ウクライナ:「大統領は逃げ出した」キエフは解放区の様相
毎日新聞 2014年02月22日 22時55分(最終更新 02月22日 23時55分)
【キエフ田中洋之】ウクライナの首都キエフは22日、大統領府や首相府など政府施設が集まる地域に配備されていた治安部隊が撤収、代わってデモ隊が一帯をコントロールするようになり、「解放区」の様相となった。ヤヌコビッチ大統領が21日夜にキエフを離れたことで、「ヤヌコビッチは逃げ出した」との声もあがった。
中心部のヨーロッパ広場から、最高会議や首相府につながる坂道は21日夜までバリケードで通行できなかった。治安部隊のスナイパー(狙撃手)が周囲のビルから狙っているといわれ、危険な場所だった。しかし、記者が22日午前にバリケードに近づくと、デモ隊から「通れ」と言われ先に進むことができた。
首相府の正面入り口で警備していたデモ隊のルスランさん(47)は「この辺は我々が押さえた。ヤヌコビッチは怖くてもうキエフに戻って来られないだろう」と語った。首相府の門の内側では警官らしき人物がいたが、ルスランさんは「彼らはこっち側(デモ隊)についている」と話した。
報道によると、キエフ郊外にあるヤヌコビッチ大統領の邸宅もデモ隊が「解放」。海外メディアを含む多くの記者を招き入れた。この邸宅は貴金属で飾られたトイレだけで総額5000万円近くすると報じられ、「政権の腐敗の象徴」と批判されてきた。
一方、独立広場の周辺にはバリケードが築かれたままで、デモ隊が撤収する気配はみられない。22日朝には長さ約6メートルの巨大な投石機も設置された。重さ100キロの物体を40メートル先まで飛ばせるという。「政権側が(繰り上げ大統領選の実施など)合意を守らなければ、これを使用するまでさ」。デモ隊の男性はにやりと笑った。