1度あきらめた人のための再チャレンジ方法などを紹介してきましたが、今回は「小説を書く」という具体的な利用方法にしぼってご説明しましょう。

Evernoteは、物書きにとって頼もしい相棒です。ほぼすべてのプラットフォームに対応しているので、どこにいてもメモを取ったり整理したりすることができますし、紙のノートにメモした内容もスキャンで取り込めます。それどころか、シャワールームの壁にクレヨンで書いたメモも、あとで写真を撮れば大丈夫です(ところで、この「クレヨンで書く」というアイデアはなかなか良いでしょう? シャワーを浴びている間に良い考えが浮かんだのに、それをメモできないなんて、勘弁してほしいですからね)。

Evernoteは柔軟性が高いので、個人の執筆スタイルに合わせて利用できます。以下では筆者個人の使い方を紹介していきますが、この記事を出発点として、自分の仕事に活用できるアイデアを考えてもらえれば幸いです。


自分のワークフローに合わせて設定する

Evernoteは、自分のワークフローに合わせた設定が可能です。「小説」と名前を付けたノートブックのスタックを1つだけ使っている人もいますが、スタック内のノートブックは1階層しかないため、それでは柔軟性に欠ける場合もあります。そこで思いついたのが、次のようにノートブックのスタックを分ける方法です。

  • 小説(全般):これは、具体的なプロジェクトに収まらない雑多なものをまとめたスタックで、ウェブクリッピング、写真、テキスト、音声メモのスクラップ帳として機能しています。また、文献リスト、作家や文章術についてのウェブサイトなど、小説に関わるアイデアもここに保存しています。
  • 小説(練習):特定のプロジェクトに取り組んでいない時でも、自分にちょっとした課題を出して、毎日書くようにしています。そうして書いた文章を、ここに保存しています。■
  • 小説(長編):それぞれの長編小説について、1つずつスタックを作成します。もっとも、今あるスタックは1つだけですが。
  • 小説(短編):短編小説でも、それぞれに1つずつノートブックのスタックを作ります。

筆者にはこのやり方が合っていますが、皆さんもぜひ、これを参考にして自分にもっとも適した方法を見つけてみてください。


メモやリサーチ内容をまとめて保存する


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「ひらめき」は、いつどこで訪れるかわかりません。そのきっかけになるのは、公園でケンカしているカップルかもしれないし、週末に訪れた町の古い建物や、科学の進歩や考古学的な発見に関する興味深い記事かもしれません。そのため、筆者は見つけたものは何でもタグを付けて保存し、あとから確認できるようにしています。

基本的なリサーチ内容や情報は、「小説(全般)」のスタックの中に、次のように整理しています。

  • _作家:このノートブックには、好きな作家にまつわるウェブページや記事を保存します。タイトルの頭にアンダーラインを入れれば、常にリストのトップに表示させることができます。
  • _文章術:文章術に関する記事を読むのも大好きなので、このノートブックにはそういった種類のものを入れています。
  • 掘り下げたいアイデア:記事や引用など、いつか小説の良いネタになりそうだと思ったものは、このノートブックに入れておきます。
  • 写真:筆者は人や場所、建物などの写真を撮るのが好きで、とにかくいろいろなものを撮ります。そうして撮りためたものが、小説の登場人物や舞台のモデルになることもあります(そういう場合は、あとで、より適切なフォルダに移します)。写真を自分への課題の題材として使うこともありますが、このノートブックは「インスピレーションの源」としても使っています。たいていの場合、タグ付けも整理もしない状態にしておき、保存されている写真をぱらぱらと見ていくのが好きです。いつ何時、アイデアが別のアイデアと結びついて、新しい何かが生まれるかわかりませんからね(チョコレートとピーナッツバターの組み合わせも、きっとそうした偶然から生まれたのでしょう)。
  • 文献リスト:文献リストの維持には、ウェブサイトの「GoodReads」を使っていますが、ほかの場所にログインせずにちょっとしたメモを取りたい場合は、一時的にこのノートブックに書き留めておきます。
  • スクラップ帳:気の利いた言い回しや会話のやりとり、素晴らしいタイトルは、いつ思い浮かぶかわかりません。ですから、それを保存しておける場所が必要です。おそらく筆者にとって、Evernoteを使う最大の利点は、そこにあります。そうしたちょっとしたメモをまとめて保存し、あとからブラウジングしたいなら、Evernoteは本当に便利です。キーボードや手書きで入力できるほか、メモのスキャンや、Evernoteアプリを使った音声入力も可能です。


小説の構想と執筆にEvernoteを使う


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まず説明しておくと、Evernoteは執筆にもっとも適したツールとは言えません。悪くはないのですが、筆者にとっては動きが少し遅く、デスクに座って「さあ書くぞ!」と思った時に使いたい機能が備わっていないのです。そうした理由から、筆者は『Scrivener』を愛用しています。これは物書きのために設計されたツールで、使いやすい環境と管理ツールが備わっています。そのほかにも良い文章作成アプリはいろいろとありますから、自分に合ったものを探してみてください。

とは言え、補助的な文章作成ツールとしてなら、Evernoteはなかなかの優れものです。Scrivenerを開いていない時に、ちょっとした書き物や編集をしたい場合はEvernoteで充分ですし、小説の構想を練ったり、物語に加えたい材料を集めたりするのにも役立ちます。

