「問題社員」の要望を、会社はどこまで容認すべきか

2014.02.20 07:30

会社はどこまで従業員の求めに応じる必要があるのか! 戦国部長たちの判断事例集


ブラック企業が取り沙汰されるようになってから、ずいぶん経ちます。たしかにその領域に収まる企業は改善されるべきですが、もしかしたら「ブラック企業だ」と訴える従業員側がブラックだというケースも少なくないのかもしれない......。

そんなことを実感させてくれたのが、きょうご紹介したい『会社はどこまで従業員の求めに応じる必要があるのか! 戦国部長たちの判断事例集』(梅本達司著、東京堂出版)です。

現役の特定社会労務士である著者が、実際にあった事例を通じ、ときに無謀ともいえる従業員の要望に対する現実的な対応術を説いた書籍。各章が「人事」「問題社員」「セクハラ・パワハラ」「健康」「休憩・休暇」「給与賞与」「契約・退職」とテーマ分けされているので、直面した問題の解決策をすぐに知ることができます。

其の二「株式会社安芸 人事部 毛利部長が『問題社員』に苦悩した1年間」から、いくつかを引き出してみましょう。

「意味のない研修には行きたくない!」


株式会社安芸では、入社2年目から3年目の社員を対象に協調性及び規律を遵守する精神の増進を図るための研修会を実施しています。(中略)その研修日程を見た宍戸君が「レクリエーションなんてくだらない。意味のない研修には出席したくありません。通常勤務をさせてください」と言ってきたのです。


毛利部長は、研修を受けさせることを、どこまで従業員に強制できるのか考えています。

一般的に研修は、現在の仕事に必要な技術や技能、規則や規定等を身につけるためだけにあるわけではないそうです。より広く、労働力そのものをよくするための研修も含まれるということ。ですからこれを目的に実施しているのであれば、スポーツや演芸などのレクリエーション的な要素を帯びていたとしても、業務命令として参加を命じることは可能だというわけです。

ですからこの場合の宍戸君が研修に参加しないとすれば、それは業務命令違反。かわりに通常の仕事をしたとしても、労働契約どおりの業務を行なったとはいえないので、その日の賃金を支払わないことも可能だといいます。(43ページより)


「無意味な出張には行きたくない!」


宍戸君に対し、上司が出張を命じたところ、宍戸君は「その出張はあまり意味がありません。私は行く必要ないと思います」と出張命令を拒否したのです。(中略)結局、出張には行かず、会社に出勤してきて、内勤業務を行なったのです。この報告を受けた毛利部長は、まず、出張に行かなかった日については、賃金は不払いになる旨を宍戸君へ伝えました。すると、宍戸君は「その日は社内で業務をやっているのですから、ちゃんと賃金を支払ってほしいです」と申し出てきたのです。(後略)


労働者は、会社と労働契約を締結しています。ですから労働の内容・遂行方法・場所などに関し、会社の指揮に従う義務を負っているわけです。そして会社は、この業務に従った労働の提供を受けたときに賃金を支払う義務を負うことになるということ。

この例でいうと宍戸君は会社の指揮に従った労働を提供していないことになるので、会社は賃金の支払い義務を負わないと考えることができるといいます。(54ページより)


「Twitterの内容に口出ししないでほしい!」


(先輩社員が横流しを行って懲戒処分となったことを)後輩社員の国司君が、ツイッターでつぶやいていたのです。毛利部長は、会社に横流しの事実があったことを世間に公表されれば、杜撰(ずさん)な管理が原因と考えられ会社の信用を失墜したり、会社イメージが悪化することを心配し、すぐ削除するように命じました。ところが、国司君は、「個人的なつぶやきに会社がどうこう命令するのはおかしいと思います」と削除することを拒否してきたのです。(後略)


労働契約法3条では、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を遂行しなければならない」としているそうです。これは「従業員は会社との信頼関係を維持し、背信行為を行なわず、企業の利益を侵害したり、侵害するおそれのある行為は行なわない義務がある」という意味。

従業員がTwitterなどで会社で起きたことを公表した場合、それが会社の不利益につながることは充分に考えられます。だとすれば、つぶやいた本人に悪意がなかったとしても、それは労働基準法でいう「信義則」に反するのだとか。ですからこの場合の毛利部長は、「会社に対する背信行為となる可能性があり、削除しないのなら服務規律違反として懲戒処分もありえると国司君に伝え、強く削除を命じてかまわない」と著者は説明しています。(63ページより)

これらを見ただけでも、このような従業員が「実在した」という事実には驚かされるばかり。しかし、現実に起こりうることである以上は対策を講じておく必要があるわけで、そういう意味で本書には「もしものときの参考書」として大きな価値があると思います。


(印南敦史)

  • 会社はどこまで従業員の求めに応じる必要があるのか! 戦国部長たちの判断事例集
  • 梅本 達司|東京堂出版
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