チャイナ・ウォッチャーの視点

高校のテキストでも強調される南京大虐殺 「米国人洗脳」工作の実態
「南京事件」を考える(後篇)

有本 香 (ありもと・かおり)  ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。執筆者は、富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)、城山英巳氏(時事通信社中国総局特派員)、平野聡氏(東京大学准教授)、森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)、三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)。

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 奇しくも今般はその「歴史カードによる日本叩き」を、まさに「第二次大戦の戦勝国クラブ」ともいうべき国連安保理の場で行なって見せた。具体的言及こそなかったものの、南京事件もまた、こうした「勝者米国の正義」「戦勝国史観」と深く関わる件である。

米国の高校生への「反日教育」のテキスト

 前篇で、いわゆる「南京事件」のポイントを整理した。これらのポイントは同時に、「南京事件」に関する疑問点でもある。昨年2月、「(いわゆる)南京事件はなかったのではないか。通常の戦闘行為はあったが」と発言した名古屋の河村市長は、発言の前も後も一貫して、「南京の件について中国側とオープンに議論したい。この問題が、いつまでも日中間に刺さった『トゲ』になっていることは日中友好のためによろしくない」と主張したが、筆者もまったく同じ思いである。

 私たちはつねに、過去の事実、史実に対し誠実に向き合うべきである。76年前の南京で、通常の戦闘行為や、一部の不届き者による暴挙ではなく、日本軍による「虐殺」が行われたという動かしがたい証拠があるのなら、ぜひとも知りたいと思うし、そのうえで、現代の日本国民としての処し方を考えたいとも思う。しかし、本件はわずか70数年前のことにしては、不明瞭、不可解な点が多過ぎる。不明瞭・不可解な点が多いゆえに、南京事件は容易に「膨張」させられてしまう。日本にとって忌々しき最近の一例を挙げよう。

 河村たかし氏は、名古屋市長就任後にロサンゼルスの一部の高校で、「南京虐殺」の記述を含む歴史副読本が使われていることを偶然知ったという。筆者の手元にはそのコピーがあるが、次のように記述されている。

「南京大虐殺」――南京の市民が、戦争の激情と人種的優越感に煽られた日本軍の犠牲となった事件――は、戦争の恐怖を実証した出来事である。2カ月の間に、日本兵は7000人の女性を強姦し、数十万人の非武装の兵士や民間人を殺害し、南京市内の住宅の3分の1を焼き払った。40万人の中国人が、日本兵の銃剣の練習台にされたり、機関銃で撃たれて穴に落とされたりして命を落とした。(Traditions & Encounters --- A Global perspective on the past)

 くだんの「南京大虐殺記念館」で、30万と宣伝している犠牲者が、このテキストのなかでは40万人に“増えて”いる。虐殺されたという人数が増えているだけではなく、7000人もの女性を強姦したことにもなっている。河村氏はこれを「どえりゃあこと」といい、「米国における教科書問題」と表現した。

 この40万人説のネタ元は何か、といえば、本稿前篇で触れた故・アイリス・チャン著のベストセラー本『ザ・レイプ・オブ・ナンキン』と思われる。

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有本 香(ありもと・かおり)

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企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

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