テレビ局はその存在意義を大きく低下させた!? 

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テレビ局はその存在意義を大きく低下させた!? 
2月に入り、大雪が関東を襲った。一度目は、2月8日。二度目は2月14日。一度目は約半世紀ぶりの大雪だったが、二度目は観測史上最大の大雪となった。1週間経過した今も、山梨県、秩父、佐久、軽井沢などでは、家から出ることが出来なかったり、車が立ち往生していたり、通行止めになっている道路もまだまだ多くある。

2月14日の歴史的大雪については、人命にも関わる大変な状況にも関わらず、緊急報道番組が組まれるどころか、通常のニュースにおいても山梨県を始めとしたこれらの地域の情報がなかなか報道されなかった。また政府や行政の動きや対策についても、なかなか状況が明らかにならなかった。非常事態であった今回の大雪にも関わらず、このような状況になってしまった理由には、ご存知の通りソチ五輪開催がリンクしている。

■外せなかった五輪
4年に1度の五輪。1984年のロサンゼルス五輪から商業イベント化が進み始めた。現在では、五輪協賛だけで数十社、合計数百億円の協賛金が動くビッグマーケットだ。また五輪における協賛スポンサーは、ただ協賛するだけではなく、テレビCMを作り、オンエアしたり、キャンペーンを行うなど五輪関連の広報宣伝を一気に仕掛ける。その金額を計算すれば、やはり数百億円にのぼる。

2月8日に開幕したソチ五輪は24日まで続く。テレビ各局とも、五輪報道に熱が入っている。中継キャスターとして主力アナウンサーを派遣するだけでなく、ジャニーズを始めとするタレントキャスターも多く派遣されている。テレビ局にとっても、4年に1度の一大イベントであり、広告主や広告会社にとっても一大イベントなのだ。

だからこそ、通常であれば番組内容を変更して、ニュース特番に切り替えるべき歴史的災害においても、五輪を放映せざるを得なかったのだ。その結果、大雪に関する情報が後手後手になってしまったのだ。

確かに五輪は人々に夢と希望を与える素晴らしいイベントだ。しかし、大雪で死ぬか生きるか分からない人がいる中でも優先すべきイベントなのだろうか。答えは言うまでもなくNOだ。

■報道的役割を失うテレビ局
テレビで放映されない大雪に関する情報は、主にソーシャルメディアを通じて得られるようになった。Twitterなどでは生命の危機を感じている人達の声がどんどん上がった。雪の状況を市民から吸い上げ、行政が発信・対応するケースも見られた。そしてソーシャルメディアでのニュースが大きくなっていくと、人々は五輪を見ている場合ではないほど甚大な被害を受けている地域があることに気づき始めた。

テレビ各局は、こうした状況を受けて報道するようになったが、五輪中継を止めることはなかった。なぜなら数百億円にのぼる五輪広告をストップすることは、4年に1度のチャンスをフイにすることになるからだ。

テレビ局が歴史的大雪によって失ったものの一つは、報道機関としてのポジションだ。情報自体もなく、発信するスピードも遅い。このような非常事態にこそ、必要な報道機関としての役目をテレビ局は自ら放棄したのだ。

■広告的価値を失うテレビ局
報道機関としての役割だけでなく、広告としての価値も失った。2月8日から2月20日に至るまで、企業価値を著しく上げたのは五輪のスポンサーをしている企業ではない。企業価値を上げたのは、歴史的大雪に際して、素晴らしい対応をした企業だ。

例えば、甲府市で立ち往生した車の列にいた山崎製パンのトラックドライバーは、その荷台にあったパンを、周りの困っている人達やサービスエリアの人達に振る舞った。この対応は発生から24時間で19,000ツイートを超え、賞讃の声が相次いだ。その後、Twitterでの状況を見た読売新聞などのメディアが、この事例を取り上げるようになった。