『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』の主人公黒木智子が激しくSADであることについて思う

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook
このページは43回共有されました。これらのツイートを見る。
LINEで送る

  • Views 2315
 
watamote
左は世界のSAD達の間で今話題になっているアニメの第一話のワンシーン。
主人公の女子高生黒木智子が学校の門を出たところで、先生に「気をつけて帰れヨ」と声をかけられ、硬直。声が出なくなり、挨拶もできなくなり、焦っているシーンである。
日本のアニメであり現在放映中らしいが(オフィシャルページ)、このアニメについて知ったのは私がゆるく繋がっている日本国外のSAD達からの情報だった。
なにしろSADという精神疾患を舞台の中央に置いた初めての漫画であり、大変画期的であると称賛されている。SADに悩む多くの人々がこのアニメを見て「共感した」、「泣いてしまった」とネット上に書いている。
漫画として有名になったのは海外でのことで、いわば逆輸入的に日本でも広まったらしい。
で、早速、多くの日本人海外在留者が日本のテレビ番組を視聴しようとするときにするように、中国のサイトにアクセスして観てみた。
結果、思った。この主人公は激しくSADである。人に話しかけることを考えるだけで異常に緊張する。教科書を忘れても貸してと言えない。ファストフード店に入っていくのも緊張する。
鬱、希死観念、摂食障害、とSADと併発しがちな疾患を網羅している。
それでいて努力家である。明るくなりたいと願い、社交的なキャラ設定を確立させるため日々頑張る。ああ、それはよくないよ、と思った。SADの人の中には、そんな努力が達成され、明るいキャラが確立できてしまう人達がいる。いちどそうなると、場を盛り上げるという目的だけのために自動的にケラケラ笑ってしまう癖がつき、本人は自分の本当の感情すら分からなくなってきてしまったりもする。そこまで歪んでしまうと自分の感情と向き合えるようになるまでには結構時間がかかる。
そして絶望的な精神を抱えつつ、妙に前向きなのだ。第二話の始めのほうでは「そうだ、大切なのは過去を振り返る事じゃない。今何をするかだ」などと言う。話のあちこちで、これから とか 未来 とか を強調する。なんか似てないか? そうだ、少し前に私は『社会不安障害になったのは当事者個人の責任か』の記事を「責任とは未来に向かって発生するものなのだろう」で締めた。しかもこのコの理屈っぽい口調。やばい。似てるぞ。
 
それにしても露呈されたのは、日本国内ではこのあまりにもSAD的なアニメ番組がSADを描いていると認識されないということだ。
ストーリーに社会不安障害なんていう言葉は出てこないし、「喪女」とか「モテない」といったラべリングしか行われない。疾患名は出てこない。むしろ、斜めから弱い光を当てていって症状の輪郭を出していくような、そんな描き方だ。
それでも、海外の多くの人達は、このアニメを観て、主人公はSADだと認識する。「watamote social anxiety disorder」で検索してみると、たくさん出てくる。
日本国内では同じものを観ても、これがSADなのだと認識されることはほとんどない。このコ、コミュ力、全然ない、みたいな性格的なものとして捉えられる。
これはSADに対する認知度の違いである。今回、このアニメが出たことで、認知度の違いが露呈されたのだ。
 
海外のブロガ―がものすごく鋭い分析をしている。二件ほど紹介したい。
サイト1のブロガーは『Watamote』はコードで描かれていると分析している。
コードで描かれているとはどういうことか。観る人がどれだけ頭がいいかとか、アニメ鑑賞経験がどれだけあるかとかは関係なく、観る人が鬱や社会不安障害を患う人(あるいは観る人自身がそうであるか)を知っているかどうかにかかってくるということだ。今では私は 谷川ニコ が女性と男性のふたり組の漫画家であると知っている。そして私は確信を持って言える。(ストーリーを書いた)男性漫画家はこの疾患に悩んだことがあり、この漫画シリーズを書くにあたり自分が何をやっているのかはっきりと分かっているのだと。(主人公である)Tomokoの言うこと、振る舞い方は、この疾患の身近で育ってきた人々に向けて放たれたコード化されたメッセージで満ちている。
 
サイト2のブロガーはアメリカと日本のSAD環境の違いを指摘する。
もしTomokoがアメリカ人であったなら、社会不安障害と診断され、抗鬱剤を処方され、たぶん強力な認知行動療法のコースを受講させられる。それは日本では起こらない。日本で彼女が助けを求めたら、自分の全力を尽くして頑張ることが大切だとお説教され、「病気じゃないんだから、薬なんか飲むな」というありがちな叱責を受けるだろう。
ずいぶんと日本通ですね…。参った。
その通りだ。日本のごく普通の家庭において、SADは理解されない。甘えるなと叱責され、出口は閉ざされ、負のスパイラルに向かう。薬を飲むようになっても、それだけだったりで、むしろ薬の依存症に陥る危険に晒される。

