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beロゴ2010年12月11日付紙面から
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子どもたちが「開けゴマ!」と合図をすると、出題の平面図形を頭上で見せる=さいたま市南区

大学生の就職内定率が6割を切る時代。日本の親や塾は、子どもたちをどこに向かって走らせているのか。より高い偏差値の大学? 大手企業のイス?

「私が育てたいのは、受験を勝ち抜く人間じゃない。どんな時代にも、一人でメシが食える大人なんです」

東大大学院修了後の1993年、裸一貫で「花まる勉強会」(後に「学習会」に名称変更)を立ち上げた。進学塾でも、補習塾でもない。「10歳までに思考力と意欲を伸ばす」という独自の教育で注目を集めている。

埼玉県の幼稚園の教室を借りた「寺子屋」だったのが、いまでは関東を中心とした120教室にまで拡大。その実績を買われ、算数オリンピックの問題作成委員に任命され、教材の「なぞぺ〜」や「算数脳ドリル立体王」シリーズは中国や韓国でも売れている。年間130回の講演会には「追っかけママ」が存在する人気ぶりだ。

東大時代、アルバイトで中高生に勉強を教え、どうしても伸びない子に共通点を見つけた。

指示すれば何でも素直にやるが、意欲がない。計算は速いのに、考える問題では思考停止……。そんな子には、幼い頃にお稽古事を無理やりさせられたり、要領のいい子と比較されて自分を否定されたりした経験があった。ひきこもりや家庭内暴力の子も引き受けたが、いくら高校や大学に出しても、すぐ戻ってきてしまう。決まって言うのは「合わない」だった。

「勉強も人間関係も仕事も、根っこは10歳までの教育。それまでに自分で考え、壁を乗り越えるおもしろさを教えないと、いくらいい大学に送りこんでも、社会で生きていけない子を育ててしまう」と確信した。

1年生の教室――。

先生が複雑な立体図形の描かれたパネルを一瞬、見せる。子どもたちは時間を計りつつ、同じ図形を手元の立体パズルで作る。次は、並んだ「○」の規則性から暗号文を解く問題。ゲーム感覚で、1時間半に10種類の教材を次々とこなす。これで思考力と集中力を鍛えるという。

「空間認識力や図形センス、独創的な発想力を鍛えることが未来につながるんです」

夏休みは、全員親元を離れ、野外生活をしてぶつかりあう。沢登りなどで自然と向き合い、忍耐力をつける。

家庭教育の立て直しも授業の一つ。父と子で学ぶイベントや父親向け講演会も開く。

「大人っていい、働くっていい、家族っていい。そう親が胸をはって伝え切れるかどうかが、子どもにとっては大きい」

実は、自身も決して順当な人生ではなかった。小学生でいじめられ、東大は3浪4留。起業後に授かった長男、丈太朗君は、重度の脳性マヒだ。

毎朝6時、息子に着替えと食事をさせ、体重30キロの体を抱いて登校の車へ。講演、授業、会議をこなして深夜に帰宅し、妻の韓流ドラマ観賞につきあう。

「お父さんたちに、子育てで煮詰まっている妻の話は聞いてやれと言ってるのに、自分がやらないわけにもね」と苦笑い。

発達障害児の教育支援やカウンセリングをするNPO法人も立ち上げた。ギターを片手に、障害者向けコンサートも開く。

だが、これから本気でやりたいのは公教育の立て直し。「人生3回あっても足りないな」

プロフィール

高濱正伸(たかはま・まさのぶ)

1959年、熊本県人吉市生まれ。父は内科医、母は元看護師、姉と弟がいる。現在は妻と長男の3人暮らし。3浪し、80年に東大理科II類に入学。3年生から塾講師、家庭教師、幼児の野外活動の指導者などのアルバイトをする。東大大学院修士課程修了。93年、「花まる勉強会」設立。ひきこもりや不登校児の教育も開始。97年から「花まる学習会」に名称変更。98年、算数オリンピック問題作成委員に。のちに決勝大会総合解説員も務め、現在は理事。2001年、保護者らと「子育て応援隊むぎぐみ」を発足。09年にNPO法人化し、障害児の学習支援事業なども合併。

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