イタリア:39歳レンツィ政権 誕生は試練の始まり
毎日新聞 2014年02月22日 18時35分(最終更新 02月22日 22時12分)
【ローマ福島良典】イタリアで史上最年少のレンツィ首相(39)率いる新政権が22日、誕生した。レンツィ氏は選挙制度改革を手始めに、イタリアの政治と社会の閉塞(へいそく)状況に変革の風穴を開けたい考えだ。だが、新政権は連立与党の思惑が交錯する不安定な「寄り合い所帯」の上、レッタ前首相(47)を力ずくで引きずり降ろした強引な政治手法に反発もある。政権基盤を安定させて、「痛みを伴う改革」に国民の理解を取り付けることができるかどうかが焦点だ。
レンツィ氏とデルリオ官房長官(53)、新政権の閣僚は22日、ローマの大統領府で就任宣誓式に臨んだ。レンツィ氏は新政権の「若さ」を武器に、政治改革(2月)、労働市場改革(3月)、行政改革(4月)、税制改革(5月)と矢継ぎ早に構造改革案を提示すると約束している。
政治改革の土台となるのは、レンツィ氏が中道右派野党「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相(77)と取りまとめた草案だ。(1)大選挙区制から中選挙区制への変更(2)2回投票制の導入(3)上院の地方代表議院への改組−−が柱だが、大政党に有利な選挙制度になるため、小政党が反対している。
労働市場・税制改革は若者向けの新規雇用の創出と、企業の活性化が狙い。若年者を採用する企業の社会保障負担を減らし、「地方法人税」に相当する州生産活動税の徴収を10%カットする。また、解雇のハードルを下げる一方、失業手当や職業訓練を手厚くし、労働市場の流動化を促進する。
レンツィ新首相のアキレスけんは脆弱(ぜいじゃく)な政権基盤だ。連立与党は下院(630議席)では安定多数だが、上院(321議席)では過半数ぎりぎりだ。選挙を経ない首相交代に反対する民主党のチバティ下院議員らは離党も辞さない構えだ。ベルルスコーニ元首相は「レンツィ氏は国会では多数派を形成できないはずだ」とレンツィ氏の弱みを突いている。
◇ローマの社会科学国際自由大学(LUISS)大学院、セルジョ・ファブリーニ学科長(政治・国際関係)の話
レンツィ新首相は旧来の左右の対立軸を超越していると思う。労働市場の自由化を目指している点では右派寄りだが、同性愛者同士のカップルを認めるなど市民の権利に関しては左派寄りだ。