2008/02/22
猫の日の前日の猫
猫の日、2月22日の前日、工事現場の針金とコンクリートの土台の上で、猫が毛繕いをしていた。悠々たる舌使いにどっしりした座りっぷりの、白黒ブチの大人猫。
1時間後に来れば、たぶん猫はいない。明日の夜ならいるかもしれない。
工事が進んで、土台から植物のようにビルが生え人々が暮らすようになったときも、ビルの中、毛繕いしていた猫の気配は残ってる。
壁を塗り水道を引き柱を建てた知らない人々の手足の気配と、毛繕いしていた猫の気配と、壁が空だった時に通り過ぎた鳥の気配、さわさわ名残りに囲まれたビル、おそらくは私の家も。
2008/02/05
あなたに親切に振る舞うのは
見ず知らずのあなたに親切に振る舞うのは、あなたを信じていないからです。
もし、あなたの無礼に腹を立て、文句を言ったとしたら、
あなたは私をなじるだろう、怒鳴るだろう、殴るだろう、
家まで後をつけてきて私や私の家族を殺すだろう、家に火をつけるだろう、
そんなふうにあなたを疑っているから、あなたに優しく振る舞います。
あなたの無礼をすべて許し、あなたという存在と関わり合いになることがないよう、足早に立ち去るだけなのです。
あなたの無礼や暴行や乱行を見逃しやり過ごすのは、私があなたを信用していないから。
あなたに関わると、不利益をこうむるとだけ信じ、あなたの気まぐれな暴力が怖ろしいからです。
その場では何もなくとも、あなたは、私の普段の生活のどこかにいる誰かかもしれない。
私がまったく油断している場所で、あなたは過日の復讐を行うかもしれない。
警官であるあなたが、私が別の暴漢に襲われている時、わざと見逃すかもしれない。
飲食店の料理人であるあなたが、私が入ったとき、料理に何かを混ぜるかもしれない。
病院の看護師であり医者であるあなたが、病や怪我に苦しむ私に、より多くの苦痛と苦しみを与えるかもしれない。
そんなふうに、私はあなたを信じていません。
だから、親切にふるまいます。あなたの全てを許します。
あなたと、私の間に、なんら、絆が生まれることがないように。
2008/01/23
雪の日
犬のようにはしゃいでベランダを駆け回る猫
雲が一層はがれて 明るい色になる
雪が降ったから もうすぐ冬も終わるでしょう
2008/01/21
雪が降らない
こごえる風はうすい灰色
集めて ひりひり固めて 冬になる
くだいて削った 雪が降る
雪が降らないから
空はいつまでも 冬のまま
雪が降らない
2007/12/20
自分はありません
形が私を決めます。
ウェブサービスの形に沿って、望まれる範囲の私が現れます。
日本語の規則に従って、表現しうる範囲でだけ、物語を記します。
この短文を読むであろうあなたの目に媚びて、言葉を発します。
おそらく、自分はどこにもありません。