99年の政治資金収支報告

自民や公明 倫理なき資金かき集めの実態

2000年10月31日(火)「しんぶん赤旗」より


  都選挙管理委員会が30日公表した99年の政治資金収支報告では、自民党、公明党などが憲法違反の政党助成金を受け取りながら、企業団体献金や政治資金パーティーなど、資金をかき集めているさまが明らかになりました。 違法献金や憲法違反の政党助成金はいうにおよばず、政治をゆがめる元凶である企業団体献金にどのような態度をとるか、各党の姿勢が厳しく問われています。

パーティーで荒かせぎ 前年から約25%も急増

  政治資金収支報告によると、99年の政治資金パーティーは68団体が96回開催、収入額が前年より20.7%も増加しました。 なかでも収入規模1000万円以上の「特定パーティー」の増加が目立ち、回数は35団体37回と前回並みですが、収入金額が7億8000万円(前年から24.9%増)と、急増しています。

  パーティー収入額が最も多かったのは、柿沢弘治衆院議員(無所属)が99年3月19日に港区の赤坂プリンスホテルで開催した「出版記念会」。 3507人がパーティー券を購入し、7000万円の収入をえました。 開催経費を差し引いた「純益」は4200万円になります。
大規模パーティーを複数回開いて「荒稼ぎ」した議員も。 自民党の小林興起衆院議員は後援会主催の3月17日の「99春の集い」(豊島区で開催)、みずからが支部長をつとめる自民党第10選挙区支部主催の「城北経済人の集い」(豊島区)の2回で4800万円の収入を得ました。 「純益」では3400万円です。

  当時自由党に所属し、今年4月の分裂で保守党に移った西川太一郎衆院議員も同様。2回のパーティーで3300万円の収入、1900万円の「純益」をえました。

  都議では、自民党の川島忠一都議が11月19日に開いた都議会自民党幹事長の就任祝賀会がもっとも高く、2100万円の収入。 次いで、同党の大山均都議、山崎孝明都議がそれぞれ約2000万円の収入を得ています。

  都議会議長(渋谷守生都議)、都議会自民党役員(川島氏、藤沢志光都議)の就任祝賀会も相次いでいます。

  政治資金パーティーは民主党、公明党、社民党などの議員も開催しています。日本共産党は含まれていません。

東京都選出国会議員の政治資金パーティー収入上位10氏
(肩書は当時。日付は99年。単位は万円、以下四捨五入)
パーティーの名称 開催日 パーティー
収入
柿沢弘治出版記念会(無所属・柿沢弘治衆院議員=15区) 3月19日 7014
民主党躍進パーティー(民主党東京総支部連合会) 3月2日 4442
城北経済人の集い(自民党東京都第10選挙区支部=小林興起支部長) 11月19日 3061
小杉隆政策提言セミナー(自民党・小杉隆衆院議員) 10月18日 2390
自民党東京都第6選挙区支部大会(越智通雄支部長=5区) 6月23日 2194
吉田公一君を励ます会(民主党・吉田公一衆院議員=9区) 11月17日 2100
西川太一郎西進政経セミナー(自由党・西川太一郎衆院議員=14区) 12月2日 2054
大野ゆり子を励ます集い(公明党・大野由利子衆院議員=20区) 11月24日 1892
99春の集い(自民党・小林興起衆院議員=10区) 3月17日 1778
下村博文国政報告会(自民党・下村博文衆院議員=11区) 6月26日 1682

中尾元建設相事件の若築建設  自民 小山都議に献金

  中尾栄一元建設相の受託収賄事件で贈賄側として元会長が逮捕された中堅ゼネコン、若築建設(本社・東京都目黒区、資本金154億円)が、自民党の小山敏雄都議(目黒区選出)の政治資金管理団体に加入し、6年間で72万円を献金していたことが30日、明らかになりました。

  都選管が同日公表した政治資金収支報告書によると、小山都議の「小山政経懇話会」は、昨年5月に若築建設から12万円の献金を受けていました。

  小山都議の事務所によると、「若築建設には94年に小山政経懇話会に入会してもらい、昨年まで毎年会費をもらってきた」と説明します。

  若築建設総務部では、「私ども目黒区の代表、地元代表ということで、小山都議の後援会に入会し、政治活動を後援してきた。 しかし(元会長が逮捕された)事件後からは、寄付を中止している」といいます。

