貧困の子実態知って 学校ソーシャルワーカー・実話を映像化
滋賀県や京都府などで活動するスクールソーシャルワーカー(SSW)が、生きづらさを抱える子どもの姿を物語風に描いた映像を作り、インターネットで公開している。SSWが直面した貧困や虐待、いじめなど潜在化しがちな問題を子どもの視点で表現しており、「困難を背負う子どもたちの声なき声を届けたい」としている。
作品は「貧困を背負って生きる子どもたち」。心の病気を患う母と暮らす生活保護受給世帯の中3と小6の兄弟を「仁(じん)の物語」「智(さとし)の物語」として語り口調の短文と写真、音楽で伝える。SSWの幸重忠孝さん(40)=大津市=が実例を基に脚本を手掛けた。
仁は家事や弟の世話を担い、不登校。しかし、ボランティアで勉強会を開く大学生や不登校を経験した高校生らと出会い、閉ざしていた心の扉を開き、あきらめていた進学の道を歩み出す。
智の物語は、貧困やネグレクト(育児放棄)から巻き込まれるいじめがテーマ。家にも教室にも居場所がなく保健室をよりどころとする智の苦しさとともに、SSWや教諭、同級生とのつながりができるまでを学校を舞台に描いた。
2人の人物像はSSWが関わった子どもがモデルで全く架空の話ではない。厚生労働省によると、2012年度に全国の児童相談所が対応した虐待は6万6807件(速報値)で過去最多。子どもの貧困率は15・7%(09年)と増えている。
幸重さんらは12年4月、「SSW-Net」を発足。現在、関西のSSW約100人が参加し、これまでに弁護士ら専門家を交えた座談会や講演会を企画するなど8回の勉強会を開いた。仁や智の物語作りをはじめ、日頃の悩みや問題を共有し、子どもを取り巻く課題解決に向けた研究を続けている。
幸重さんは「いじめや不登校は保護者のしんどさなど家庭環境もふまえた対応が必要。学校と家庭、地域をつなぎ、子どもの笑顔を増やしたい」と話す。
「仁の物語」は12年末に動画投稿サイト「ユーチューブ」で前後編(計約11分)を公開。1年間で計10万回以上再生された。「智の物語」は昨年12月に前編(約7分半)を公開。後編は今月公開の予定。
【 2014年01月16日 08時58分 】