ハーコンセンらは結局、02年にISFが消滅すると、多くのスノーボーダーの支持のもと、「TTR(The Ticket to Ride)」という団体を立ち上げている。スノーボーダーによる大会を目指し、今や全米オープンやXゲームも加わり、それなりの規模となった。彼らは彼らでスノーボーダーによるスノーボーダーのための文化を地道に築いてきたのだ。
■ハーフパイプ、テレビ視聴率よく…
しかしながら、TTRとIOC、FISの対立は11年に極まる。
10年バンクーバー五輪で行われたハーフパイプ競技のテレビ視聴率がよかったことに気をよくして、IOCはコース上に設置されたレールやボックス、キッカー(ジャンプ台のこと)を利用して技を競うスノーボードのスロープスタイルという競技をソチ五輪の新種目として導入することを考えた。困ったのはFISである。彼らは1度もスロープスタイルでプロレベルの大会を開催したことがなかったのだ。それが、今回のソチ五輪のスロープスタイル競技において、コースの問題点が指摘されていることの一因ともとれるが、いずれにしてもあのとき、IOCはTTRの大会を参考にしてはどうかと助言した。それは暗にTTRに任せたらどうか、ということでもあった。
この限りでは、IOCもTTRにわずかだが、歩み寄りを見せたことになる。だがFISは自分たちでできると譲らず、11年1月に初の大会を開催。しかし、そこでまた問題を引き起こす。その日には別の団体の大会が予定されていたからだ。
FISはISFを潰したのと同じように、選手を奪って他の大会を潰そうとしている――。当然、TTR側にはそう映り、ハーコンセンは公開書簡という形で、その行為を強く批判した。
■建設的な対話、閉ざされたまま
そしてその年の秋、IOC、FISとTTRの関係は、亀裂が修復できないまでに広がる。
TTRはスノーボーダーらの声をまとめ、スノーボードの五輪代表選考をFISが主催する4試合とTTRツアーの4試合を合わせた8試合で行ったらどうかと、FISに提案を行った。言ってみれば、共存を訴えたのである。IOCを交えて話し合いも重ね、TTRはスノーボーダーによる大会運営の必要性も強調した。
だが、IOCとFISからの返答は「ノー」。ゼロ回答だった。
それ以降、建設的な対話は閉ざされたままだ。それに伴ってTTRの求心力も微妙となり、現在の組織はハーコンセン本人の言葉を借りれば「Lost in translation」。直訳すれば「翻訳により、言葉のニュアンスが失われる」といった意味だが、彼がその短い言葉に込めたのは、様々なバイアスがかかり、スノーボーダーらが共通のゴールを見失っているという現状であり、意思統一出来ないジレンマが、その裏に透ける。
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