ウクライナ:「新大統領を迎える」解放されたキエフルポ

毎日新聞 2014年02月22日 23時49分(最終更新 02月23日 00時22分)

ウクライナの首都キエフで、ヤヌコビッチ大統領の去った大統領府の入り口を金属製のタテを持って「警備」する反政府デモのメンバー=2014年2月22日、AP
ウクライナの首都キエフで、ヤヌコビッチ大統領の去った大統領府の入り口を金属製のタテを持って「警備」する反政府デモのメンバー=2014年2月22日、AP

 【キエフ田中洋之】権力を誇った「あるじ」の姿はもうなかった。ウクライナのキエフ中心部にある白亜の大統領府は22日、ヤヌコビッチ大統領が首都を離れたことでデモ隊の支配下に置かれた。

 「ヤヌコビッチが戻ってくることはもうない。新しい大統領を迎えることになる」。デモ隊でつくる「自警団」の国際担当、オスタップさん(34)は大統領府を案内しながらこう強調した。

 5階建ての大統領府は、記者が2011年1月、ヤヌコビッチ大統領の訪日直前に日本報道陣の一員としてインタビューした場所だ。しかし、正面入り口に衝突の犠牲者を追悼する半旗が掲げられただけで、人影はなく、ひっそり静まりかえっていた。オスタップさんは「流血の事態を招いたのでヤヌコビッチは民衆の力で追放された」と誇らしく語った。

 大統領府や近くの首相府など政府施設が集中するエリアに配備されていた治安部隊は、22日朝までにすべて撤収した。これまで治安部隊のスナイパー(狙撃手)の標的になる恐れから、立ち入れなかった周辺の道路も開放され、大勢の市民が訪れた。死者が出た場所には花束やろうそくが供えられ、道行く人は十字を切っていた。

 キエフ中心部の独立広場では、これまで飛び交っていた銃弾に代わり、大統領の首都離脱を祝う花火が打ち上げられた。あちこちから「ウクライナに栄光あれ」の掛け声が飛び、解放感に包まれていた。女性ホテル従業員のアンナさん(32)は「独立広場はこれまでは怖かったけど、これからは安心して来られます」と笑顔で話した。

 キエフ郊外にあるヤヌコビッチ大統領の邸宅もデモ隊が解放した。この邸宅は貴金属で飾られたトイレだけで総額5000万円近くすると報じられ、「政権の腐敗の象徴」と批判されてきた。

 一方、独立広場の周辺にはバリケードが築かれたままで、デモ隊が撤収する気配はみられない。22日朝には長さ約6メートルの巨大な投石機も設置された。重さ100キロの物体を40メートル先まで飛ばせるという。デモ隊の男性は「政権側による暴力は二度と繰り返させない」と語った。

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