与党内から事件化の要請
では、これで真相が解明されるかというとそう簡単ではない。
ノバルティスは、「捜査に全面的に協力する」との姿勢を示しているが、大学の臨床研究に関与した元社員を含め、データの改ざんについては一貫して否定、「実際の臨床データが手元になく内部調査も限界。ここまで来れば、まな板のコイ」(ノバルティス幹部)と半ば諦めの境地にある。
事実、政府与党内からは「何が何でも事件化しろとの意向が強い」(厚労省関係者)。「日本国民と医師をうその宣伝でだまし、貴重な医療保険から莫大な利益を得ていたノバルティスを絶対に許してはならない」(自民党関係者)というものだ。
折しも、刑事告発のあった翌日、アルツハイマー病の早期発見と根本的な治療法開発を目指し、東京大学など全国38医療機関が参加した国の大規模な臨床研究「J-ADNI」で、条件に合わない患者が多数登録されるなど、ずさんな管理が明らかになった。データ改ざんの疑いも生じ、厚労省が調査を開始した。
捜査機関のメスが入る一方で、日本の臨床研究自体に対する疑いの目は、むしろ広がりそうな気配である。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)