  若築建設は会場土木の大手企業。 都の港湾局、交通局などから幹部OB6人の天下りを受け入れ、臨海副都心開発、都営地下鉄大江戸線をはじめ都大型公共工事を受注してきました。 小山都議の政治団体に同社が入会していたことは、政治家のモラルが問われるものといえます。

宇田川衆院議員の政治団体  献金を倒産企業から

 宇田川芳雄衆院議員(21世紀クラブ、東京16区)の政治資金管理団体「新政経芳友会」が、倒産した建設会社から献金を受けていたことが30日、わかりました。

  「新政経芳友会」は、宇田川氏が江戸川区長選に出馬する直前の昨年4月7日、村角建設株式会社東京支店(江戸川区)から、12万円の献金を受けました。 村角建設は、都の臨海副都心など大型工事を受注してきた建設会社ですが、霊園事業で失敗し、昨年9月に倒産しました。

  宇田川氏は昨年春、都議を辞職し江戸川区長選に立候補し落選、ことし6月の総選挙で無所属から立候補し初当選しました。 新政経芳友会は昨年、2315万円の企業献金を受けています。


東京選出国会議員と都議

公明党17議員で5450万円  企業・団体献金を受ける

  公明党の東京選出国会議員と都議が昨年1年間に、企業などから総額5450万円の献金を受け取っていたことが30日、わかりました。 都選管の政治資金収支報告書によるもので、国会議員では3人の資金管理団体が834万円の企業献金を受けていました。

  太田昭宏衆院議員の団体は、国の大型公共事業や都の臨海副都心開発の共同溝の工事を受注した東京土木支店(新宿区)から20万円など、284万円の献金を受け取りました。

  石井啓一衆院議員の団体は、収入の約8割を企業献金に依存しています。

  都議では、14人の資金管理団体が3922万円の企業献金を受けていました。

  最高額は白井常信議員の1014万円。 五十嵐正副議長の団体は収入の100%を企業献金に依存したほか、藤井富雄、東野秀平、森田安孝、石川芳昭、今井悦豊、萩谷勝彦、鈴木貫太郎、前島信次郎、白井常信の9都議の団体が、収入に占める企業・団体献金の比率が50%を超えました。

  五十嵐正副議長の団体は、鈴江コーポレーションなど運輸・倉庫会社や、設計会社から299万円の献金を受け取っています。

  藤井富雄都議の団体は、227万円の企業献金を届け出ましたが、企業名は記載していません。

  橋本辰二郎都議団長の資金管理団体の「大辰会」は588万円の企業献金を受け、京王プラザホテルに宿泊料として2日分、合計32万円を支払ったほか、中元や歳暮まで支出しています。

企業・団体献金を受けた公明党の支部、
東京都選出議員の資金管理団体

(単位万円。1万円未満は四捨五入)
収入総額 企業団体献金の額(比率)
公明党支部
衆院小選挙区東京第24総支部 5974 468(8%)
参院東京選挙区第2支部 6784 176(3%)
同第3支部 1269 50(4%)
国会議員
太田昭宏 (衆・比例東京) 1307 284(22%)
石井啓一 (衆・比例東京) 568 438(77%)
大野由利子 (衆・東京20区) 1573 112(7%)
藤井富雄 (新宿) 263 227(86%)
中山秀雄 (品川) 1325 97(7%)
東野秀平 (目黒) 602 519(86%)
森田安孝 (杉並) 262 231(88%)
原環 (豊島) 566 30(5%)
鈴木貫太郎 (荒川) 174 96(55%)
石川芳昭 (練馬) 469 313(67%)
五十嵐正 (足立) 299 299(100%)
今井悦豊 (葛飾) 45 41(91%)
前島信次郎 (江戸川) 182 100(55%)
白井常信 (八王子) 1542 1014(66%)
谷口卓三 (町田) 846 262(31%)
萩谷勝彦 (北多摩1) 155 105(68%)
橋本辰二郎 (中野) 1391 588(42%)

(注)今年の総選挙で石井啓一衆院議員は比例北関東ブロックに転出
大野由利子衆院議員は落選