確かにSADを巡る日本の状況は悪いです。
けれども、アニメも出たことだし、良い方向に向かうかもしれません。認知度が上がるかもしれません。
もし、SADを患うひとりひとりが、何も言わなければ、何もしなければ、何も変わらないでしょう。
昔読んだ本であり、きちんと引用することができず誠に申し訳ございませんが、確か法学関連の本で、ドイツだかイギリスだかの作者であり、大変感銘を受けた一節があります。
「もしあなたの権利が侵害されていたり、差別や偏見・無理解に晒されていたりすると思うなら、必ず主張しなさい。それは自己中心的な行為ではありません。あなたの義務なのです。一部の者が社会で不利な状況にあるなら、それを指摘し、状況を修正させていくよう声を上げて主張しなさい。そうすることで、徐々に社会は変わっていくでしょう。あなたの世代では変わらなくても、あなたと同じ状況に生まれる次世代の人々が不利益を被らないほどに社会を変えられるかもしれません。声を上げる者がいなければ、社会は変えられません。ですから、主張することは権利ではなく社会人としての義務なのです」
このようにひとりひとりが声を上げていくことで社会の認知度を上げていこうとする思想は、確かに欧米社会の隅々まで根付いており、社会における精神疾患をめぐる認知度の向上に貢献していると私は考えています。
現代では、情報を簡単に広めることができるので、声を上げるのは難しいことではありません。
幸いアニメの放映も始まっているので、チャンスです。あのアニメはSADだよね、とネットで広めていけばいい。それだけでも認知度は上がっていく。
たぶん、製作者側も特定の精神疾患名を盛り込むことは、あらゆる問題を孕めてしまうので、できないでしょう。漫画の作者がメッセージを込めたのかどうかは本当のところは分かりませんが、あえて、そうだと仮定してみて、メッセージに応えると考えてみてもいいかもしれません。だから当事者がやっていけばいいのです。
大切なのは過去を振り返る事じゃない。今何をするかだ。
毎日絶望的な精神を抱えつつ、常に前向きでいたい。それはたぶん、とてもSAD的なことなのだ。
2,464 total views, 2,130 views today
Ads by Google

No related posts.
Sorry, the browser you are using is not currently supported. Disqus actively supports the following browsers:
This page is forcing your browser to use legacy mode, which is not compatible with Disqus. Please see our troubleshooting guide to get more information about this error.
We were unable to load Disqus. If you are a moderator please see our troubleshooting guide.
×
メッセージをどうぞ...
⬇ 画像をアップロードするには、ここにドラッグ&ドロップしてください。
でサインイン
または名前を選んでください
?

DISQUS は会話のネットワークです

  • Disqus は決して管理者や検閲者ではありません。このコミュニティのルールは独自に設定されています。
  • あなたのメールアドレスは私達が安全に管理します。メールは管理と任意の通知にのみ使用されます。
  • 世間知らずなことや違法なことをしないでください。それは簡単なことです。
まだ誰もコメントしていません。

社会不安障害と向き合う のトップディスカッション

    トップコメンター

      Nothing for you here ... yet. But as you comment with Disqus and follow other Disqus users, you will start to receive notifications here, as well as a personalized feed of activity by you and the people you follow. So get out there and participate in some discussions!

      著者


      SADをアイデンティとして掲げつつ新分野の確立を目論み日々研究生活を送る。不安が高まると自己の存在感が希薄化するため輪郭が乱れ周囲の風景と混ざる。(左図)
      Ads by Google
      follow us in feedly
      1. 「インナーチャイルドと再会してお絵描きしましょう」 子供の学校行事の保護者用アクティビティ。今の私にはハードル高過ぎる… http://p.twipple.jp/MGun5 

      2. 震えたからうまくいかなかったのではない。震えても震えなくても関係ないのだから、興味のあることに向かって突き進もう (過去記事)ネガティブ価値観を検証する | 社会不安障害と向き合う http://pax.moo.jp/sadjournal/2012/07/24/%e3%83%8d%e3%82%ac%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%96%e4%be%a1%e5%80%a4%e8%a6%b3%e3%82%92%e6%a4%9c%e8%a8%bc%e3%81%99%e3%82%8b/ 

      3. SADのことを伝える | According to my cognitively restructured mind, http://livingwithsad.tumblr.com/post/58210349078/sad 

      4. 土曜のランチに特大グラタン(casserole)を作ったりする平和な行為を遂行すると平和な気分になり不安が消えたりする。行為・身体・精神は繋がっているなどと思うが単純なだけかもしれない。 http://p.twipple.jp/4JMtC 

      5. 自己というものは極めて小さな存在であり、物事に大きな影響を及ぼさない。良いことが起こっても悪いことが起こっても、私が原因なのではない。

      6. 'EMDR should be considered for people suffering from PTSD'. New WHO Guideline on Mental Health Care After Trauma http://www.medscape.com/viewarticle/809185 

