東京の多くの政府関係者は、事実上、米国政府が中国の一方的な動きを黙って受け入れたと考えている。常日ごろ、中国にどっぷり染まった人々を周囲に置く傾向のあるバラク・オバマ大統領の近くには「ジャパンハンド」がいないことも嘆く。米国政府が日本を支持することは、もはや当てにできないという感覚が広まっていると語る日本政府関係者は1人ではない。
このような背景には、安倍氏にも当然わかる皮肉がある。1950年以降ずっと、米国政府は日本に、再軍備して、安倍首相が提唱しているような国防態勢を取るよう迫ってきた。ダグラス・マッカーサー元帥の命令で書かれた1947年の平和憲法のインクが乾くやいなや、米国人は日本に「交戦権」を永遠に放棄させたことを悔やんだ。
米軍による占領終了の交渉を任じられたジョン・フォスター・ダレスは、日本に30万~35万人規模の軍隊を構築するよう迫った。中国は共産主義国家になり、米国は朝鮮半島で戦争をしていた。東アジアに無力化された「従属国家」を抱えることは、もはや米国に適さなくなっていたのだ。
■日本は「予測不能で危険」
何年もの間、日本はこうした圧力に抵抗してきた。日本政府は米国の核の傘を頼りにし、ビジネスを築く仕事にいそしんだ。日本の唯一の譲歩は、戦闘を禁じた自衛隊の創設だった。あれから60年たった今、日本には、米国を言葉通りに受け止める指導者がいる。安倍氏には、日本の憲法解釈を見直し、場合によっては平和主義をうたった憲法第9条そのものを覆す、個人的な信念と地政学的な口実がある。
しかし、その瞬間が訪れた今、一部の米国政府関係者は考え直している。ある元ホワイトハウス高官によれば、ジョン・ケリー国務長官は日本を「予測不能で危険」な国と見なしているという。日本のナショナリズムが北京で対抗措置を引き起こすという不安感もある。オーストラリアの学者で元国防省高官のヒュー・ホワイト氏は、これが意味することは明白だと言う。「米国としては、中国と対立する危険を冒すくらいなら日本の国益を犠牲にする」ということだ。
安倍氏が靖国神社を参拝した時、米国政府にメッセージを送る意図もあったのかもしれない。日本の右派の奇妙なところは、最も熱心な日米同盟支持者でありながら、同時に米国政府が敗戦国・日本に強いた戦後処理に憤慨していることだ。米国の望みに逆らって靖国を参拝することは、日本が常に米国政府の命令に従うわけではないという合図を送る一つの方法だ。
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