日本古来の死生観の変容

仏教が与えた影響力

こうした死生観を含めた考え方は本来なら他の国から入り込んでくる考え方に対しても揺るがないものだと考えられると思いますが、日本においては仏教の伝来となってくる奈良時代に差し掛かってくると、神道と人々における価値観に大きな影響をもたらすことになるのです。その代表的な変容としては、死者に対する扱いです。それまでの日本において死者というものは人くくりにまとめられて考えられていました、善人であろうと悪人であろうとその魂は等しく平等に扱われてきました。その後についても特別な違いというものは存在していないこともまた同様となります。黄泉之国や死というものがどれほど穢れているのかということを定義している一方で、死者に対してこういった不確かな部分が介在していないと考えられていたのも、一重に時代における宗教という枠において考えられていたことだったのかもしれません。神の領域だからこそ人間の入り込む余地はない、人は死ぬことで神として生まれ変わると考えられていたからこそ死を広義の意として捉えていたのかも知れませんね。

仏教が伝来するとこうした死という概念に対して区別が出てきます、それこそ善者と悪者の魂にはそれぞれ行く先が異なっているという考えが定着する、ということでもないといいます。確かに変化をもたらすことになったのは確かです、ですがその変化も地域ごとによって根付いている信仰によって変遷しているという特徴があってようやく変わっていくそうです。この点については、現代のように信仰というものに対して無頓着ということに繋がっていくのではなく、地域に存在している宗教と重ねた上でようやく受け入れられるかどうかという天秤に掛けられているのです。これについては習合という現象で考えると分かりやすいかもしれません。神道における神々と仏教における神々を統合する際に、同格と思われる神を両方ともそのまま受け入れることで全く新しい宗教形態を生み出すことへと繋がる『神仏習合』、もしくは『神仏混同』という考え方に繋がって行くのです。これによってその後の伝承によっては日本地域にも関わらず仏教における神々が登場するなどの現象が見られるようになっていくのです。

神道と仏教が融和していくことでそれまでに存在していた死生観そのものも変遷していくことになると、それまでの日本における死体の埋葬法が土葬から火葬へと変わっていくことも納得できるかもしれません。こうして考えると非常に便利な考え方だなぁと思います。柔軟すぎる立ち回りであっという間に日本で仏教が全国的に広がるのもそう遠くなかったのかもしれません。

因果応報と輪廻転生

武家社会における死生観

日本に仏教が伝来した後、平安時代になると菅原道真を主導とした遣唐使の廃止がなされるとそれまでに日本へと伝来していた仏教は日本文化を受けて独自のものへと変化するようになります。平安時代という転機を迎えたことで仏教というものの存在感もその様相を変化していくことになると、死生観そのものにも影響を及ぼすことになります。そしてそんな転機を迎えると同時にとある一つの存在が世に台頭することによって、死生観というものは更に変化していくことになります。それは武士という存在が世に台頭することです。

仏教において無用な殺生については戒律に触れるとされているが、こうした死と隣りあわせとなる戦士が誕生したことで日本において武士として生きた人間の来世というものはないものだとされていた。殺生をすることで輪廻の輪から外れることになって、転生へといたることはないと考えられていたためとなっています。こうした考え方については当時、果敢に源氏と熾烈な争いを繰り広げていた平家一族の総代でもあった『平清盛』は、彼が記した平家物語において仏教色の強い書物を作り出して、その内容において後世にまで伝えることになる死生観を残すことになるのです。それは後の明智光秀や羽柴秀吉などにも通じるところがあったのか、彼らの間では死ぬことがどれほど恐ろしいことなのかということを語っているのです。だが死を否定することだけはしておらず、誠煌びやかなまでに武士として生きることでその後も華を成すということも考えられていたのです。

死ぬということについて恐れを抱くことはしても、死ぬことを拒否するのではなく、むしろ武士として受け入れるということを唱えているのは日本に伝わっている武士道というものとなっていき、その後へと大きな影響を与えていくことになるのです。生きぬくということを恥と見なしている、その意識はこの頃から登場するようになっていったのです。

ポケットのカルマよ 自信が足りないの?

スープ~生まれ変わりの物語~から見る、死生観について

輪廻などの死生観については様々な見解を巻き起こすことになるテーマとなっています。
世界的にどのような考え方となっているのか、世界各地に根付いている死生観について考察をしてみましょう

スープ~生まれ変わりの物語~
輪廻転生は存在する?
生まれ変わり研究の権威
世界的に考えられている死生観
世界によって異なる死生観
別分野における死生観
死生観に対する様々な価値観
死は神との交流を意味すると考えられている
死生観そのものから外れることになる概念
日本における死生観
日本古来の死生観の変容
日本中世のおける死生観

神は死んだ