フランス:核のごみ捨て場計画難航 新たな安全確認要求
毎日新聞 2014年02月23日 01時40分(最終更新 02月23日 01時50分)
フランス北東部ビュール村で進む放射性廃棄物最終処分場の建設計画で、住民と計画運営機関などとの「討論会」を主催する独立公共組織「国民討論委員会」が今月12日、2025年の操業開始を目指す現行の計画は性急で、安全確認のための貯蔵試験期間を新たに設けるべきだとする最終報告書をまとめた。建設認可申請の前提となる討論会の最終報告書を受け、操業開始が先送りされる可能性が出てきた。住民の不信感から討論会が中止された経緯もあり、日本でも将来予想される「核のごみ捨て場」の設置が、一筋縄では進まない現状が浮かんでいる。【パリ宮川裕章】
最終報告書は計画推進を前提として、専門家と住民の意見を基に、地下での火災のリスクなどを指摘。財源や建設費についての詳細な情報提供も求めた。そのうえで、「安全確認に必要な追加試験が現行日程では間に合わない」として、新たな貯蔵試験期間の設定を提案した。
国会議員や有識者などで構成する国民討論委員会は当初、昨年中に14回の討論会を予定していたが、反対派住民や活動家の抗議行動の影響で全て中止された。代替策としてインターネット討論会や、計画地のムーズ県と、隣接するオートマルヌ県などの住民代表17人が専門家らと質疑を交わす形式に変更した。
住民の反発の背景には、06年に地下での最終処分場の建設基本計画を決定した際、地上での貯蔵施設建設の選択肢も残すよう求めた当時の討論会の報告書が反映されなかった不満がある。住民代表は3日、最終報告書とは別に、計画の代替案や補足案の検討を求める意見書もまとめた。
また、運転中の試験施設に伴う助成金が地元自治体に交付されているが、最終処分場計画での補償内容は未定だ。意見書では経済発展支援や鉄道網の拡充などの要求も盛り込まれた。国民討論委員会の最終報告書は「意見が軽視されているとの住民感情が拡大している」と指摘し、「住民、専門家、運営機関、政府間の信頼醸成」を求めている。
計画運営機関の放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は12日、最終報告書を受けた声明文で「討論会で出た要望に応えるため、5月15日までに政府に提案する」との方針を示し、「特に貯蔵試験期間を設けるという案については検討する。技術面でも討論会を踏まえた計画変更は可能」と説明する。