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日本において報道の自由を奪っているのは誰か?

 国際的な報道の自由度ランキングで日本の順位が急落していることが話題となっている。パリを本拠とする国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は2014年2月12日、世界各国の報道の自由度ランキング2014を発表した。日本は福島原発事故の隠蔽体質や特定秘密保護法の成立などが指摘され昨年の53位から順位を落とし59位に転落した。

 報道の自由度ランキングは、世界180カ国について、メディアの独立性、透明性、自己検閲など6つの視点で調査を行ったものである。
 ただ調査そのものは各国のジャーナリストや専門家に対するアンケートがもとになっているので、恣意性が入りやすいという欠点がある。したがって、順位そのものよりも前年からの変化をより重視した方がよい。

 日本は2010年には11位、2011~12年には22位だったので、福島原発事故以後、文字通り順位が急落している。同団体では、その理由として記者クラブ(kisha-clubという英単語まである)という独特の閉鎖的なシステムによって情報統制が強化されている点を指摘している。
 大手メディアの記者と政府が一種のエリート・インナーサークルを形成しているという構図はフランスなどにおいても見られるものだが、活動費用まで政府から提供を受ける記者クラブの制度はかなり露骨であり、日本特有のシステムといってよい。
 日本においてメディアと政府は対立ではなく、利益を共有する体質になっており、福島原発事故以後、その傾向が顕著になったわけだが、このような状況が生じてしまう最大の理由は、皮肉にも国民のメディアに対する異様な信頼度にある。

 経済広報センターが2013年8月に公表した「情報源に関する意識・実態調査報告書」によると、新聞の情報が信頼できると答えた人は57%に上っている。同じ調査ではないので単純比較はできないが、米国では25%程度であることを考えるとこの数字はかなり高い。

 つまり大手マスメディアは現実問題として世論形成に大きな役割を果たしており、官僚や政治家はそれを分かっているからこそ彼等を極端に優遇している。ジャーナリストの側も、優先的な情報提供などメリットが大きいことから、自然とインナーサークルが形成されてくるという仕組みだ。
 最近ではマスゴミという言葉に代表されるように、既存のマスメディアに対する過激な批判も高まっているが、これもマスコミを権威ある存在として認識していることの裏返しである。

 このような構造は、官僚主導政治と国民との関係性によく似ている。日本では官僚主導政治からの脱却を望む声は大きいが、一方で現在のシステムに反発して官僚を辞めた人物を過度に持ち上げるなど、アンビバレントな感情が目立つ。
 学業成績優秀なエリートに穏やかに飼い慣らされていたいという、潜在的な従属願望から完全に脱却できないのだ。官僚とともにエリート・インナーサークルを形成している大手マスメディアに対しても、中立で一切の偏向がない信頼できる情報源であって欲しいとの願望がある。

 非常に皮肉なことだが、マスメディアに対する国民の過度な欲求がなくれば、大手メディアの存在感は一気に低下し、政府によるメディアの情報統制も消滅する可能性が高い。民主国家において意思決定を行うのは国民自身であって、官僚やマスコミではない。官僚やマスコミに、聖人君子のような振る舞いを求めること自体がそもそも間違っているのだ。
 国民の多くが大手メディアの報道内容にそれほどの関心を示さなくなる時が、本当の意味で報道の自由が確立する時である。

ニュースの教科書編集部
大手マスコミでは記事にできない本音を集めたニュースサイト

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