February 20, 2014
エリザベス・コルバート(Elizabeth Kolbert)氏は世界各地を旅して書き上げた新刊『The Sixth Extinction: An Unnatural History(第6の絶滅:不自然な歴史)』の中で、われわれの目の前で起きようとしている大量絶滅の前兆について述べている。地球が誕生してから同様の危機が5度訪れているが、今回の危機はこれまでとは異なるという。今回の危機はわれわれ人間によって引き起こされようとしているのだ。
この本の主題は、人間の性質そのものが招く悲劇だ。「たゆまぬ努力、創造性、協力して問題を解決する能力、複雑な課題をやり遂げる能力など、人間を人間たらしめている本質」が世界を急激に変えてしまい、ほかの種はついて来ることができないとコルバート氏は書いている。同氏に話を聞いた。
◆最終章のタイトル“The Thing With Feathers(羽を持つもの)”は、希望をテーマにしたエミリー・ディキンソンの詩を暗示したものですね。しかし、私があなたの本から受け取ったのは“死は羽を持つもの”という正反対のメッセージでした。これは間違った感想でしょうか?
最・・・
この本の主題は、人間の性質そのものが招く悲劇だ。「たゆまぬ努力、創造性、協力して問題を解決する能力、複雑な課題をやり遂げる能力など、人間を人間たらしめている本質」が世界を急激に変えてしまい、ほかの種はついて来ることができないとコルバート氏は書いている。同氏に話を聞いた。
◆最終章のタイトル“The Thing With Feathers(羽を持つもの)”は、希望をテーマにしたエミリー・ディキンソンの詩を暗示したものですね。しかし、私があなたの本から受け取ったのは“死は羽を持つもの”という正反対のメッセージでした。これは間違った感想でしょうか?
最終章の主役はキノヒ(Kinohi)と名付けられたオスのハワイガラス(学名Corvus hawaiiensis)です。この種は地球上に100羽ほどしか残されていません(野生では絶滅)。キノヒはとても人なつっこく、カリスマ的な魅力の持ち主です。マウイ島に繁殖用の施設があります。繁殖にはキノヒの遺伝物質がどうしても必要ですが、手に入れることができません。交尾を拒み続けているためです。キノヒは人間に育てられたため、自分のことを鳥だと思っていないのです。
そこで、サンディエゴ動物園の動物病院に連れて行くことにしました。生殖生理学の専門家バーバラ・デュラント(Barbara Durrant)氏が遺伝物質を手に入れ、マウイ島で待つメスに受精させるため、オス鳥が興奮すると言われる方法でキノヒを何時間もなで続けます。しかし、私が訪れたときはまだ成功していませんでした。
この物語に人間の本質が凝縮されているように思えました。ある意味、この本の真の主題です。人間が持つ素晴らしい機知や心遣い、自然界の一員を救いたいという英雄的な努力。しかし一方で、自然界はますます大きな脅威にさらされています。
つまり、希望は羽を持つものですが、この本の最後に大きな希望はありません。ただし、キノヒに希望があるかどうかは、読者が物語をどのようにとらえるかによります。
◆人間はほかの種を二重に苦しめていると、あなたは述べていますね。気候変動によって移動を強いながら、移動しにくい環境をつくっていると。
現在、ほぼすべてのものが動いているか、動く運命にあります。気候変動を追跡したければ、毎日、極地か高地に向かって10メートルほど移動しなければならないというのが私の持論です。
かつて、いくつかの種は移動することによって劇的な気候変動を切り抜けてきました。しかし、現在は問題があります。移動する先は道路によって分断されているか、ロサンゼルスやサンパウロといった都市に占拠されているのです。つまり、2つの力に耐えなければならないということです。
◆われわれは自然界の一員ではないのですか? 生物は進化によってわれわれ人間や人間が世界に及ぼした影響に適応するのではないでしょうか?
たとえわれわれが1つの影響しか及ぼしていなくても、大量絶滅が引き起こされる可能性はあります。ところが、われわれは同時に複数の影響を及ぼしています。温暖化を加速させているだけでなく、熱帯雨林を伐採しています。熱帯雨林を伐採しているだけでなく、その熱帯雨林に外来種を持ち込んでいます。これだけでも非常に大きな影響です。今のわれわれは(地球に飛来した)小惑星とでも呼ぶべき存在なのです。小惑星の影響はさまざまでしたが、最高の結末を迎えたことはありません。
われわれ人間が自然界の一員かどうかと言えば、それこそがこの本の主題だと私は考えています。われわれはどのような存在なのでしょう? 小惑星も自然界の一員だと言うのであれば、われわれは自然界の一員です。小惑星は自然界の一員でないのであれば、われわれも自然界の一員でないと言えるでしょう。地球のすべての歴史を振り返っても、われわれは完全に独自の地位を占めています。この本の要点はそこにあります。
◆この本では生息環境の保護についてあまり触れられていませんが、あなたは制定50周年を迎える原生自然保全制度法(National Wilderness Preservation System Act)をテーマにした記事をナショナル ジオグラフィック誌のために書くことになっています。世界に残る原野が保護される可能性はないのでしょうか?
急激な変化が起きている現在、われわれにできる数少ないことの一つが、可能な限り多くの場所をそのままにしておくことです。動かなければならない生物が移動できるよう、進化が妨げられないよう、広い範囲をそっとしておくべきです。適応できる生物は適応するでしょう。しかし、重要なのは食物網を現状維持することで、可能な限り多くの生物に今を生き抜くチャンスを与えることです。多くの人が同じことを言っています。それこそがわれわれにできる最善策なのです。
BOOK JACKET PHOTOGRAPH COURTESY ELIZABETH KOLBERT