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「アンネの日記」破られる被害相次ぐ
2月21日 18時24分

東京都内の公立図書館で、所蔵する「アンネの日記」や関連する本のページが破られる被害が相次いでいることが分かりました。
被害は、7つの区と市の36の図書館で少なくとも280冊余りに上り、届けを受けた警視庁が器物損壊の疑いで捜査しています。

「アンネの日記」などの本のページが破られていたのは、東京・杉並区や豊島区、西東京市などの公立図書館で、先月上旬以降、「アンネの日記」をはじめ、アンネ・フランクの伝記、それにホロコーストに関する本などのページが破られているのが相次いで見つかったということです。
NHKが都内の自治体に取材したところ、被害は合わせて7つの区と市の36の公立図書館で、少なくとも282冊に上っています。
最も多かったのは杉並区の11の図書館で119冊、次いで、中野区の5つの図書館で54冊、練馬区の9つの図書館で41冊、新宿区の3つの図書館で39冊、豊島区の3つの図書館で12冊、西東京市の3つの図書館で10冊、東久留米市の2つの図書館で7冊です。
一連の被害の中では数十ページが破られていたり、カッターのようなもので切られたりしたものもあったということで、5つの区はすでに警視庁に被害届を出しました。
警視庁は器物損壊の疑いで捜査を進め、本の返却時に異常はなかったとみられることから、何者かが図書館の館内でページを破ったとみて、本の検索記録や防犯カメラの映像を解析するなどして調べています。
杉並区の井出隆安教育長は、「区民の憩いの場であり、知の財産を共有する場所である公立図書館において、いかなる理由においても図書を意図的に毀損することは許されない行為だ」というコメントを出しました。

世界記憶遺産にも

「アンネの日記」は、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツによるユダヤ人に対する迫害から逃れ、ドイツ占領下のオランダに家族と隠れて暮らしていたユダヤ人の少女、アンネ・フランクの日記を基にした本です。
戦争や人種差別の問題を少女の目線から描いた名作として、日本でも多くの学校や図書館などに置かれている世界的なベストセラーです。
本の中には、「この日光、この雲のない青空があり、生きてこれをながめている間、私は不幸ではないと心の中で思いました」とか、「この恐ろしい戦争は、いつかは終わるでしょう。私たちがただユダヤ人というのでなく、再び一般の国民となる日がきっと来るでしょう」など、厳しい状況の中でも希望を捨てずに生きたアンネの思いが記録されています。
2009年にはその歴史的価値が認められ、ユネスコ=国連教育科学文化機関の世界記憶遺産に登録されています。

ひきょうで心が痛む

アンネ・フランクの親族と40年以上にわたって親交を続けている「ホロコースト記念館」の大塚信館長は、「社会にはいろいろな考えを持つ人がいますが、みんなが読む図書館の本を破る行為はひきょうで心が痛みます」と語りました。
大塚さんは、20日もアンネの親族とメールをやりとりして戦争の悲惨さを伝える活動の大切さを話し合ったということで、「アンネの日記には憎しみや恨みは一切なく、平和を願う純粋な気持ちだけが込められているからこそ、世界55か国で読み続けられていると思います。誰がこのようなことをしたのか分からないが、ぜひ考えを改めてほしい」と話していました。

イスラエル大使館 報道に触れショック

イスラエル大使館の広報担当者はNHKの取材に対して、「報道に触れてショックを受けています。アンネの日記は、体験者の視点からホロコーストについてのよりよい理解が得られる作品で、日本でも広く、敬意を持って知られています。日本の捜査当局はこうしたひどい行為を犯した人物に対して速やかに対応し、裁きを受けさせるものと確信しています」とコメントしています。

極めて遺憾 恥ずべきこと

菅官房長官は午後の記者会見で、「事件の背景は全く予測しかねるが、被害を受けた図書館から警察に被害届が出され、現在、捜査が行われている。今回の事件はわが国として受け入れられるものではなく、極めて遺憾であり、恥ずべきことだ。警察当局も、しっかりと捜査するだろう」と述べました。

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