小説などの長い文章を書く場合、筆者はそれぞれ独立したノートブックのスタックを作成し、次のように分類しています。

  • チャプター:小説にする可能性の高いチャプターは、Evernoteと同期するようにしています。同期は簡単ですが、具体的な手順は、使用している文章作成アプリによって異なります。文章をコピーして貼り付ける、テキストファイルにエクスポートしてEvernoteで読み込む、といった方法もありますが、アプリによっては直接Evernoteと同期できるものもあります。
  • 写真:文章内で写真を使うことはあまりないのですが、登場人物と場所を視覚化したり、インスピレーションを得たりする目的で写真を使っています。たいていの場合、ここには「全般」または「課題」のノートから移動させた写真が入っています。行ったことのない場所について書く時は、そうした写真が特に役立ちます。
  • 人物設定:小説を書くうえで大切なのは、登場人物に関するメモをすぐに取れるようにしておくことです。誰かが言ったことや面白い洋服など、現実のちょっとしたことが、登場人物の新たな一面につながらないとも限りません。筆者の「人物設定」ノートには、登場人物の基本的な情報のほかに、写真や会話の断片なども入っています。
  • シーンの断片:小説の構想を練る場合、まず個々のシーンを作ってから、次にそれを各チャプターにどう組み込むかを考えます。筆者の場合、そうすることで「その小説で伝えたいこと」を表現しやすくなります。また、各シーンをばらばらにしてEvernoteのノートにまとめておけば、順番をあれこれと入れ替えるのも簡単です。ちなみに、筆者の作品はまだ公開できる段階ではないので、スクリーンショットでは『ターミネーター』のシーンに置き換えてあります。


「自分への課題」でモチベーションを上げる


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筆者は毎日少しずつでも書くように努めていますが、特定のプロジェクトに取り組むのが億劫な日もあります。そんな時は、自分に「楽しい課題」を与えて、毎日書き続けられるようにしています。もちろん、それぞれに合った課題を考えてもらってかまいませんが、筆者は次の課題を使っています。

  • 写真を使った課題:自分で課題用に撮った写真や、メインの写真フォルダ内にあるものを使います。被写体は、人物や建物、マンホールのカバーなど、何でもかまいません。この課題は実にシンプルで、選んだ写真について500~1000ワードの文章を書くだけです。説明文や会話文の練習にもなりますし、インスピレーションを得るのにも役立ちます。筆者はそれぞれの写真をEvernoteの別々のノートに入れておき、写真の下に文章を書き始めるようにしています。
  • 「ドア」の課題:これは、かなり昔に受講した文章教室で学んだ練習方法です。まずは目を閉じて、ドアを思い浮かべてみましょう。屋内や屋外のドア、トラップドア、野原の真ん中にあるドアなど、どんなものでもかまいません。ドアの色や形、ドアノブの見た目や、手で触った時の感触を想像します。そのドアに手を伸ばし、扉を押し開いて、向こう側に見えるものを書き始めてください。筆者はこのノートブックに魅力的なドアの写真を保存し、写真の下に文章を書くようにしています。
  • 単語を使った課題:時々、気晴らしに、言葉遊びのような練習をすることもあります。最初に1つの単語を選んだら、キーボードに手を置き、その言葉から思い浮かぶ言葉やアイデア、名前などをタイプしていきます。この練習は、執筆を始める前のウォーミングアップとしても最適です。

これらの課題にEvernoteを使う利点は、「1つの課題を、最初から最後まで1つのノートでこなせること」と、「そのままそこに保存しておけること」です。役に立ちそうなアイデアを見つけたら、ノートにタグ付けをしておきましょう。課題が小説のアイデアにつながったり、現在のプロジェクトに活かせるものになったりすることは多々あります。その場合は、ノートを適切なフォルダに移します。


タグを多用しない

タグに関しては、少なめに使うことを心がけましょう。筆者の場合、効率的だとわかっている数個のタグのみを使用しています。すでに「ノートブック」と「スタック」を使ってノートを管理していますし、Evernoteの検索機能はかなり頼もしいので、以下のタグだけを使うようにしています。

  • 執筆中のそれぞれの小説には、タイトルなどに基づいた「2文字のタグ」を付けます。これはおもに、小説用ではないノートブックにうっかり入れてしまった場合に備えた、いわばバックアップ的な対策です。
  • 時々、通常の「人物設定」フォルダ以外にも人物関連のノートを保存したいケースがあるため、登場人物の名前のタグも使っています。また、「シーン」のノートに登場人物の名前でタグ付けしておけば、シーンを一覧表示した時に、タグの列を見るだけで、どのシーンでその人物が出てくるかがひと目でわかります。

もちろん、小説の構想や執筆にEvernoteを活用するための方法は、人によってさまざまです。Evernoteはメモを取る時だけに使い、実際の執筆にはもっと確実なツールを使っても良いですし、執筆に関わるすべての作業をEvernoteでこなすというライターもいます。筆者はいつでも「盗めるアイデア」を探しているので、書き物にEvernoteを使っているという方は、ぜひその利用法を教えてください!


Walter Glenn(原文/訳:兵藤説子/ガリレオ)
Photo by Digital Storm.

  • 物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室
  • G.ガルシア=マルケス|岩波書店
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