吉田典史『悶える職場』
吉田典史さんより『悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る』(光文社)をお送りいただきました。ありがとうございます。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334977689
・上司からいじめを受け、うつ病などになった人たち
・世間的には“弱者”としてとらえられている社員(育児をする男性や女性、うつ病の社員、正社員になることができない人など)に苦しめられている人たち
・リストラや人事異動などにより、精神的に追い詰められている人たち
・過労死などに追い込まれた人たち(とその家族)
――私は、実際に悶えている人たちに聞き取り(取材)をすることにした。そして、私とのやりとりを同時中継のような形で、ほぼそのまま伝えることで、真相に迫りたいと考えた。
左の書影の帯が、ほとんど女性週刊誌の表紙状態ですが、それが「悶え」を象徴しているようにも思えます。
Chapter1 若手社員を追い込む「上司」たち
Chapter2 「弱者」にかき回される職場
Chapter3 職場に潜む「狂気」が見える
Chapter4 「死」と隣り合わせの職場
Extra Chapter 究極の低賃金に喘ぐ「プロ」たち
本書、ダイヤモンドオンラインで連載された「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生」からのセレクトで、
http://diamond.jp/category/s-worry_office
どれも結構な迫力で迫ってくるストーリーですが、その中でも、最近結構似たようなスタンスでの叙述の多い他の章に比べて、第2章の「弱者」にひどい目に遭わされている周りの人々というのは、すごくいい目の付け所であるとと同時に、猛烈な攻撃の対象になるリスクをあえて冒して書いているという意味で、勇気ある叙述ですね。
実に様々なケースから浮かび上がってくるのは、吉田さん自身の言葉で言えば、日本的な「柔軟な職場構造」が、それをアビュースしようという人がいると、とことん真面目な人を搾取するシステムに転化してしまうということなのでしょう。
ワーク・ライフ・バランスという誰も正面切って文句をつけられない大義名分が、個人に職務が明確に定義されず職場で誰かがタスクをこなさなければならない中で、特定の人に過重労働が積み重ねられてしまう仕組みを増幅してしまうという不条理は、吉田さんが炎上を覚悟でここまで言い切らなければ、(本当は職場で何が起こっているかをわかっている人々もそういう政治的に正しくないことをいうのを憚るために)なかなか世間に伝わっていかないのでしょう。
ホワイト企業のブラック職場、
ワーク・ライフ・バランスにとても配慮するホワイトな企業の、その仕事が特定の人に押しつけられて過重労働を生み出すというブラックな職場を生み出す、このメカニズムを、えぐいまでの筆致で描き出したこのチャプターだけでも、読まれるに値する本です。
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