      7. EMDR 眼球を動かすことによる心的外傷の新しい治療法で短期間で効果があると言われる。やってみたいけど、ひとりではできなさそうだ。 EMDR - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/EMDR 

      8. いちどSAD等のメンタル疾患になると学業の継続が著しく困難になる現実に、物質的支援はおろか理解すら示さない大学教育のあり方は、当事者自身が障害を克服することを絶望化、さらには障害を悪化させている。

        1リツイート 1お気に入り登録 開く · 1リツイート 1お気に入り登録
      9. 社会および国家の発展にとって大きな価値となる経験と才能を有する可能性があることから、積極的に推進しなければならない。特別な物質的支援を提供し、および教育に解決策を講じることが、高等教育へのアクセスおよび継続の両面においてこれらのグルーブが直面する障害を克服することに役立つ。

      10. 第三条 公平なアクセス (中略)恵まれない人々、被占領地域の住民、障害者などの特別な対象となe="text-align:left;position:relative;zoom:1;min-height:16px;padding-top:1px;margin-top:2px;overflow-x:hidden;overflow-y:hidden;border-width: 0px; border-style: solid; border-color: rgb(232, 232, 232); ">

      11. 第三条 公平なアクセス (中略)恵まれない人々、被占領地域の住民、障害者などの特別な対象となe="text-align:left;font:normal normal normal 12px/16px 'Helvetica Neue', Arial, sans-serif;text-decoration:none;text-transform:none;vertical-align:baseline;position:absolute;right:0px;bottom:1px;background-color: rgb(255, 255, 255); -webkit-box-shadow:rgb(255, 255, 255) 0px 0px 10px 5px;box-shadow:rgb(255, 255, 255) 0px 0px 10px 5px;visibility:visible;outline: invert none 0px; list-style: none outside none; border-width: 0px; border-style: none; margin: 0px; padding: 0px; border-color: white; ">

      12. 返信
      13. リツイート
      14. http://ad9.org/pegasus/UniversityIssues/AGENDA21.htm 

    1. 精神を少しでも安定させるために一年ぶりに頓服薬。「久しぶりなのに変わらずに接してくれるんだね。人が相手だとこうはいかないんだよ」とアルプラゾラムの厚情に感謝を示してみる。それにしても相手が人でなく錠剤だと喋りやすい。

    2. 博士号:「足の裏のご飯粒」と形容されるもの。そのこころは、「取っても得はしないが、取らないと気持ち悪い」という点に尽きる。ご飯粒は食えても、博士号は食えないあたりが、人生の残酷さとリアルさを演出する。ただし医学系が少し異なるポジションなのは言わないお約束。

      5リツイート 2お気に入り登録 開く · 5リツイート 2お気に入り登録
    3. 『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』の主人公黒木智子が激しくSADであることについて思う http://goo.gl/fb/RYzvk 

      3リツイート 2お気に入り登録 開く · 3リツイート 2お気に入り登録
    4. 今日は一日おうち執筆。がんばろう!!!

    5. フォローしてくださった方々の中で表面的にメンタル系のことに言及していない方々へのフォロー返しを控えるようにしていますが、返してほしい場合は声をかけてください。"社会不安障害と向き合う"なんてアカ名にフォローされると困る方もいらっしゃるかもしれないと気を遣ってみました。

    6. "Do you want to know my dream?!" と言う声で起こされた。見ると幼児の息子が立っていて、公園に恐竜が来た夢を見たと言う。なんだかいい一日になりそうだ。いや、いい一日にしてみせる。

    7. Lest we forget. #HiroshimaDay

    8. ワーキングプア状態を克服すべく就職活動をしようと思う。不安はあるけれど以前のように回避しようとはしないからやはり今がチャンスなのだろう。徐々に安定していけばうれしい。SADなのに教職なんてできるのか。それでも実験的にやってみようとすら思う。

    9. 私のブログアクセスの検索ワードを見ると「社会不安障害」と「看護師」や「客室乗務員」などの職業名が結構多い。SADを患いながら高度の対人スキルが要求される職業に就いて毎日頑張っている人達が多くいるらしいこと。それなら私もきっとできるはずだと思う。また明日から頑張ろうと思う。

      1お気に入り登録 開く · 1お気に入り登録
    10. Skypeが鳴るので見たら親だった。不安度MAX

    11. これ以上のツイートはありません。

      QRコード


      QR Code - scan to visit our mobile site
      社会不安障害と向き合うCopyright © 2013 社会不安障害と向き合う. All Rights Reserved.
      Powered By: WordPress | Theme: Simple Catch
      Cancel
       
      »
      0%
      10%
      20%
      30%
      40%
      50%
      60%
      70%
      80%
      90%
      100%